第14話〜二日酔い〜
かなう視点です
うぅ……頭痛い……
グワングワンする。
身体も重く、起き上がれない。
「今何時……?」
そう思ってスマホの画面を見るが、
日付も時間も0で固まっている。
「チッ……!!」
バンッ__
私は、スマホを遠くへ投げた。
「わっさーん…」
わっさんを呼ぶが返事がない。
というか、隣に居ない。
どこ行ったんだろう。
二日酔いで私がダウンしていても、
飯だけは食わせろと起こしに来るヤツだ。
何かあったのかと心配になった私は重い体を起こして、
さっき投げたスマホを拾い、リビングへ顔を出した。
「……いない。」
うつつのところかな?
「うつつー。あけるよ。」
この部屋も近いうちに私の荷物を出さなきゃな。
今日は無理だが、明日はうつつと買い物にでも行きたい。
「あれ……。」
うつつの部屋と化した私の寝室を開けるが、
そこにはうつつの姿も、わっさんの姿もなかった__
「どこいったんだ……?」
そう思いながらリビングのソファへと座ると
テーブルの上に手紙が置いてあった。
[わっさんと街の観光してきます。夕方には戻ります。
洗濯物も畳んで部屋の前に置きました。]
そこには、綺麗な字で書かれた丁寧な文。
「そっか、わっさんとお出かけしに行ったのか。」
あの犬ちょっと抜けてるところあるけど大丈夫かな……?
いや、大丈夫だと信じたい。
こうして手紙を置いてくれただけでも私は安心だ。
「う……安心したら、急な吐き気が……」
私は急いでトイレへ駆け込み、出せるもん出し切った。
吐くくらいならまだ全然良い。
「記憶無いのが一番怖い……。」
昨日って、確かAYAKASHIもいたよね……?
キッチンでコップに水を注ぎながら考えた。
実やうつつは私が痴態を晒していても気にしなそうだが、
紫雨とまゆりは違うだろ……。
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛こんな風に思うなら
お酒をセーブすれば良かった。
ゴクリ__
私は、注いだ水を一口飲んだ。
「水うますぎ…。沁みるぅ……。」
ピンポーン__
水の美味さに浸ってる時に鳴る
空気の読めないインターホン。
誰だよこんな時に。荷物なんて頼んだ覚えない。
備え付けのインターホンのモニターから、
来客の顔を覗いた。
「あ?紫雨か。無視無視。」
部屋に戻って、横になろう。
ピンポーンピンポピンポピンポーン__
「うるせぇな?!!!」
一体なんなんだ。
私は、インターホンからキレ気味に返事をした。
「なに……。」
「ふはっ!いつもの3倍声低ない?
まぁでも、ちゃんと起きとったんやね。
二日酔いの見舞いに来たで〜」
なんだコイツ。煽りに来たのか?
「二日酔いに見舞いなんていらねーだろ。帰れ。」
「まぁまぁ、そんなこと言わず。身体怠いやろ?
飯だけでも作らせて欲しいなぁ。」
あぁ?飯だけでも?
私がこうなるってことを分かってて
昨日飲む手を止めることも無く、
ご丁寧に食材まで買って来やがったな。
準備までされては、断れない。私はそういう性格。
「チッ……好きにしろ。」
本当に心配で来たのか…それとも確信犯か。
どっちにしろムカつく。
「やったー!ほな上がらせて。」
「解錠魔法」
私は、1階と2階の鍵を魔法で開けた。
鍵を閉め忘れた時とか、失くしてしまった時、
半径5m圏内であれば、自宅の鍵の開け閉めができる
便利な魔法だ。
アトリエに紫雨が入ったことを確認して、
私は1階の鍵を閉めた。
ここには、貴重な物が沢山あるからね…。
泥棒に盗まれたりしたら大変だ。
1人1つの戸建て…つまり家主にしか使えない魔法だから
他人が人の家を解除魔法で入ることも出来ないため
セキュリティ面でも心配は要らない。
ガチャ__
「お邪魔しま〜す。わぁ、ここ来るの初めてや!」
紫雨が玄関の扉を開けて入ってきた。
私もリビングと玄関からの通路を繋ぐ扉を開け、
一応出迎えた。
「少しは静かにしてくれない?頭にガンガン来る。」
そんなにはしゃいで、遊園地に来たお子ちゃまかよ。
「すまんすまん……え?」
「なに……?」
私をマジマジと見てくる紫雨。
「いや、可愛ええなって。寝巻き。」
「は……?」
まぁ、確かに……?
普段は、白シャツに黒パンツ、
装飾の付いたコートを羽織ったシンプルで
スタイリッシュな格好をしている私が、
家では耳付きのモコモコパジャマを着てるなんて
想像もつかないだろう。
戦闘衣装に比べたら露出も多いし。
今は前髪も上げてるから、まるで別人だ。
「あ、前だけは閉めとき?」
「?」
「お粗末なもんが見えて可哀想やから……。」
コイツ……。私の胸をジロジロ見て言ってやがる。
「マジで最低。食材だけ置いて帰れよ。」
私は、パーカーのチャックを首のところまで閉めて
玄関を指差した。
「ごめんごめん!今作るから。帰らせんといて!」
顔の前で手を合わせて膝をつき謝る紫雨。
その惨めな姿を、私はスマホを取りだして撮っておいた。
「可愛く写っとる?」
覗こうとしてきた紫雨だったが、
私は必死にスマホを隠した。
勘のいいコイツに私のスマホを見せてはいけない。
そう思ってとった咄嗟の行動だったが、
それが裏目に出ていそうで怖くなった。
「え〜隠さんといて〜」
「今度ね。それより、飯!
かなうちゃんお腹空いたなー。」
キッチンは、玄関入ってすぐ通路と直結している。
私はキッチンを指さし、作れとジェスチャーする。
「任せてな、美味しいもん作ったるわ!
気分悪いやろ?横になっとき。」
着ていた羽織りを私に渡し、
料理がしやすいように腕を捲る。
そして、前髪をかき上げてヘアピンで留めていた。
懐かしいな…なんか。
てか、前髪切れば良いのに。
折角顔がいいのに勿体ないよな。
「うん。リビングで寝てるから出来たら起こして」
私は、羽織を毛布代わりにしてソファで横になる。
吐き気と怠さで胃がムカムカしていたが、
少しだけ落ち着いた気がした。




