第10話〜歓迎①〜
かなうさんと紫雨さんに連れられ、
街の集会所で手続きをした後__
【リブリー・マージュ】という栄えている市街化区域の
一番人気である酒場の【S.D.D】というお店で、
私達はまゆりさんと実くんの二人と合流した。
店の中は冒険者の憩いの場という感じで賑わっている。
店内に十数個置かれている樽のテーブルが、
中々に良い味を出していて、お店の人の趣味なのか、
所々にアイドルっぽい女の子のポスターが貼られていた。
「は〜い、皆ジョッキ持ってね!」
この世界にもアイドルって居るんだ……。
そんな事を思いながら、私はかなうさんに催促されて、
手前に用意されていた木製のジョッキを持った。
「それでは、うつつ生還&移住登録を祝して…
カンパーイ!!!!!」
かなうさんの乾杯の音頭に合わせて
皆も乾杯と言葉を交わす。
ジョッキがぶつかり合い、カツンという音を奏でる。
沢山迷惑をかけたにも関わらず、
歓迎会までしてくれるなんて……
これから私は高額の壺でも買わされるのだろうか。
疑ってしまうくらい、ここは温かい人達で溢れていた。
「あ゙あ゙ぁ゙!これだよこれ!!
最初の一口目が美味いんだ!」
くぅ〜!!たまらん!!と
今日一番で幸せそうなかなうさん。
見ているこっちも楽しくて明るい気持ちにさせてくれる。
そういう魅力がある人だって、1日過ごして分かった。
「うつつちゃんビールで良かった?
まさか、未成年ではないやろ…?」
「丁度20なので大丈夫です…!!
ビールは、初めてですが…。」
「ほな、俺のカシオレと交換しとく?ビール苦いで?
もしあれなら、追加でジュース頼んでもええよ。」
紫雨さんが、飲み物の心配をする。
まぁ、この魔法少女のような見た目の服装だったら
高校生とかに見えなくもないか。…ちょっと嬉しい。
「ビール、飲んでみます…!!!」
大きくガブリと、一口喉に流し込んだ__
うぅ……
「にっがぁぁぁ……!!!??……え?マズっ……」
「言ったやろ!!!俺は言うたで?!」
いや、これ違う。絶対違う。
ビールじゃない……と思う!!
麦とかホップとかいうやつの香りが全くしない……!
「悪ぃな嬢ちゃん。
オレの"苦丁茶サイダー"が混ざってたみたいで。」
「なんちゅうもん飲んでんねんマスター!」
カウンター奥の厨房から、強面で褐色肌、
そしてスキンヘッドに眼帯という
癖が強すぎる見た目のマスターがやってきた。
未だ、喉奥に残る苦味と不快な炭酸感。
「これを飲むと、オレのスキルが発動するからな。
より美味いメシをお前らに提供出来るわけだ。」
へぇ…スキルって魔物を倒すこと以外にも使えるんだ。
「そんな毎日飲めるもんなん……?コレ」
苦丁茶サイダーが入ったジョッキを持ち、
一口飲んだ紫雨さんは、自爆した。
床に倒れちゃった……。
これに関しては、馬鹿としか言いようがない……。
「実みたいに美味そうな顔しながら
食ってるやつを見るのが、オレの生き甲斐なんだ。」
どこから持ってきたのか分からない
大量のおにぎりを頬張り、幸せそうな顔をしている
実くんをマスターは見て、フッと顔を緩ませた。
人は見かけによらないってこういう事を言うんだな……。
マスターのその生き甲斐が
私にとっては凄くカッコよく思えた。
今まで私の中には
誰かのために働くという考えは無かった。
自分の生活で精一杯だったから。
「代わりにこれ置いとくな。沢山飲んでくれ。」
マスターから貰ったのはオレンジジュース。
彼はこれを置いて再び厨房へと戻って行った。
「ありがとうございます。」
一口飲んだら、喉の不快感も薄まった気がした。
「うつつちゃ〜ん飲んでるぅー?」
「酒くっさ」
まだ料理が来てないというのに、
かなうさんは一体何杯飲んだんだ?
私の肩に腕を回し、すっかり上機嫌である。
「かなうのことを頼んだ……。」
私の足元に、青い犬のぬいぐるみが来て喋った。
「喋ったぁあぁぁあ?!!!!」
「俺は特別な魔物だからな。」
そして、声が中々に渋い。
この見た目で…?
それより聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。
「魔物……!かなうさん!!ここに敵が!!!」
私は動揺し、青き魔物を抱えた上げた。
「うつつ姉ちゃんダァァメェェェ!!!!」
「ぐへぇっ!!!!!」
さっきまでおにぎりを食べてたはずの実くんが
私のお腹に向かってタックルをして来た。
なにごと……?!
「わっさんは特別な魔物なんだよ!」
「そうだ、俺は特別な魔物だ。」
つまり……?
全然理解ができない。
かなうさんに聞こうとしたがダメだ……
酔って自分の世界に入り込んでいる。
あぁ!!!もぉどうしたら良いの……!!




