第77話〜一難去ってまた一難〜
「ただいま戻りました〜。」
魔装具の入った紙袋とタブレットを抱え、
私はアトリエの扉を開いた。
「誰っ!!私達の親密トークを邪魔する人は!!」
「あちゃー。タイミング悪ぃな。」
アトリエのカウンター奥から、かなうさんともう一人。
ふわふわした桃色のボブカット。
水色のキラキラと光る、
いかにも可愛い系の女の子がいた。
苺乃さんとはまた違った可愛い雰囲気を纏っている。
「かなうたん!!誰よこの女!!!
なんでかなうたんの家に
"ただいま"って言ってるの!!!?」
「ちょっとは落ち着けって…。」
かなうさんが面倒くさそうに彼女を拘束し、宥める
なんで縛るのー!!とキラキラの女の子は頬を膨らまし
不服そうである。
「あはは……初めましてぇ……。」
一応挨拶をしてみるも、キツく睨まれてしまった。
なぜ?!!私が一体貴方に何を?!!!
でも、この子…どこかで見たことあるような……。
というか……カウンターを塞がれていて地下にいる
霧香さんの所へ行けない……。
「すまない。みらいは、かなうの幼馴染で…
見ての通り、誰にでも突っかかるタイプだ。」
「みらい……花邑みらい……さん?」
あの、ファントム・ストーリー1のアイドルと噂の……?
だから見た事あったのか。
私は、マスターのお店にみらいさんのポスターが
貼られていたのを思い出した。
「……!みらいのこと知ってるのっ!」
「まぁ……有名みたいなので。」
私がそう言うと、みらいさんは嬉しそうに
鼻を鳴らした。
「ふっ!ふん!当然よっ!貴方良い子ね。」
さっきまでの態度とは打って変わり、
みらいさんは拘束されたまま私に向かって
手を差し出した。
……?握手だろうか。
私は彼女の近くまで行きその手を握る。
「なーんてね!抜花みたい。」
バチンッ__
「いたっ!」
まるで電気が走るような鋭い痛み。
ああ、女の嫉妬とは醜いものだ……。
握った彼女の左手に油断して、空いていた右手が
私の手にしっぺを食らわせた。
暴力怖いよぉ……。まだヒリヒリする。
私は、痛む左手を摩る。
「みらい……お前魔法使ったろ。」
「流石かなうたん!よく気づいたねっ!
この女は気付いてないみたいだけど。」
魔法……?
確かに普通のしっぺよりも
めちゃくちゃ痛かったけど……。
「抜花……花をぶち抜く時のような
小さくも衝撃と痛みを与える魔法だ。」
普通の人はあんま使わない魔法だとかなうさんは言った。
「コイツみたいな意地悪なヤツがよく使う。
"ばっか"なんて言葉、ムカついた時に使いやすいしね。」
なんて意味のわからない魔法なんだ……。
「かなうたん意地悪なんて酷いっ!!
これはれっきとした愛なのに〜〜!」
怖い顔しないでと、わんわんと泣き出すみらいさん。
喜怒哀楽豊かな人だなぁ……。
彼女のテンションに、怒りよりもただ
呆然と眺めているしか無かった。
「ほらな?面倒くさいだろ?」
いつの間にか私の肩に乗っていたわっさんが
コソッと耳打ちした。
「まぁ……確かに……。」
紫雨さん……とんでもない人を
AYAKASHIに引き入れたな……。
これは相当荒れそうだ。
「用済んだなら帰れよ。これ以上は営業妨害だ。」
かなうさんは、みらいさんを拘束したまま
グイグイとアトリエの入口へと押し歩く。
みらいさんは、ヤダヤダと泣き喚いている。
「みらいもここに住む〜〜!!」
それはちょっと勘弁だ……。
「そういや、マチコおばちゃんがジェラートの
キャンペーン企画やってたぞ。」
かなうさんは、ポケットからチラシを取り出し
みらいさんへと渡した。
「シングル料金でトリプル?!!行かなきゃっ!!!」
そう言って目を輝かせたみらいさんは
光の如く、アトリエから離れたのであった。
なんだか、舞依さんを思い出す
勢いの良さだったなぁ……。
「はぁ……ったく。世話がやけるお子ちゃまだよ。」
かなうさんはアトリエの看板をCLOSEにして
店の鍵を閉めた。
あ、今日もう閉店なんだ……。
「また来たら面倒だし、今日は営業終了。
店閉めても商品整理とかはできるからね。」
そう言ってかなうさんは、作業に取り掛かった。
「そういや苺乃には会えたか?」
「はい。魔装具も買えました!
お金もありがとうございます。
使わなかった分は返しますね。」
私は、ブレスレットをかなうさんに見せた。
多めに持たせてくれたかなうさんだったが、
結局ブレスレット2個だけだし半分以上は使わなかった。
と言っても2個で20万円ですけど……。
「いや、良いよ。
ブレスレット型は100回使用くらいで壊れるからな。」
対抗戦までに沢山魔法使うし、
本番には新しい物へ取り替えた方が良いから
お金はそのまま持っといてと断られた。
「こういう時は財力あるやつに甘えとけ。」
そう言ってわっさんは、私の肩から
かなうさんの肩へと飛び移った。
「そうですか……それなら。」
対抗戦の前日にまた苺乃さんの元へ行こう。
不思議な人ではあるが、とても居心地の良い人だった。
私は、ラピスラズリの石が輝く
霧香さん用のブレスレットを紙袋へと戻した。
私のは、エメラルドの石。
ちゃっかり、デザインをお揃いにしてしまったが
大丈夫だろうか……?
「これ、霧香さんに渡してきますね!」
そう言って、私は地下への階段を下った。
明日は18時投稿です!




