第十三話 冒険者ギルド
防具店を出て数十分後。
俺とメルさんは目的地の冒険者ギルドへ到着した。
ここが冒険者ギルドか。
成程、俺がよく読んでいた漫画や小説に出てくる見た目にそっくりだな。
まさか、実際に目にする事になるとは。
人生ってもんは分からないもんだな~。
そうして俺が考えているとメルさんが言った。
「さて、ギルドに入る前の注意点だが、まずギルド内での戦闘は基本的には禁止だ。もしこれを無視して戦闘を行った場合、ギルドからの罰金、もしくは冒険者登録の抹消などの処分が下る。注意しておいてくれ」
「……」
「しかし、相手から一方的に喧嘩を売られた場合は別だ。反撃して叩きのめしても処分はない。そして、相手が武器を持ちだしてきた場合などは、相手を殺してしまったとしても一切罪には問われん」
「成程、覚えておきます」
「良し、では中に入るとしようか」
そうして俺とメルさんはギルドの中へ入っていく。
ふ~ん、ここが冒険者ギルド。
中は酒場に近いって感じがするな。
実際、食事などを頼んでいる人もいた。
ギルドは軽い食事も提供しているようだ。
しかし、冒険者の数ってこんな少ないの?
どう見ても数十人くらいしかいないんだけど。
これで経営やっていけるのだろうか。
そう俺が疑問に思っていると。
「ギルドの依頼は基本的に早い者勝ちだからね。やる気のある者は朝一番にやってきて割りの良い依頼をとっていくのさ。そして、この時間にギルドにいる者などは依頼がなくて困っている者か、ただの飲んだくれだろう」
おいおい、メルさん声が少しでかいって!
見ろ、俺達の目の前でテーブルに肘を付き酒を飲んでいた冒険者達が、一斉に俺達を睨んで来るじゃないか!
う~、怖えな。
けど、この人達に睨まれても俺の脂肪は動かない。
つまり、俺より弱いなこの人達!
あ、平気になってきたかも。
「おいおい姉ちゃん、あんたもしかして俺らを馬鹿にしたか?」
「ふむ、貴様らを飲んだくれと言った件か? 私の間違いであったなら謝罪はするが、特に間違ってはいないだろう?」
あ~、メルさん更に煽ります!
メルさんって基本的に好戦的だよね~。
けど、俺これから冒険者登録するのに騒ぎ起こしたくないな。
ここは、俺が謝っておくとしよう。
「申し訳ない。貴方たちを飲んだくれと言った件は謝りますから、ここはお互い平和的に何もなかった事にしません?」
そうして俺が謝ると、相手は俺より身長が低くガタイも貧弱だったため一瞬俺にビビリ後ずさるが、他の冒険者の前だからかすぐに強気になり。
「何だてめえは、怪しい格好しやがって、黙ってろ!」
そう言って男は俺の顔面に拳を放ってくる。
あ~、もうめんどくさいな~。
俺はため息を尽きながら、男の拳を片手で受け止め、男の手首に魔力変換を使って作り出した脂肪をくっ付け、手錠のように固める。
そして、重力を一気に上げた。
「が、がああああああ!!」
「【脂肪の手錠】。先に煽ったのはこちらなので殴られそうになった事は黙っておくからこの辺にしておきませんか?」
俺は脂肪の重みで片腕を地面に付け必死にもがく男に提案する。
いや~、俺って優しいな~。
「分かった! お前の言う通りにするからこの手の重みを何とかしてくれ!!」
「お、良かったです。では元に戻しますね」
俺は男の腕に付いている脂肪を解除した。
男は脂肪が解除された事でやっと楽になったのか激しく吐いていた息を少しずつ整えていき、次に俺とメルさんを見てひぃ~と言って逃げ出した。
それと同時に、ギルド内から何人かの驚愕の声が上がる。
「おい、服装が違うから気付かなかったが、あいつもしかして剣鬼じゃねえか!?」
「そう言われてみれば……。確かに剣鬼そっくりだ」
「嘘だろ、俺、睨みつけちまったぜ。殺される……」
いやいや、睨んだだけで殺されるって。
どんだけメルさんの事を怖がってんだよ。
まあ、確かに怖いけどさ。
「カンジ君、何か失礼な事を考えなかったかい?」
「あ、いえ、何でもないっす。それより、メルさんあの人達に何かしたんですか? 何か物凄く怯えてるんですけど?」
「ん、何もしてないはずだが。多分、昔の私の噂を聞いて恐れているといったところだろう。昔は強さを求め色々無茶をしていたからね」
成程、怖いから深く聞くのはやめておこう。
さて、多少強引ではあったが事は済んだ。
当初の目的である冒険者登録をするとしますかね~。
そう考え受付のお姉さんがいる場所へ向かう。
「あの、冒険者の登録をしたいのですが、大丈夫でしょうか?」
俺の言葉に受付のお姉さんは勿論大丈夫です、では最初にこちらの紙に名前と年齢を書いてくださいと言われたので言う通りにしていく。
「ふむふむ、名前はカンジさんで年齢は……十八!?」
ああ、やっぱ俺の年齢驚くんだ。
メルさんだけかと思ってたわ。
しかし、俺ってそんな老けて見えるんかね~。
「――と、失礼しました。体格が大きく貫禄もあったのでもう少し年がいっていると勘違いしてしまいました。では、次の話に移ります」
あ~成程ね。
顔が老けてるとか言われなくて良かったわ。
「では冒険者のランクとの説明をさせて頂きます。冒険者のランクはF~Sの七種類となっております。そして、新しく冒険者となった方は一部の例外を除き全てFからのスタートとなります。それからは依頼や魔物の討伐などをこなして一つずつランクを上げていく仕様となっています」
「ただし、AランクからSランクに上がる為には実績だけでなく、各地に存在しているギルドマスター複数名からの推薦が必要となります。勿論、Sランクに相応しい実力も必要になりますので、狭き門となっています」
「次に依頼についてですが、依頼も冒険者ランクと同じようF~Sに振り分けられています。原則として自身のランクの一つ上の依頼までは受けれますが、その上は受けることが出来ません」
「そして、基本的に三ランク以上下の依頼を受ける事も禁止しております。これは上のランクの者が下のランクの依頼を奪ってしまわないようにする為の処置ですので、ご理解頂けると幸いです」
こうして大体の説明が終わった。
「ふ~疲れました。では冒険者カードが出来上がるまで少しお待ちを」
「分かりました」
「それにしても、先程はお見事でした。カンジさんがあしらった冒険者はランクとしてはCだったんですよ? それをあんな簡単に。もしかして、カンジさんって実力で言えば既にBランク以上あるかもですね」
「ん~、その辺は何とも言えませんね。あれは相手が油断してくれていたから簡単に片付いたわけですから。相手も素手でしたからね~」
「それでもですよ。あ、忘れてました。私の名前はフロリスって言います。カンジさん、これからよろしくお願いしますね」
「ああ、こちらこそよろしくお願いします」
そうして冒険者カードが出来上がるのをのんびり待っていると、受付の奥の扉が急に開いて、見た目が完全にゴリラのおっさんが現れた。
「おお、何か騒がしいと思ったらメルクリアじゃねえか! お前がギルドに顔を出すなんて珍しい。依頼でも受けてくれるのか!?」
「ゴリさん、久しぶりですね。残念ながら今回は依頼ではなく、こちらのカンジ君の冒険者登録の付き添いですよ」
ぶっ、名前もゴリラっぽい!
駄目だ、笑ってしまいそうになる。
人の名前を笑うなんて最悪だ、堪えろ俺!
「ほう、中々有望そうな新人じゃねえか! おう、俺の名前はゴリ・ラデスだ。ここのギルドマスターをやってる。これから頑張れよ!」
もう、駄目だった。
俺はメルさんや皆の前で噴出してしまった……
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