第四話
昨日は迷宮へ潜る予定だったけど、明け方までお仕事していたので、自主休暇としました。
鉱石が掘れる階層は敵があまり湧かないけど、それでもゼロではない。
そのとき、寝不足で注意力散漫だと本気でやばいからね。
ブランがいるから、たぶん大丈夫だとは思うけど、あまり頼りすぎると叱られるからなあ。
そして丸一日休養したおかげで、体調はリフレッシュ。
気合十分でバイトに挑んだ。
「いらっしゃいませー、バーガージャックへようこそ!」
お店のドアが開くと、反射的に口からいらっしゃいませを言ってしまう。
癖になったなぁ。
「やあフィーリア君」
最大手クラン常闇の光のサブマスター、セブリアンさんの声だ。
そして……うわぁ…………。
なぜかレオナードがセブリアンさんと一緒にきやがった。
迷宮都市に一人しかいない第二級探索者だから、大手クランとの繋がりもあるだろうけど、なんでファーストフードにくるかな。
お金持っているんだから、高級料理店に行ってほしい。
もちろんそんな考えは、一切表に出さず、にこやかな笑顔で対応した。
「セブリアンさん、いらっしゃいませ! 二名様ですか?」
「ああ、席空いているかい?」
「はい! ご案内しますね。二名様ご来店でーす!」
席に案内している間、なぜかレオナードがあたしを見て首をかしげていた。
なんだこいつ? もしかして指名手配を探しているのかな?
「探索者セットを頼む。レオナードも同じものでいいか?」
「お任せします、セブリアンさん」
「かしこまりました、では探索者セット二つですね!」
あたしが注文を受けて離れていくと、レオナードがセブリアンさんに何やら聞いていた。
「セブリアンさん、あの子は?」
「フィーリア君か? ここでバイトをしている探索者だ。確か八級だったかな? なんだ、気に入ったのか?」
「いえ、どこかで見たような気がして。探索者なら、探索者協会や迷宮ですれ違っていても、不思議じゃないですね」
確かに、数回すれ違ったことはある。とくに一番最初のミサだ。
人工勇者が暴れていたとき、レオナードがそれを捕まえたんだけど、その時こいつに見られていた気がしたんだよね。
それに怪盗していたとき何度か対峙しているし、背格好が似ているあたしに、違和感を覚えても仕方はないか。
まあいくら怪しくても、あたしは水属性ですから!
そんなことを考えながら料理を待っていると、レオナードがセブリアンさんに愚痴を吐き始めた。
しかも周囲への配慮とか一切関係なく、大声で。
「セブリアンさん、最近の教会、おかしくないですか?」
「まあそうだな」
「なんでも教会の大司教が消えたとか。人工勇者とやらも、妙なことになっているし」
「声がでかい」
もう教会の上層部が行方不明になったって、噂が流れているのか。
さすが早いね。
それにしても、声でかいよ。ここお店だよ?
「言わせてください! 協会長も国に問い合わせる、と言ってたのに教会じゃなく、あの謎の剣士を捕まえろ、としか言わないし! 絶対おかしいですよ!」
セブリアンさんは、窘めるのを諦めたっぽい。
無言でじっとレオナードを見ている。
「セブリアンさん、こんなの間違っていると思いませんか!?」
あっ、ハンバーガーが出来た。
店長が目で、静かにしてくれと言ってこい、と訴えてきている。
面倒くさいなあ。
「謎の剣士は確かに捕まえなきゃいけない。だが俺としては、教会を放っておくわけにはいかない!!」
「お待ちどうさま! 探索者セット二つです!!」
あたしがその会話、というよりレオナードの独り言に割り込んで、バンッとハンバーガーをテーブルに置いた。
そして自分の口に人差し指を添えて、シーとジェスチャーする。
「お客様、もう少し声を控えてください」
「君だってそう思うだろ!? 人工勇者の件を放っておいて! 優先度ってものを知らないのか!」
こいつ空気を読めよ!
あたしに言われても、何も言えるわけないじゃん。
「教会も逃げるように上層部がいなくなるし、探索者協会は謎の剣士を捕まえろとしか言わないし!」
それにしても、お酒も入っていないのに、次から次へと……。
そうとう鬱憤が溜まっていたらしい。
「レオナード」
「セブリアンさんもそう思いますよね!」
「全く君は……いいからこい」
「あっ、ちょっ、セブリアンさん!」
とうとうセブリアンさんが切れて、レオナードの腕を掴んでお店から出ていった。
えっと、探索者セット……残ったままなんですけど。
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なぜか探索者セット二つ、お土産にもらいました。
レンジがないので、完全に冷えてるけど、それでも夕食代が浮いたのは嬉しい。
問題は二つも食べられないってことだ。
明日の朝ごはんにしようかな。
(教会の噂が広がりすぎているな)
「んー、そうだよね。ここ一~二日のことなのに、広まるの早いよね」
(今夜、ケリをつけるぞ)
「えっ? まあ忍び込む予定だったからいいんだけどさ。性急すぎない?」
(馬鹿者。明日くらいになれば、またあやつが要らぬことをするぞ。それに探索者協会も何か動いているかも知れぬ)
そういえば、国が人工勇者製造機を調査するって、パンチョさんが言ってたっけ。
となると、電池も同じく国が持っていくのだろう。セットだからね。
……もしかして、国に渡したくないから、教会の上層部は地下に隠れてこそこそしているのかな?
なんか、駄々っ子みたいだね。
そうなると国が……というより、探索者協会が強制的に査収するかもしれない。
国に持っていかれると、面倒なことになる。
「そうだね。急いだほうがいいかも」
仕方ない。今夜ケリをつけよう。
冷えたハンバーガーに齧りつきながら、あたしは決意した。




