第25話〜押してダメなら〜
壁に触れながら家を2周して、
私は違和感のある部屋を見つけた。
「ここ……!」
それは、オタク部屋と言っても過言では無い
2階にある蘭さんの個室。
棚が上までピッタリくっ付いているせいで
1周目では気付かなかったが、フィギュア棚が接している
壁に少し切込みのような線があった。
ギィィ__
壁が回転するように動いた。
「やっぱり…。」
恐る恐る、扉の先の部屋へと入る私。
「暗い……。」
私は、ウエストポーチからスマホを取り出して
懐中電灯モードのライトを付けた。
やっぱスマホって便利だな……。
ライトで部屋全体を照らす。
「思ったより……狭い。」
部屋というより物置レベルだ。
しかし、この部屋もまた
和室のように何も物がなかった__。
「すぐそこまで答えは見えてるのに辿り着けない…。」
ここまで来たんだ。
詰んで帰るなんて絶対にしたくない…!
きっとここにも何か仕掛けがあるはず。
私はこの部屋の壁を隅から隅まで、
ライトを照らしながら武器屋への道を探した。
「この部屋で、まだ見てない所があるはずだよ。」
かなうさんが、自身の目元を隠しながら話した。
見てない所……?
「うつつは、この部屋にどうやって来たんだっけ?」
かなうさんはさらにヒントを教えてくれた。
「壁を回転させて…………あっ」
回転して入ってきたということは、
今見えている扉の壁はオタク部屋側の壁。
ギィィ__
私は、扉を半回転させた。
「掛け軸が…!」
この部屋側の扉にも、掛け軸が掛けられてあった。
そこに書いてあった言葉は__
「"灯台もと暗し"……。」
身近な事情は、かえってわかりにくい例えとして
使われている言葉だ。
まだ答えには辿り着かないようだけど、
この部屋の真のヒントのようだった。
私は部屋の床をライトで照らした。
「これは…………?」
床をよく見ると、うっすらと四角の線が見えた。
丁度、人が1人収まるくらいの大きさである。
「どうやら最後の問題を見つけたみたいだね。」
かなうさんが、おめでとうと言った。
つまり、ここが武器屋への入口ということか。
「最後の問題ということは、
この床も何か仕掛けがあるんですね。」
私は、床を押してみた。
__しかし、何も起こらない。
「よく見てごらん。何か見えるはずだよ。」
私は、四角の線をよく観察した。
「ん?四角の中にも何か書いてある……。」
うっすらと5本のまとまった線がいくつか見えた。
そして、その5本の線の上には
黒く塗りつぶされた丸が沢山あった。
「これどこかで……見た事がある。」
見た事のある線と点だった。
「そうだねぇ。この家でも見かけたよ。」
この家でも……?
「あっ……!!!」
カシャ__
私は手に持っていたスマホで、床の写真を撮った。
「かなうさん、少しここで待っててください……!」
「はいよ〜。」
私は、隠し部屋を出て階段を下りた。
この長くて角度のある階段の謎も分かった気がする。
ガチャ__
「これ…!」
私は1階のリビングの部屋に入り、ある物を手にした。
それは、ピアノの上に置かれていた楽譜。
「床に書かれていたものと同じだ…!!」
楽譜と、スマホで撮った床の写真を擦り合わせる。
この床に描かれてる音を弾けば良いのね。
「鍵盤ハーモニカしか弾いたことないけど……。」
弾けないことは無い。楽譜も読める。
私は鍵盤に手を触れ、床に描かれていた小節を
1音ずつ丁寧に弾いた。
ガコンッ……ギギギギィ__
上の階から装置が作動したような音が響いた。
「押してダメなら、"引いて"みろ……。」
なんて上手い仕掛けなんだろう。
今まで壁を押すギミックから辿り着けた場所だったから
最後のピアノを弾くというギミックが効いている
良い謎解きだった。
半分近くかなうさんに答え貰ってたけどね……。
まぁ、結果良ければ全て良し。
私は急いでかなうさんが待つ、隠し部屋へと向かった。
「おめでとう、うつつ。装置が作動したよ。」
隠し部屋に戻ると、
かなうさんが笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「へへ……かなうさんのおかげです。
私一人じゃ解けませんでした。」
私は少し照れ臭く、彼女にお礼を伝えた。
「ここ、2階じゃなくて3階だったんですね。」
装置が作動した床下には、木製のハシゴが架けられていた。
「めんどくせぇ作りだよな。来客に、家中
好き勝手に捜索させる神経も私には理解し難い。
実際は生活してないんだろうけどさ。」
確かに……私もそこは理解できない派だ。
でも、それだけ自信があるカラクリ屋敷なんだろうなぁ。
「うつつが自分の力で謎を解いたんだ。先にどうぞ。
足元には気を付けてね。」
「はい……!」
私は、ハシゴに足をかけた。
ピシッ__
「へっ?」
あともう少しで、目的地に着く。
そういう達成感の前に、人は一度気を緩める。
今もそう。
ドゴォォン__
「なんで……いつも……こうなの……ケホッ、ケホッ。」
折れたハシゴと宙を舞う埃。
__そして不運にも落っこちた私。
完全に不意を突かれた気分だ。
きっとこれは、仕掛けでもなんでもない
……ただの"不運"。
見上げると、かなうさんが唖然とした顔で
こちらを見ている。
その後我に返ったかなうさんは、私の心配をしてくれた。
「うつつ……?!!大丈夫か?!!!」
あぁ今すぐ、このまま1階まで
床を突き破って帰りたい……。
そんな気分になった。




