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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第三章

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第三話


 お邪魔しまーす。


 もはや自分の家くらい、何度も忍び込んでいる教会だ。

 まず昼間に入った作業部屋へと向かう。


「ではブラン先生、お願いします」


(うむ、任せよ)


 さっくりブランに探ってもらったところ、昼間と同じく地下に数人の気配が残ったままだそうだ。

 その人たちって、食事もお風呂も取らずに、地下に籠りっぱなしってこと?

 あ、でも人工勇者たちを閉じ込めていたのなら、最低限生活できるものは常備されているかな。

 食事については、事前に日持ちするものを用意しておけば、一週間くらいは持つだろう。


 でもそこまでして、籠らなくても……。

 そんなに誰かから隠れたいのかな。


(この辺りまでだな)


 その後、奥の区画以外の部分を散策しながら調べてもらったところ、どうやらあたしが昼間に入った部屋が、地下室の一番奥になっていたらしい。

 つまり教会の半分から一番奥までが地下室ってことだ。

 ひっろ!?

 以前侵入したときに気が付かなかったのは、単に地下には何もなかったからだそうだ。

 人工勇者はいただろうけど、ある程度固まっていないと、気配は読みにくいらしい。

 でも見えないのに、数人固まっていれば分かるって、それはそれですごい。


(やはり入口は教会の一番奥だろうな)


 そうだろうね。

 教会の人なら誰でも入れるような場所に、入口はないだろう。

 あるとするなら、お偉いさんのみ入れる区画、つまり魔法で閉じられた場所にあると思う。

 でも、あそこ窓がないから見えにくいんだよね。しかも廊下が微妙に曲がっているし。


 まあ、すでに地図は作成済みだし、問題はないけどね。

 ということで、行ってみるか。


 一番奥の部屋まで行くのも、もはや手慣れたものだ。

 さくさくと鍵を外して侵入していき、時間もかからず到着した。

  

 「ブラン、明るくして」


 すると、ブランの刀身に炎が纏わりつく。

 これで周囲が見やすくなった。


(まさか我の炎を明かり代わりにするとは……)


 便利なんだもん。

 

 さてさて、探索開始だ。

 まず周りを見るも、特段変わったところはない。

 部屋に入って、まず目につくのは、非常にでかい机だ。これ、何メートルあるんだろ。

 その机には、資料が山盛りになっている。

 椅子があるところはスペースが空いているけど、資料入れみたいなものが二個置かれている。

 片方が未処理で、もう片方が処理済の資料を入れるのかな。


 お偉いさんって大変だね。


 そして机以外だと、ちょっとした会議スペースがあるくらい。

 これだけなら、実に真面目な上司の執務室って感じだ。


 だけど、ここの部屋にも窓はなかった。そのためか、灯りの魔道具があちこちに置かれている。

 なんでそこまでして、窓付けないんだろうね。

 窓があると、あたしみたいな人が侵入しやすくなるからかな。


 そして、部屋の全面が壁なのでたくさんの家具や棚がぎっしりと置かれている。

 特に多いのが聖書関連だ。教会のお偉いさんの部屋だし、それは当たり前か。

 それと会議スペース付近には、何本ものお酒が置かれている棚もあった。


 ここで一杯やりながら、会議でもするのだろう。


 ……これだけあるし、一本くらい拝借してもいいかな。


(お前はまだ酒が飲めないだろう?)


 ちゃんと前世では飲める年齢だったもん!

 一本だけ! 代わりにお金置いておくから!

 手持ちは銅貨三枚しかないけど。



 さて、ざっくりとだが部屋を調べたけど、怪しいところは無さそうだ。

 隠し階段とかあるのかな。でも、それらしきものは見当たらない。

 そりゃ隠し階段なんだから、見当たらないのは当たり前だけどさ。


(右側の棚、入口から数えて四つ目だな)


 えっ? もしかしてわかるの?


(微かに魔力の波動を感じるな。灯りの魔道具と似たような波動だったから、混ざっていたわ)


 あのライト代わりの魔道具か!

 ブランが教えてくれた棚の上にも、灯りの魔道具が置かれている。

 これでごまかしていたのか。調査系魔法への対策かな。

 

 ……で、どうやればいいの?


 こういった隠し棚の定番といえば!

 中にある本を取り出したり、移動したりすると、ガコッという音とともにずれるんだよね。

 よし、やってみよう。

 よいしょっと。この本、意外と重いな。分厚くて何ページあるんだろう。


(何をやっているのだ?)


「え? 調べてるんだけど?」


(この棚自体が魔法の鍵だ。これに特定の魔力を注げば開くだろう)


「先に言ってよ!!」


 無駄な努力をしてしまった。

 もうっ!


 ブランの刀身を、棚へと向ける。


(ふむ、こうか? こうか?)


 なんだか、針金で錠前を開けようとしている気分だ。

 わくわくしながら、ブランの解析を待つ。



 そして……一時間が経過した。

 ねぇブランまだー? 飽きたんだけど。


(もう少しだ、もう少し)


「今日は諦めて帰る?」


(馬鹿なことを言うな! これからだ!)


 でもそろそろ朝日が昇りそうな時間なんだけど。

 今日は迷宮へ潜る日の予定だったんだけど、さすがにこの時間まで起きていると、もう無理だ。

 バイトならまだしも、迷宮に潜っていて睡眠不足で緊張感が切れるとか、自殺行為だもんね。


 あれ? 潜らないのなら、もう少し居ても大丈夫かな。


 まずタイムリミットは、完全に日が昇る前。

 昇ってからだと、起きてくる人たちも多くなるから、そのぶん見つかりやすくなる。

 だから明け方までには撤収する。これは絶対だ。


 次は部屋に誰かが入ってくる可能性だ。

 でもこの区画はおそらく偉い人たちしか入れない場所であり、現在偉い人たちはこの地下にいる。

 つまり、おそらく誰も入ってこない。

 まあ地下にいる偉い人が、ここから出てくるって可能性もあるけどね。


 だから長居は出来ないけど、もう少しだけならブランに付き合っても大丈夫だろう。


(よし! やったぞ!)


 それから十分ほどして、ようやくブランが歓喜の声をあげた。

 それと同時に、微かに振動を起こしながら、棚が上へとあがっていく。


 横にずれるんじゃなく、上にあがるのか!


 教会は天井が高いからね。必然的に部屋の天井も高くなるんだけど、まさか上にずれるとは思わなかった。

 そして棚の後ろから、階段が現れた。


「では今日はここまで!」


(……なんだと? 行かないのか?)


「もうすぐ朝日が昇るし、見つかっちゃうよ」


(むぅ……仕方あるまい)


「続きは明日の夜……かな。今日はもう眠いし、明日はバイトがあるから今夜は無理だ。しっかり開け方を覚えておいてね」





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