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異世界に誘われた陰陽師  作者: 垢音
第4章:魔王軍VS同盟国
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第95話:ダリューセク防衛戦線②~氷の籠城~

 ダリューセクは広大な土地を有し、水源が多くある事から早くから水の都を指すのはこの国だと言う認識をされていた。その土地に住まう精霊が水属性に溢れている事と、魔法を扱う力が水に占められていた事もあり、それも1つの要因とも言える。


 魔法が発展し、水属性のみに限定される事無く様々な属性を操る者も増えていた。しかし、どうしても表れなかった属性がある。


 大精霊フェンリルと同じ氷の力。


 水の上位を示したこの力は、水よりも緻密なコントロールを必要し、扱えた者が居ても強すぎる魔力を抑える事が出来なかった。そうして、自然と水の魔法に特化していった経緯があり、いつしかダリューセクに氷の適正を持った人物は現れなくなった。



 それは大賢者と評された咲にも当てはまり、氷を扱う事は出来ても、魔力の暴発によりすぐに取りやめられ思うように進められなかった。



 だから彼女は一度も見た事がなかった。



 氷の力を、フェンリルが得意とするその力の片鱗を。





=======


 城を中心に街が広がり、周りを囲むようにして作られた城壁。東西南北に門を作り武器商人や、地方の食材を輸入出来るように作り、外交的である事から冒険者も多く利用している。


 そうした流れでギルドが出来るのは当然であり、この国の防衛に一役買っている面もある。


 国の中心に位置する城。

 その天辺付近に、フェンリルは佇み空を睨んでいた。ブルームがユリウスを乗せながら、空に広がるキメラを風で切り炎で焼き、氷付けにしてはそれらを尾で払い向かって来た別の魔物へと激突させる為に上手く振り払っている。



 戦い方が豪快であるとか、魔物に容赦がないとか、そう言う目で睨んではいない。彼が睨むのは南側の城壁。その空の付近で戦っている、魔王と上級魔族に向けたものだ。




 バチッ!!!、バチッ!!!とぶつかるのは黒い雷。

 それらは上空へと激しくぶつかり、弾けて消えていく。その度に飛来していた魔物達のうめき声が聞こえては消えるのを繰り返していた。




「ははっ。面白ぇ、面白ぇ、面白えぇ!!!!」




 歓喜の声を上げるのは上級魔族のティーラ。自身の振るう槍に雷を纏わせ、ジグザグに動きながら確実に急所を狙う。しかし、相手はそれを予知していたかのようにヒラリと、ヒラリと紙一重で避け、雷が自身に到達する前に同じ威力の雷をぶつけ相殺させる。




「ったく、そればっかりだな。お前は!!!」




 悪態をつくランセ。ティーラはすぐに下ればその直後に雷が降り注ぐ。威力はかなり抑えているが、それでも地面に到達した瞬間に周囲を巻き込む。フェンリルが思わず国の周囲に強力な防御魔法を張る準備をする。




≪チィ!!! これだから魔族は………!!!!≫




 威力を抑えろと言いたいが、あれでもランセ的には抑えているのだと少し思う。フェンリルはさらに強力な力で周囲を覆い、国全体に、城壁に這う様にして魔力を散布し唱える。




≪グラセ・コルーク≫




 周辺から霧が発生しそれが徐々に国全体を覆う。

 全体に行き渡った途端に氷の柱が発生し、それらが大きな結晶となってダリューセクを包み込む。

 それは敵の侵入を阻むものであり、空からの遠距離射撃に耐えるもの。



 フェンリルの扱う中で強力な防御魔法。それをすぐにでも出さなければならない、そんな事態へと追いやられた。



======




≪お嬢さん、お嬢さん≫

「う、うぅ………」




 ペチペチとウォームの頬を叩き、反対側からはアルベルトが「クポーー」と同じように叩く。風魔が『主、平気?』と言う声にうっすらと目を開ける。




「風魔……アルベルトさん、ウォームさん………」

「クポポポ、クポー」

《そうだ、反省しろ。お嬢さんの事、巻き込みおって》

『そうだ、そうだ』

「クポォー、クポクポ」

 


 反省して頭を下げるアルベルト。頭を下げすぎて地面につくが、構わずこすり付けながら「グポポ……」と謝り続けた。そんな姿にクスリと笑う麗奈は、アルベルトを持ち上げる。




「頭を上げて下さい、アルベルトさん」

「……」

「一瞬だけですが、アルベルトさんは何かに引っ張られるのを見ました。だから責めないで下さい」

「フポォー」

「はい。私は、仲間を探すアルベルトさんの邪魔をしてるのに……協力してくれるなんて思って無かったので。でも――」





 何で協力してくれるんですか? と、麗奈は質問をした。

 

 ふと湧いた疑問。

 危険を冒す理由が麗奈には分からなかった。ドワーフは人を嫌っている歴史がある。全てがそうでなくても、物珍しさだけでここまで来たのかと、下手をすれば命が危ういと言うのに、だ。




「……クーポポ!!」

「『えっ……!?』」




 アルベルトの答えに驚きの表情を浮かべたのは麗奈と風魔。ウォームは静観を貫き、口を挟む気はないのかじっとしていた。



 ”内緒!!”



 ドワーフの彼がそう答えた。麗奈は脱力し「アルベルトさーん」とガクリと項垂れ風魔は驚き過ぎて開いた口が塞がらなかった。それも数秒間の内だけに留まりすぐに反論した。




『主から聞いたけど。君は鳥によく攫われて、猫相手に良いように遊ばれてたんでしょ? それで、魔物や魔族にどう対応するって言うのさ』

「クポ」

『平気って言われても……』




 えぇ~、と不服そうにする風魔。麗奈も口には出さないが心配そうに見ている。しかしウォームは心配ないだろう、と言い出しアルベルトに視線を向ける。




≪無理なら最初から協力もしないぞ。流石に自分が魔物に対抗できるのか、出来ないのかは分かるだろうよ。なぁ?≫

「クポ!!!」




 大きく頷くアルベルトにウォームは満足げに≪フォフォフォ≫と笑い、ダリューセクへと向かうかと向きを変える。




「ウォームさん。何かアルベルトさんについて知ってる事があるんですか?」

≪ん?そうじゃな……ふっふっ、これは本人も秘密にしているようだしなぁ。まっ、いずれ分かるだろうよ≫

「クポポ!!!」




 何故か意気投合し始めるアルベルトとウォームに、首を傾げる風魔と麗奈。国を囲う城壁をさらに上乗せするように氷が重なっている。フェンリルの防御魔法で、中からは入れないと断言したウォーム。




『入れないって……』

≪これは外敵から守る為の魔法。フェンリルは攻防共に優秀だが、強力な魔法を扱う時に片側しか出来ないのが難点であり弱点でもある≫




 防御は防御、攻撃には攻撃しか切り替えられない。他に弱点をあげるなら、内側からの敵に弱いこと、空間を用いた魔法には適応されないと言う事だとも説明して貰った。





「内側って……」

≪もし、外敵以外にも既に魔物が配置されているなら内の敵には適応されない。フェンリル自身が感知できても、攻撃に転じたその瞬間……この魔法は壊れ、外敵からの攻撃に晒される≫

「そ、それじゃあ――」




 慌てる麗奈の声に被る様に上空で大きな爆発が起きた。

 氷とぶつかるがヒビが入ることなく、傷付いていない。しかし、それらが立て続けに起き周囲を爆風が襲い掛かる。下で侵攻を開始していた魔物達はそれに巻き込まれて、氷の壁にぶつかり絶命していく。爆発はランダムに繰り返され、それで魔物が消えるのも構わずに爆発は起こり続ける。




≪無駄だ!!!≫




 フェンリルの咆哮が上がる。吠えたようなその声は、空気に振動を与え別の方向から来た魔物が一瞬にして凍り付き散っていく。しかしその声が届くよりも遠い所で攻撃を開始していた魔族はニヤリと笑みを浮かべる。


 上級魔族はティーラだけではない。この国に配置された上級魔族は全部で3人は配置された。今、同族と戦っているティーラとは別に遠距離の攻撃を担っている魔族の名はバネッサ。


 炎の魔法を得意とし闇と複合させたこの力はバネッサ特有の物。破壊力も凄まじく、砲撃として繰り出したこの力で小国も村も街も全てを焼き払い火の海へと変えてきた。



 炎のように紅い髪を有した美しい女性。オレンジのワンピース、黒いマントを着てはいるが見た目は人間の女性を模した魔族。その目は紫色の瞳を持ち、鋭い爪を持ったバネッサはうっとりとした表情で遠くに構えているフェンリルを見つめる。




「ふふふっ、流石は大精霊ね。これ位で崩れて貰っては困るけど、あの咆哮は厄介。……声が届かない範囲で魔物を展開しても近付けないと崩せない、か」




 あの氷の固さはさっきの爆発で確認済みだ。魔物を砲弾代わりに使っても、傷付くことはない。自分が行った魔法も完全に防がれている。断続的に繰り出した炎と爆発の魔法を駆使しても傷どころかヒビすらない。


 あの魔法が絶対的な防御であるのは誰の目から見ても明らかだ。




「………こういうのって、外は強くても内側は意外に脆い、って言うのが定番よねぇ?」




 そう言って取り出したのは緑色の水晶。これはバネッサが放った小型の魔物を介して国の様子を見る為のもの。大国を相手にするのに何の策もなしに飛び込むのは戦闘バカのする事であり、バネッサは近接戦闘には不向きなのは自覚している。




「さあ~て、水の都はどんな所なのかしら?」




 バネッサが使い魔としての形をとったのはコウモリ。

 一般人の目には触れられないようにしている為、この使い魔を見えるのは魔法を扱える者達に限られている。しかし、数は多く放っておりこの数週間で国の構造は把握しており、ニチリ、ラーグルング国の2国も調べ上げるようにとサスクールから言われている。




(お役に立って見せますよ、サスクール様♪)

  

 


 そのコウモリ達により得た目は、リアルタイムで水晶に映し出される。

 レンガ造りを基本とした家々がある。国の中心部となる大きな噴水があり、そこには国の象徴とされているフェンリルの銅像が置かれていた。その噴水を中心に北側にあるのがダリューセクの城、南側に広がっているのは正門の1つであり屋台が展開されている。


 カメラのように視点が次々と動き周り、ある一点に映像がピタリと止まった。


 東門は主に商人、武器商人、他国からの輸入品を扱う人達の為に取り仕切る貴族が管理を務めている。反対側の西門は冒険者、ギルドの者達が行き交う場所として提供されており格安の宿からホテルまでが豊富に建てられている。その近くには、武器屋、防具屋、魔法協会支部も建てられている。




(狙うなら東よね……)




 西側を攻める考えを止めた。冒険者、魔法師が揃っている所にワザワザ飛び込む様な真似はしない。いくら上級とは言え相性がある。だから、自分は向かわず魔物をそちらに多く寄越そうと考えた。 




「あはっ、西側はキメラ達に任せますか♪魔法は効かないんだし」




 ディルバーレル国で作られたキメラ。あの場で全てのキメラを倒した訳ではなく、ワザと一部だけを置いて来た。本当に魔法が効かないのかを実証しなければこの戦争に組み込むなんてことはしない。

 

 


「あら?」




 フェンリルに向けていくつか炎を打ち込んだ。外が無理でも、空間を介してフェンリルの間近で爆発を繰り出した。城の防御はかなり強力に張られているのに、自身には全く張られている様子はなかった。


 これを狙わない訳にはいかない。


 精霊は物理攻撃は全く効かない代わりにマナを用いた攻撃は効く。魔法も有効な手立てであり精霊を傷付ける方法としてはこれがベスト。

 そのフェンリルに近付く影があった。大きな白い犬に跨った黒髪の少女。その少女から魔法が放たれたかと思った時には、フェンリルの傷は完璧に治っておりさらに弱点であった守りを施して、だ。




「余計な事を……!!!」




 舌打ちし内部に入っていた魔物達に命令を下す。狙うはあの少女、大精霊を仕留められたかも知れないのを邪魔した。その罰を下す為に。




「命までは取らなくても絶望して貰うわよ!!!!」





======



「良かった。これで平気ですね、フェンリルさん♪」




 ウォームの言うように内側に対して、もし既に中に魔物が居るのならフェンリルが感知しても攻撃には転じる事が出来ない可能性を示唆されてすぐにでも中に入ろうと試みた。

 アルベルトが背負っていた金槌を地面へと叩いた瞬間、ダリューセクの中へと移動されていた。驚く麗奈を気にした様子もなく、ウォームが風魔に乗せフェンリルの居る方へとすぐに向かうように指示を飛ばした。


 何度かこの国に来た事のあるアルベルトは印を付けるが如く、金槌を軽く打ち自分が来た時にまたすぐにでも来れるように転移の魔法を施していた。その要領で自分を含めた麗奈達を一瞬の内に連れてきたと説明を受け、麗奈は「ありがとうございます」と言いデレデレと体をくねらせたのを風魔とウォームは一生忘れない気でいるのか睨んでいた。



 フェンリルが佇む場所に行けば彼は火傷を負っていた。美しい毛並みは今は見る影もなく、火傷以外に体が貫かれている部分もあり思わず口に手を当てた。




(っ、こんな事するなんて……)




 そう思った麗奈の行動は早かった。怪我を治る様に、火傷も貫かれた部分も含めて全て綺麗に治る様にと懸命に治癒魔法を施した。精霊に治癒を施すは本来なら出来ない。

 彼等は周囲のマナと自身の中に溜め込んだマナで活動している。治癒も同様に行うが、今のフェンリルは魔法を発動中の為にマナを大きく使っている。周囲に満ちるマナとを合わせて、ほぼ無尽蔵に近い形での防御魔法をしている為に治癒に回す分はないに等しい。さらに、同属性での治癒でないと精霊の傷を治すと言う事が出来ないと言う厳しい条件も含み、精霊の傷を治すと言う事態がレアケースだ。



 この国に氷を操る者は居ないが、麗奈の操る力は虹の魔法。全ての属性に精通している為に、精霊の傷を治す事が出来る唯一の存在であり、極めて貴重だとも言える。




≪本当に……すまない。恩に着る≫




 フェンリル自身はかなり驚いていた。魔法を会得してまだ数日しか経っていない彼女がここまで上手くコントロール出来る事に驚愕しながらも、麗奈が治癒を行わなければこのまま消える可能性も含んでいたからだ。




≪(元々、大きな力のコントロールは出来ていたからなのか……。父さまと同じ温かくて、心地の良い魔力の流れ方だ)≫

「平気です、フェンリルさん。他に痛い所は無いですか?」

≪大丈夫だ。むしろ前よりも体が軽くなった気分だ≫

≪だったらお嬢さんから貰った魔石を返してくれ≫

≪……すみません、飲み込んだものを返せと言うのは≫




 意地悪ですよ、とウォームの頬を引っ張る。ゴムのように伸び切り本人はのほほんとしており反省の色は見えない。と、今度はアルベルトが振り回してそのまま――投げ飛ばした。




≪父さま!?≫

「ちょっ、アルベルトさん!?」




 驚愕するフェンリルと麗奈。投げ飛ばされてもすぐに戻ってきて≪いきなりとは酷いな……≫といつも通りのウォームが戻ってくる。




「クポーー」

『あれでも反省しないから良いでしょう』

≪そう言う問題ではない!!!≫




 えー、と不満げに訴える風魔にフェンリルは頭を抱えた。これらを全て終わった後には彼等をきつく叱りつける必要があるなと考え、すぐに頭を振り払いあと回しにしようと考えた。




≪俺はこれで防衛に再び入ります。ですが、外は守り切っても中は守れない。……悔しいが、既に魔物が中に入り東側の方へと展開されている。それに城の方にも向かっている可能性がある≫ 

「おわああっ!!!」




 フェンリルの頭上から落ちてきたのはユリウスだ。激突した弾みで下へと落ちかけるも、ブルームが頭の上に乗せた事で落ちずに済んだがそれでユリウスからは怒声が飛んできた。




「いきなり邪魔とか言って放り出すな!!!」

≪事実だ≫

「っ、コイツ……!!!」




 握りこぶしを作るもウォームから≪ツンデレ、という奴で恥ずかしがり屋だ≫と言えばブルームは無言で睨んできた。聞けば外の魔物は、魔族も含めてランセが担当しブルームも空と地上に攻め入っている魔物の一部を蹂躙してくるとの事。




≪暇そうだからこっちに置いて行く。ではな≫

「あ、ちょっ」




 まだ文句が言い足りないのかユリウスが呼び止める暇もなく、ブルームは再び空間を有して外へと向かい炎を駆使して魔物を葬っていく。風を扱える白虎を呼び、風魔にユリウスを乗せて話の続きをしてくる。




「東と城側の方か……南はフェンリルが全域を守っているとして西と北は放っておくのか?」

≪西は冒険者達の領分として置いておく。彼等は魔物退治も任務として請け負い、支部もあるのだから協力すればどうという事もない。北は城門と繋がるし、警備の騎士達で足りる筈だ。逆に城の内部の方が心配になるが……≫

「なら白虎と私が城の様子を見て来る。平気そうならユリィと合流する……これでどうかな?」

「風魔は俺なんか乗せてていいのならな」

『むっ、僕が主しか乗せないみたいな言い方』

「実際にそうだろう」

『……気を付けます』

『んふふ、頑張れ風魔。主の事は任せろ』

「クポポポ」

『ドワーフも来るから心配ないってさ』

「ウォームさん、ユリィと行動を共にお願いして良いですか?」

≪そうじゃな。ワシも治癒は出来るからな!!≫

「怪我する前提なんですね……まぁ、無理だよな無傷って」




 麗奈はユリウスに札を1枚渡す。頭に置いて相手の事を念じれば声が届くものであり、魔法を扱う人でも使えるのは実証済みなので平気だと言われた。




「分かった。ランセさんの事だから心配ないだろうけど……麗奈も無理はするなよ」

「うん、無茶はしないよ。白虎も居るしアルベルトさんが支えてくれるし」

「ポポポ!!!」

『ドワーフの言うように任せておいて。風魔、陛下さんの事頼むよ』

『分かってるよ!!!何でそんなに心配されないといけないのさ』

『一応だよ、一応』

≪では陛下、行くぞ≫

「了解ですウォームさん!!!」




 ユリウスと風魔、ウォームを含めて東側へと飛ばし麗奈も白虎を使って城へと急ぐ。と、フェンリルから呼び止められる。




≪本当にすまない。……ラウルとも話したが、全てが終わったらこの国に来て欲しい。ここは美しい国だ。君達にもぜひ見て欲しいからな≫

「はいっ!!!そうなるように絶対に守りましょうね、フェンリルさん」




 行ってきます!!と白虎に号令をかけ、突風が吹くが如く城へと走り出す。瞬く間に姿が小さく見えなくなり、フェンリルは改めて決意した。




≪約束は守らなければな……≫




 ふっ、自然と笑みを零す。

 しかし、次の瞬間には嬉しい気持ちを封じ前を見据える。空を覆う程の魔物大軍を一気に水柱が襲いそのまま意思を持つ様にして次々と飲み込んでは消えていく。ブルームの咆哮で魔物が吹き飛び、炎に焼かれ、風で切り裂き、氷の雨が降り注ぐ。



 それでもまだ晴れる事のない空を睨みながらも、フェンリルは魔力を高める。外側から攻めて来る魔物の大軍は決して中へは入れないと言う気持ちと、この国の住んでいる騎士達の力を信じ自分は防御に徹する。



 どんな魔法をも必ず防ぎ、保たせてみせる。ラーグルング国のラウルにも言い、そして今、彼が主と定める彼女にもこの国が良い場所だと紹介したのだ。それで無くなったでは精剣の大精霊として示しがつかない。




 約束は、必ず守る。

 自身の全力を持って、自身の持てる最大の力で――。

 




 



文章が長くなって申し訳ないです。短く伝えるのって、本当に難しいですね……精進します

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― 新着の感想 ―
[良い点] フェンリルの危機に風魔に跨り、 颯爽と駆け付け状況を打破する麗奈。 最近ポンコツな娘の印象が強くなってましたが、 いざ戦いとなると、上位魔族をも唸らせる、 その強さ、頼もしさを再認識させら…
2020/07/10 06:12 退会済み
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