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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第三章

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第四話


 昨日は迷宮へ潜る予定だったけど、明け方までお仕事していたので、自主休暇としました。

 鉱石が掘れる階層は敵があまり湧かないけど、それでもゼロではない。

 そのとき、寝不足で注意力散漫だと本気でやばいからね。

 ブランがいるから、たぶん大丈夫だとは思うけど、あまり頼りすぎると叱られるからなあ。


 そして丸一日休養したおかげで、体調はリフレッシュ。

 気合十分でバイトに挑んだ。


「いらっしゃいませー、バーガージャックへようこそ!」


 お店のドアが開くと、反射的に口からいらっしゃいませを言ってしまう。

 癖になったなぁ。


「やあフィーリア君」


 最大手クラン常闇の光のサブマスター、セブリアンさんの声だ。

 そして……うわぁ…………。

 なぜかレオナードがセブリアンさんと一緒にきやがった。


 迷宮都市に一人しかいない第二級探索者だから、大手クランとの繋がりもあるだろうけど、なんでファーストフードにくるかな。

 お金持っているんだから、高級料理店に行ってほしい。


 もちろんそんな考えは、一切表に出さず、にこやかな笑顔で対応した。


「セブリアンさん、いらっしゃいませ! 二名様ですか?」

「ああ、席空いているかい?」

「はい! ご案内しますね。二名様ご来店でーす!」


 席に案内している間、なぜかレオナードがあたしを見て首をかしげていた。

 なんだこいつ? もしかして指名手配を探しているのかな?


「探索者セットを頼む。レオナードも同じものでいいか?」

「お任せします、セブリアンさん」

「かしこまりました、では探索者セット二つですね!」


 あたしが注文を受けて離れていくと、レオナードがセブリアンさんに何やら聞いていた。


「セブリアンさん、あの子は?」

「フィーリア君か? ここでバイトをしている探索者だ。確か八級だったかな? なんだ、気に入ったのか?」

「いえ、どこかで見たような気がして。探索者なら、探索者協会や迷宮ですれ違っていても、不思議じゃないですね」


 確かに、数回すれ違ったことはある。とくに一番最初のミサだ。

 人工勇者が暴れていたとき、レオナードがそれを捕まえたんだけど、その時こいつに見られていた気がしたんだよね。

 それに怪盗していたとき何度か対峙しているし、背格好が似ているあたしに、違和感を覚えても仕方はないか。


 まあいくら怪しくても、あたしは水属性ですから!

 

 そんなことを考えながら料理を待っていると、レオナードがセブリアンさんに愚痴を吐き始めた。

 しかも周囲への配慮とか一切関係なく、大声で。


「セブリアンさん、最近の教会、おかしくないですか?」

「まあそうだな」

「なんでも教会の大司教が消えたとか。人工勇者とやらも、妙なことになっているし」

「声がでかい」


 もう教会の上層部が行方不明になったって、噂が流れているのか。

 さすが早いね。

 それにしても、声でかいよ。ここお店だよ?


「言わせてください! 協会長も国に問い合わせる、と言ってたのに教会じゃなく、あの謎の剣士を捕まえろ、としか言わないし! 絶対おかしいですよ!」


 セブリアンさんは、窘めるのを諦めたっぽい。

 無言でじっとレオナードを見ている。


「セブリアンさん、こんなの間違っていると思いませんか!?」


 あっ、ハンバーガーが出来た。

 店長が目で、静かにしてくれと言ってこい、と訴えてきている。

 面倒くさいなあ。


「謎の剣士は確かに捕まえなきゃいけない。だが俺としては、教会を放っておくわけにはいかない!!」

「お待ちどうさま! 探索者セット二つです!!」


 あたしがその会話、というよりレオナードの独り言に割り込んで、バンッとハンバーガーをテーブルに置いた。

 そして自分の口に人差し指を添えて、シーとジェスチャーする。


「お客様、もう少し声を控えてください」

「君だってそう思うだろ!? 人工勇者の件を放っておいて! 優先度ってものを知らないのか!」


 こいつ空気を読めよ!

 あたしに言われても、何も言えるわけないじゃん。


「教会も逃げるように上層部がいなくなるし、探索者協会は謎の剣士を捕まえろとしか言わないし!」


 それにしても、お酒も入っていないのに、次から次へと……。

 そうとう鬱憤が溜まっていたらしい。

 

「レオナード」

「セブリアンさんもそう思いますよね!」

「全く君は……いいからこい」

「あっ、ちょっ、セブリアンさん!」


 とうとうセブリアンさんが切れて、レオナードの腕を掴んでお店から出ていった。

 えっと、探索者セット……残ったままなんですけど。


====


 なぜか探索者セット二つ、お土産にもらいました。

 レンジがないので、完全に冷えてるけど、それでも夕食代が浮いたのは嬉しい。

 問題は二つも食べられないってことだ。

 明日の朝ごはんにしようかな。


(教会の噂が広がりすぎているな)


「んー、そうだよね。ここ一~二日のことなのに、広まるの早いよね」


(今夜、ケリをつけるぞ)


「えっ? まあ忍び込む予定だったからいいんだけどさ。性急すぎない?」


(馬鹿者。明日くらいになれば、またあやつが要らぬことをするぞ。それに探索者協会も何か動いているかも知れぬ)


 そういえば、国が人工勇者製造機を調査するって、パンチョさんが言ってたっけ。

 となると、電池も同じく国が持っていくのだろう。セットだからね。


 ……もしかして、国に渡したくないから、教会の上層部は地下に隠れてこそこそしているのかな?


 なんか、駄々っ子みたいだね。

 そうなると国が……というより、探索者協会が強制的に査収するかもしれない。

 国に持っていかれると、面倒なことになる。


「そうだね。急いだほうがいいかも」


 仕方ない。今夜ケリをつけよう。


 冷えたハンバーガーに齧りつきながら、あたしは決意した。




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