表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/105

第92話〜凸凹な関係②〜

「なんで、掃除……。」


雛子は帰りたい一心で、窓を磨いた。


事の経緯は、天文台での出会いがきっかけだった。


話すうちに意気投合してしまった2人は

ホームルームの存在など忘れ、1限の授業もすっぽかし

1時間以上も天文台へと居座った。


そんな登校初日から派手にやらかした2人を

問題児として目を付けた先生は、罰として

放課後に魔法化学室の掃除をやらせていた。


「なんか、ちゃんと学校っぽくて良くない?」


青春って感じがすると言い、楽しそうに箒へ跨るかなう。


それもそのはず。

かなうは、高校はまともに通うことが

無かったからである。


「私さ、自分は変われると思って

このゲームを始めたんだよね。」


強くてニューゲームとまではいかないが、

自分への希望を信じて、このゲームのユーザーとなった。

 

かなうは、過去の自分を払拭したかった。

特別、悪い事をしてきたわけではない。

 

むしろ、中学まで学業の成績が良く、運動神経も抜群。


「周りがいつも勝手に期待していくんだ。

私はそんな器ではないのに。」

 

おまけに人望までも厚かった彼女。


しかし、そのせいで"完璧"という名のレッテルを貼られ

周囲から多くの期待を背負いすぎた。


「不登校になったこともあった。

親とも縁を切られそうになった時だってあった。」


高校には通うも、中学より広い領域へ出た彼女は

自分よりも凄い才能の持ち主に出会うことで

自らも比べ、精神を蝕んでいった。


「それでも親は見捨てなかったんだよね。」

 

家族や周りに助けられて高校は一応卒業出来たけど、

同時に失ったものもあったと、かなうは涙を零すように

ポツポツと語る。


かなうが人に自分の内情を話すのは、

雛子が初めてだった。


「変わりたいけど、いつも変わっていくのは

私じゃなくて私の周りの環境で……。」


意識も努力もしてるからこそ、

何が足りないのか、かなうには分からなかった。


「このゲームも期待だけ搾取したデタラメだよね。

現実の延長でしかないと感じてる。」


かなうのその言葉に、雛子は大きく目を見開いた。


自分以外にもこのゲームの真相に近付き、

向き合おうとしている人がいたのかと。


「痛いほど分かります。」


雛子もまた、挫折を味わった側の人間であった。


「私、現実では演劇を学んでいて…

舞台や発表会にはよく出てるんです。」


親の勧めで始めたバレエから、演劇の道を目指し

舞台公演へ向けて励んでいた雛子。


「へぇ!凄いじゃん!」


かなうはそう褒めるが、

雛子は素直には受け取れなかった。


励んでいたとは言え、雛子はいつも

主役にはなれなかった。


「どんなに練習しても、どんなに頑張っても

努力だけでは報われない事もあるんです。」


上には上がいる。

時には、華があるなんてセンスだけで

主役に選ばれる人間もいる。

 

真面目な雛子に突きつけられる現実はいつも厳しかった。


「かなうちゃんと同じ。」


天文台で談笑していた時に

かなうは女の子という事実を知った雛子は、

早速親しみを込めて"かなうちゃん"と呼んだ。


「私もファントム・ストーリーでなら、自分の何かが

変われるかもしれないと思って始めてみました。」


私らしい表現が見つかればという思いで、

雛子もまた、このゲームのユーザーとなった。

 

「結果、魔法の影響で身長が縮むという

身体の変化はありましたけど……。」


そう言って自傷気味に笑う雛子。


「え?魔法の影響で……?」


魔法による害を初めて聞くかなうは、

詳しく聞きたいと今度は掃除をすっぽかし

雛子が拭いている窓の付近に座った。

 

「えぇ……っと。」


雛子からは見えていた。


窓で反射する、廊下にいる人物の影が。

 

そう。それは、ホームルーム前からずっと

かなうの周りを付きまとっていた女子達。


ネネ、タエ、ミクの3人だ。


「もしかして魔法を勉強してるのも

その影響を止めるため?」


かなうの言葉は的を射てた。


しかし、雛子はそれどころでは無い。

今もまだキツイ表情で彼女を睨みつけている

女子達がいるのだから。


「わ、私の話はおしまいです!!

掃除終わらせましょう!!」


小心者の雛子には耐えることが出来ず、

かなうに自分と反対の方向の掃除をするように促した。


「え〜雛ともっと話したいのにな。」


ドクン__


そんなかなうの何気なくも温かい言葉1つで、

雛子の心は今までの苦痛と苦労を塗り替えるほど

綺麗に染め上げた。


「来週、また来るので……その時にでもっ。」


口下手故に、ハッキリとまた話したいと

伝えることは出来無かった。


それでもかなうは雛子の気持ちを受け取った。


「当たり前田のクラッカー!!」


かなうは、元ギルドメンバーのボケを真似しながら

雛子へ向けて、満面の笑みを浮かべた。


その一方、光の当たらない廊下では3人の女子達が

陰湿な雰囲気で雛子を妬ましく見ていた。


「苺乃雛子……ちっ……。」

「クッ……かなうくんを誘惑しやがって……っ!!」

「許せないわ……!!」


未だかなうを男だと勘違いし、

かなうとのワンチャンな恋を狙う女子達にとっては

かなうが気にかける雛子の存在は邪魔でしか無かった。


「来週楽しみにしてなさいよ、苺乃雛子。」


ここからどん底へ突き落としてあげるわと

女子達は怪しく笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも作品を読んでくれてありがとう!
ぜひ感想お待ちしてます!

小説家になろう 勝手にランキング
↑こちらを押すと私の作品レベルが少しupします↑
★5評価いただく度におにぎり握ります!!
ブックマークもぜひよろしくお願いします*ˊᵕˋ*

Xでも小説のお知らせを更新したり、情報を届けています!
↓ぜひ、チェックしてね!↓
現実的ファンタジア公式Xアカウント
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ