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捨てられた王子たち  作者: ふたぎ おっと
第1章 おとぎの国からこんにちは
28/112

27.仲直り

いつもありがとうございます

27.仲直り


 翌朝。

 今日はアサドが襲ってくる前に何とか起きられた。さすがに3日目にもなれば、何時頃ヤツが来るのかも分かる。

 ちなみに現在の時間は6時20分。アサドはいつも6時半に起こしに来る。

 フリードは起きたのかとベッドの下を見ると、布団はシーツを剥がした状態で綺麗にたたまれ、その横にローテーブルが出されている。

 そこまで律儀にやんなくてもいいのに、とツンデレなのに案外そういうところがしっかりしていると思った。さすが、おとぎ組の中での一番まとも人。


 身支度をしてダイニングに行くと、まだアサドとテオしかおらず、クリスはキッチンで朝食準備中で他はまだ部屋に引きこもっているそうだ。

 朝食前にカールに謝っておこうと思い、彼の部屋に来る。

 カールの部屋は2階の右から3番目、私とハインさんの部屋の間だ。


 コンコン。


「だれ?」


 昨日のこともあり気まずいので、少し緊張しながらノックすると、特に機嫌の悪そうな感じのしない声が返ってくる。


「梅乃です」


 私の名前を言うことで、再び機嫌を損ねてしまうのではないかと、少々不安になる。

 だが、部屋の主はすぐにドアを開けてくれた。


「なに?」


 開けてはくれたものの、やっぱり第一印象が後を引いているのだろう。少し曇らせた顔で私を見下ろしてくる。


「昨日のこと、謝ろうと思って」


 そう言って私は右手を差し出す。

 カールは目を丸くする。


「昨日は当たっちゃってごめんね。それから大人気なかったと思ってる」


 まっすぐにカールを見据えて謝る。あれこれ付け足して謝るのも一つだが、ここはシンプルに言うべきことだけを言う。

 だがカールは少し眉を寄せると、どこか疑うような目つきをしてくる。


「それ、どういう風の吹き回し?」

「あ、ひどい。自分でもかなり下らないことでいらいらしてたと思うのよ。気分悪くしてごめん」

「で? その手は?」


 カールは片眉を上げて納得したのかそうでないのかはっきりしない顔をしながら、私が差し出した手を眺める。


「ほら、同じ屋敷に住むんだし、仲直り」


 私はその手を一度高くして下ろしてそう言う。

 すると、再びカールが目を丸くする。かと思いきや、ゆっくりと猫眼を細めて、口元を歪ませる。


「そうだな。俺もあんたのこと悪く言ってごめん」


 そう言ってにかっと笑い、差し出した手を握ってくる。

 そんな笑顔を見ると、やっぱりどこか少年ぽさが溢れている。


「それにしても年下に『あんた』なんて言われたくないな」

「あんたもヒトのこと言えないよな」

「あ、また言った」


 折角仲直りしたところ、ケンカが再発しそうになる。これは私が悪いのか?

 だがそれもカールのため息で終わる。


「じゃあ何て呼ばれたいの?」

「何でもいいけど、『あんた』とか『お前』とか以外。あ、おねーさまならいいよ」

「ふん、ばーか」

「あだっ」


 なんておちゃらけて言うと、カールは私のおでこにデコピンしてきた。

 痛すぎて怒る気力も振り絞れない。

 部屋の前で悶絶していると、図体ばかりでかいカールは私の頭をぽんぽんと強めに叩くと、鞄を持って廊下に出てくる。


「おねーさまと呼ばれるようにせいぜい大人になってよ、梅乃」


 カールは私に生意気な笑顔を向けると颯爽と階下へ降りていく。

 暴力ふるわれたことに怒ろうかと思ったが、どうやら機嫌の直ったカールを見るとなんだかどうでもよくなってしまった。

 弟を持つとあんな感じなのかな、とさえ思ってしまった。





 私も階下に戻ろうとしたとき、一番階段側の部屋の扉がいきなり開く。それはカリムの部屋の扉で、出てきたのもカリムだ。


「あ、カリムも今日は早いね。おはよー」


 と長身のカリムを下からのぞき込む。

 だがそれがダメだった。


 カリムはうっすらと琥珀色の眼を開けたまま、私の首に腕を回し覆い被さってきた。


 起き抜けのカリムが一番危険なことを忘れていた。てかいい加減学習しろ私。

 というのも、今朝アサドの襲来を免れたのと、カリムがちゃんと上半身も服を着ていたことで油断してしまっていた。


 カリムの息が私の肩に当たる。このパターンは知ってるぞ?


「梅乃……眠い。キスして」


 この人はこれで寝ぼけているフリをしているが実はちゃんと起きている。ただ朝に弱いだけだ。

 さすがに2回目ともなれば、免疫も徐々に付いてくる。

 

「しません。いいから離れて」

「えー……」

「えーじゃない」

「あーねむい」


 そう言って私の肩に頭を埋める。

 ああもう、頼むから起きるならちゃんとベッドで起きてから出てきてほしい。185cm以上ある男が覆い被さってきたら、どかそうにもどかせられない。


 するとちょうどそのとき、カリムのとなりの部屋の扉が開いた。

 出てきたフリードとばっちり目が合う。

 フリードは目を丸くした後、いつものように眉間にしわを寄せて呆れ顔。


「いちゃつくのは勝手だけど、廊下でやるのやめてくれない?」


 と、横を素通り。

 ちょっとちょっと、これどうにかしてよ!

 だがそんな私の心の声などフリードには届かず、階下へと消えていく。


「ああっカリム殿、すぐに梅乃お嬢様から離れてください。その方はフリードと恋仲なのですから」


 と、フリードの後に部屋を出てきたハインさんが私からカリムを引きはがしてくれる。

 引きはがしてくれるのは助かるんだけど、”恋仲”とはどういうことだ?

 だんだんハインさんの中で私とフリードの関係がおかしなものになっていくぞ。

 でもこの人に言っても聞いてくれないので放っておく。




 無事カリムから救出され、二人を階下に送り出して私もそれに付いていこうとしたとき、ハインさんたちの部屋の向かいの扉が開く。

 出てきたのはハンスだ。


 朝っぱらから気分を悪くしたくないので、私は早々に階下に降りる。

 すると後ろから声がかかる。


「ふ、随分嫌われたものだね。折角だし仲良くしようよ」


 と、それはまた何もこもっていない声がかかる。

 振り向くと、その瞳はどこかやはり上からものを言っている気がする。人を見下したような眼だ。それがまた私の中の苛立ちを呷る。

 だが、至って彼は「大人な対応」のようで、もう怒っていないという素振りを見せてくる。それに対して私がいらいらするのも何だか負けた気がするので、私もそれをひっこめて、顔だけ笑顔を作る。


「そうね、仲良くしましょ」


 それに対し、ハンスはふっと鼻で笑うと、先ほどよりも露骨に見下した眼をする。


「目が笑ってないよ」

「お互い様」


 やっぱりこの男はいけ好かない。


しかし、ハンスとハインはどっちがどっちか分からなくなりそうですね(汗

作者も書き間違わないか不安です

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