第32話〜因果応報〜
かなう視点
深夜2時__
皆が寝静まる頃の時間帯、
私は今日一日の出来事や"不可解な謎"を記録していた。
これらが結び付き、解決した時に
私はここから出られるかもしれない。
そう思いながら……考えることを、書くことを
このファントム・ストーリーへ閉じ込められてから__
一度も辞めることはなかった。
「そろそろ寝たらどうだ?」
ベッドで丸くなっているわっさんが私に向かって言った。
「もう少ししたら寝るよ。今はまだ眠くない。」
次から次へと興味が、好奇心が抑えられない。
溢れきったアドレナリンが私の睡眠を妨げている。
うつつの件、私が提案なんてしなくても
元からここに来る"計画"だったかのように
事が進んでいる。
しかしそれは、
私の口から気付かせてあげるべきじゃない。
そう思ってさっきのあの場は、
下手にうつつを問い詰めたりしなかった。
「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……。」
「ゾンビみたいだぞ。」
低くエッジの効いた声を上げると、
わっさんに怖いと突っ込まれてしまった。
「いや、だってさ……あまりにも……」
残酷というか……
まだ仮定ではあるけど、彼女の不運な人生は
本人の意思関係なく起こってるところもあるって
考えたら…。
「泣くな。共感するな。
誰かの人生までお前が背負うことは無い。」
これは同情なのか……気付いたら私は静かに泣いていた。
「大丈夫。」
わっさんのその言葉には何度救われてきただろうか。
「ありがとう。」
流石私の相棒。
私は、丸くなっていたわっさんを持ち上げて抱き締めた。
「全く、被害者は紛れもなくかなうだと言うのに……
なぜ彼女の生き様に感情移入したんだ。
元々、鳴宮うつつは"この件の加害者"だっただろう?」
そうなんだけどね……。
抱えてたわっさんを私は静かにベッドへと戻してあげた。
彼女が心のうちから本音で叫んでいた
SNSでの悲劇のヒロインっぷりは、
少し感情移入してしまう部分もあった。
スマホに映る、限界社畜B子のプロフィール画面。
そこにはフォロー中という繋がりの証__
3年前、私がこの世界に閉じ込められた原因には
うつつが関わっていた。
お互い面識なんてなかったよ。
でも、運命がそうさせたんだ。
私は、ファントム・ストーリーについて書かれている
記録帳のページを最初の方のページへと捲った。
「鳴宮うつつ……SNSマーケティング会社
【株式会社エンドレスリンク】の元社員。」
作業内容は炎上・スパム・インプレ稼ぎの監視と対処。
社訓は「平和のための歯車をまわそう」
うつつが勤めていたこの会社は、
ファントム・ストーリー制作運営と癒着している。
ファントム・ストーリーのゲーム内ルールには、
ネタバレ防止のため、第三者への情報漏洩禁止という
契約条件の元、遊ぶことが可能で初期に契約も交わす。
初めは、だいぶ凝ってるゲームだなと呑気だった。
しかし、私はこの犬……わっさんとの出会いと
所属していた"元ギルド"の事件きっかけに
このゲームの真実を知ってしまった。
「このゲームがもし、終わったとして……
わっさんの命が消えるなんてことは無いよね…。」
わっさんは、私が昔飼っていた愛犬の
ルナであることがわかった。
「俺は一度死んで魂しか残ってないからな。
こういう風に別の物体に乗り移ることが出来れば
"永遠の命"なのかもな。」
……綺麗に成仏されたら分からないが。
なんて悲しいことも言う。
架空の世界であるゲームに
プレイヤーや前世を知るNPCがいるなんて可笑しい。
いくらAI技術が進んだとしても越えられない壁はあると
私は思っている。特に生死に関しては。
「俺の生存に関して、今心配することは無い。」
「そうだね。生まれ変わった気分はどう?」
だからこそ、このゲームに違和感を覚えて
私は契約を破り、SNSで抗議した。
その抗議が拡散される前に消したのが、
エンドレスリンクであり、鳴宮うつつだった。
「選べるならもっとクールな顔に生まれたかった。」
「わかる。前より間抜けな顔してるよね。」
間抜けだと言うと、そんな事ないとわっさんは
ふて寝してしまった。
「ごめんごめん。」
平謝りするも、グースカ寝てしまったわっさん。
「寝るの早すぎだろ。」
私は、わっさんに毛布をかけてあげた。
結果、私の抗議は消されて誰にも届くことなく
運営には報告され、元の場所へも帰して貰えないという
罰を受けた。
そこから私は一人考えて調べて、
真実を知らない大事な人とも距離を置き
孤独になった。
孤独になれば怖いものなんて何も無かった。
「……。」
これは復讐なのかな?
分からない。
けど、私もうつつの不運に手を貸したうちの
一人であったことは間違いない。
私は、ファントム・ストーリーのユーザー情報を開いた。
そこには、招待中ユーザー【鳴宮うつつ】の文字がある。
「運命というよりは……"因果応報"ってやつかもね。」
これを本人に伝えたら
きっと嫌われてしまうかもしれないね。
私は記録帳をしまい、スマホの電源を落として
わっさんの温もりが感じるベッドへ眠りについた。
ようやくかなうの口から語られる3年の真実。
この辺からまた1話・2話の登場シーンを読んでみたりすると
かなうのキャラの深みが出て面白いかもしれないです!




