第23話〜迷宮①〜
ガチャ__
中へ入った瞬間、鍵が閉まった玄関の扉
「中は普通ですね。」
玄関から見える2階への階段。
どこも可笑しな様子なんてない。
「見た目はな。」
見た目は…?
「私は答えを知っている。
うつつに解かせた方がいいか?」
かなうさんは大きな声を出し、誰かに聞いていた。
《たまには気が利くじゃないか。そうしてくれ。》
どこからか、先程のクイズを出題していた人の声が
聞こえた。
「ということだ。うつつ、好きに進んでいいよ。」
かなうさんに優しく背中を押される。
「好きにと言われても……。」
他人の家を好き勝手に回るのは少し気が引ける。
「大丈夫。
進まないと"目的の場所"に辿り着けないからさ。」
「え?ここが目的地じゃないんですか?」
かなうさんの発言が気になり、思わず突っ込む。
「んー。この家は"仮の姿"?というか……。」
まぁ、進めばわかる!!と
グイグイ私の背中を押して歩かせた。
仮の姿ってどういうことなんだろう……?
「じゃあ……右の部屋から周ってみます……。」
私は階段の両サイドにある部屋のうち
右側の部屋から周ることにした。
引き戸を開けると、そこは畳の部屋だった。
部屋の奥には床の間があり、掛け軸が掛けてある。
反対側には小窓。
それ以外は特に何も無い和室だった。
「不撓不屈……。」
私は、掛け軸に書いてある言葉を読んだ。
強い意志を持ち、どんな困難にも負けずに
立ち向かうという意味。
まるで今の私に語りかけているような言葉だと思った。
「ふーん。ここの掛け軸も変わるのか。なるほどね。」
かなうさんが掛け軸に近づいた。
掛け軸も変わる……?
「前は違かったんですか?」
「"私の時"は、臥薪嘗胆だったよ。」
不撓不屈とは意味が違うが少し似たような言葉。
どちらも困難に立ち向かう姿勢を示しているが、
"臥薪嘗胆"は復讐や目標のための耐え忍ぶ覚悟。
"不撓不屈"は、ただ真っ直ぐな意志……。
なぜ掛け軸を変えたのだろう?
「ここではなさそうですね。」
他の部屋に繋がる扉もないみたい。
「左の部屋行きます。」
和室を出て、私達は左の部屋へ入った。
「うーん。今のところ普通……。」
机とソファ、それからテレビとオルガンがあった。
蘭さんはピアノを弾くのが得意なのだろうか?
置かれた譜面を手に取ってみた。
どうやら、ドヴォルザークの交響曲第9番
「新世界より」の譜面らしい。
「あ!もしかして、ピアノの裏に隠し部屋があるとか?」
普通じゃないというなら、
こういう家具とかに仕掛けがありそうだ。
「そんな安直なギミックをアイツは作らないよ。」
結構自分の中では自信があったが、
かなうさんに笑われてしまった。
違うのか…。
「じゃあ次の部屋に行ってみます…。」
私は、リビングと繋がっていた部屋の扉を開けて入った。
「キッチンかぁ。」
「流石にここは違うとみて良いよ。」
キッチンと、その隣の風呂場とトイレも
一般的な物で何も無かった。
「2階ですかね?」
玄関からすぐのところに見えていた大きな階段。
「まぁ、上ってみるといいよ。」
かなうさんは、私の背中を3回ポンポンポンと押した。
この階段……上ってみると、急な勾配で
普通の家の階段より長い気がする……?
落ちたら怪我しそうだな……。
私は足元に注意しながら階段を上った。
上った先にあったのは、2つの扉。
1階と同じように、私は右側から見ることにした。
「ここも違うよね……。」
中はパソコンの置かれたデスクと椅子。
沢山の美少女フィギュアが飾られた棚が置いてあった。
フィギュアは全部、可愛い魔法少女のもので
壁にもポスターが貼られていた。
「フィギュアは無闇に触るなよ。アイツ、キレるから。」
「あ、はい…。」
私は、触ろうとした手をそっとしまった。
なんだかここの部屋に居ると、
蘭さんの大事な物を壊してしまいそうで怖いな…。
私は、隣の左側の部屋に移動した。
「うーん。また和室。」
押し入れには布団が入っていただけで他には何もない。
寝室のようだ。
私は、部屋の中にあった
押し入れとは別の引き戸に手をかけた。
「ん?」
引き戸の先には長い廊下。
あれ……?
「2階にこんな廊下あったっけ…?」
階段を上った先、長い廊下なんて見当たらなかったのに。
「もしかして……この先に?」
行き止まった場所に武器屋なる場所があるのでは…!
ついに辿り着ける!!
そう思った私は、ルンルン気分で廊下を進んだ。




