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ザマァされた悪役令嬢の、Re:Re:リスタート  作者: 遥彼方
Re:Re:リスタート

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78 告白もどき?

 トレバーの謝罪を聞いた途端に、どっと力が抜けた。


「はあ、良かった」


 前世からずっと燻り続け、抱え込んでいた感情をトレバー(父親)にぶつけることが出来た。


 肩の力が比喩ではなく抜けてしまい、両手を床につく。がくりと頭も垂れ、プラチナブロンドが視界を覆った。


 トレバーは前世の父親ではないけれど、現世の、イザベラの父親で。その父親がイザベラの主張を認めてくれた、受け止めてくれたことは、何よりも大きかった。


「お嬢様ぁぁあああああぁっ」

「ひゃあっ」


 横からエミリーに半分体当たりのように抱きつかれ、悲鳴を上げた。


「よく頑張られたでございますですね!! 良かったでございますですね!」


 ぎゅうっとイザベラを抱くエミリーは、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。


「ああもう、エミリーったら」


 泣きそうになったイザベラはエミリーの体に顔を埋めた。柔らかさと温もりに包まれ、ひだまりの匂いが胸に広がる。


「ぐすん。すみませんです、つい。私よりもセス様でございますですね」


 鼻水をすすり上げたエミリーが、体を離した。


「本当によかったでございますです。勢いで告白だってできましたしね! ほら、イザベラ様」

「え? エミリー?」


 両肩を持ったエミリーに、体の向きを変えられる。


「勢いで告白……?」


 何のことだろうと首を傾げる。戸惑いながら正面に目を向けると、セスの顔がぱっと赤らんだ。青い目がすっと斜め下に逸らされる。


 え、待って。何を言ったっけ?


 明らかにセスの反応がおかしい。

 イザベラは自分の言ったことを反芻した。


『ほら! 犬の私なんかがお父様の娘をやれないじゃない』


 いや、多分これは違う。その前は確か。


『だから! 私はこれからお父様が馬鹿にしている駄犬のセスと一緒になるの!』


 一緒になるの……一緒になる……?

 一緒になるってつまり結婚。


「あ!」


 かああっと頬に血が上った。


「私、一緒になるって。え、でも」


 言った。確かに言った。言ったけれど。


 あれが告白? 確かに字面としては告白ではある。あるけれど、なんか違う。告白とは、なんかこう、二人でいい雰囲気になってやるものでは。

 いや、麗子の時はそんな雰囲気もへったくれのない時もあったが。我慢のきかない童貞とか。勘違いした俺様とか。


「ち、違っ、いや、違わないけど、違うの」


 違うと否定した途端にセスの顔に傷ついた色が走って、慌ててそれも否定する。

 否定しても駄目で、肯定しても何だか違う。


 もう、どうしたらいいのー!


 分からなくなったイザベラは、頬を両手で覆った。熱い。湯気でも吹き出しそうなくらい熱い。


「あの、お嬢様。今まで身分違いだと思っていましたが、対等の立場だと思っていいですか」


 セスが意を決した様子で伏せていた青い目を上げ、真っ直ぐに射抜いてきた。


「はい、対等です」


 思わず背筋を伸ばし、こくこくと頷く。


「イザベラ」

「はい」


 どうしよう。


 セスは本当のところ、イザベラのことをどう思っているのだろう。


 好きでいてくれるのかな。守るって言ってくれたし、ずっと優しかった。ああでもそれは単なる護衛騎士としてかも。ただの主人としか見てなかった、ごめんなさいとか。もしかして身分があるから今まで我慢していたけど、本当は嫌だったとか。もしもそうなら、立ち直れない。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。


「……おい、セス。いい加減に退け」


 トレバーの低い声が、床から響いた。


「「あ」」


 イザベラとセスの声が重なった。弾かれたように、セスが極めていたトレバーの腕を離す。

 すっかり忘れていたが、セスはトレバーを拘束したままだった。


「くそ。思い切りやりおって」


 セスが背中から下りると、体を起こしたトレバーが腕をさすって悪態をついた。


「申し訳ありません」

「全くだ!」


 頭を下げるセスに、怒鳴った。


「いいか。犬でないことは認めてやる。国王になるのもならないのも自由にしろ。ただし、対等というからにはこれまでの恩を利子をつけて返してもらうからな! 覚悟しておけよ、この駄け……阿呆が!」


 完全に目が据わった不機嫌極まりないトレバーが、セスに指を突きつける。


「しかも人の上で何をする気だ! 何が悲しくて俺は娘へのプロポーズだか告白を聞かされなくちゃならんのだ。それはこの状況を何とかした後でやれ! 分かったな!」


 捲し立てると、ふん、と横を向いた。


「素直じゃないですねぇ、公爵殿。喜べ、セス。後でならいいらしいぞ」

「うるさいぞ、若造」


 ぽん、と肩に置いた手を乱暴に叩き落とされたエヴァンが、ニヤニヤとあごを撫でた。


「おや、いいんですか、若造なんて言ってしまって」


 忘れそうになるが、エヴァンはシアーズ公爵家の五男であり、殿下直属の護衛騎士だ。


「ふん! 今の状況で家柄も殿下の威光も何もあるか。お前もそれが分かっていての、馴れ馴れしい態度だろう」

「はははは! 分かりました?」

「本当に性格の悪い若造だな、貴様は」

「他人のこと言えます?」


「同じ穴の狢でございましょう」

「ぷっ」


 言い合う二人をすぱりと切って捨てたジェイダに、イザベラは吹き出した。

明けましておめでとうございます!


皆さまよい年末年始を過ごせましたでしょうか?

コロナ過で通常のお正月とはいかなかったでしょうが、1日も早い収束を願います。


今年もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良かったー! トレバーが、とにかくにもセスを認めて、良い父親で! エミリーも相変わらず(笑) ここは、束の間のほっこりシーンですね^^ 読後感良かったです♪
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