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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第三章

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第二話


「今日も盛況……じゃなかった」


 今日は教会のミサへ参加をしにきたんだけど、明らかに前回より人が減っていた。

 色々と問題を起こしちゃったから、仕方ないね。

 でも人が少ないということは、手に入る情報も少ないということだ。

 うーん、これは困った。


 そうして教会の入口で迷っていると、前回と同様シスターに声をかけられた。


「あの、以前お見えになられた探索者のかた……フィーリア殿ですよね」


 おお、すごい。

 あの時少ししかお話ししてなかったのに、名前まで覚えているなんて。


「はい、そうです!」

「今日もミサにご参加いただきありがとうございます。ですが……本日は少々立て込んでおりまして……」


 あれ? もしかしてミサは中止なのかな?

 教会も忙しそうだからね。


「ミサは中止なんですか? 何か他に用事があったんでしょうか?」

「いえ、えっとその、フィーリア殿の属性は?」


 突然、あたしの属性を聞いてきたシスター。

 おおっと、もしかして指名手配の件で、火属性の女の人を探しているのかな?

 でも大丈夫!


「水です」

「ほ、本当ですか! もしよろしければ、少々お手伝い頂きたいのです。もちろん報酬はお渡しいたします」


 思っていた反応とは違った。

 指名手配の件じゃなかったらしい。


「お手伝い……ですか?」

「ええ、少々込み入った事情がありまして……こちらへどうぞ」


 シスターに言われるがままに、教会の奥へと入っていく。

 他に外部の人がいなくなると同時に、シスターからある程度の事情を説明してもらった。


 まず、昨夜から大司教や大司祭といった教会の上層部が一斉にいなくなったそうだ。

 このためミサを行おうにも行えず、という状況らしい。


 うーん、一斉にいなくなるなんて、実にあやしい。


 それに加えて普段教会では聖水を販売しているのだが、この元となる水は魔法で作っているとのこと。

 その水に魔法的な何かを付与して、聖水にしているんだって。

 そしてあたしの水魔法で、水を作ってほしいそうだ。


「でも、教会には水属性の人はたくさんいますよね」


 回復役の人たちは、ほぼ水属性だ。

 わざわざ、あたしに声をかけなくとも十分足りるんじゃないのかな。


「彼らは教会の癒し手ですから、水を作るより治療を主としています」


 ああ、魔力が勿体ないってことか。

 確かに水を作ってたら、魔力がなくなったので回復できません、じゃお仕事できないもんね。

 じゃあ普段はどうやって水を作ってるんだろう?


 そう思ってたら、どうやらいなくなった上層部の人たちが作っていたらしい。

 なるほど。

 だから、野良の水属性の人に声をかけてきたわけか。


 そして案内された先は、教会の奥に近い場所だった。

 奥とは言っても、魔法で閉じられた区画ではなく、その手前にある部屋だった。


「ここが作業室となります」

「確かにお仕事部屋って感じですね」


 室内は簡易的であり、テーブルの上には水を入れる容器が何個も置かれている。

 さらに椅子が数脚あり、それ以外の飾りなど一切なし。

 なんだか監禁部屋だね。


 一週間カンヅメで、ここに籠って仕事してそうな雰囲気だ。

 こわい。


「この部屋は部外者の立ち入り禁止となっていますので、秘密にしていただけませんか?」

「ええ、分かっています。あたしも探索者ですから、依頼主の秘密厳守ですよ!」


 そして、椅子に座って黙々と水を容器に入れていく。

 あまり入れすぎると、今夜のお風呂用にとってある魔力まで使っちゃうから、制限つきだけどね。

 お風呂に入れないと、ブランが怒るんだもん。


(ここの下あたりに気配があるな)


 そのブランから、変な情報がきた。


 え? そうなの?

 地下室ってこと?


 でもここって、魔法で閉じられた区画じゃないんだけど。

 あっ。入口は奥にあるけど、地下室はこの真下あたりまで続いているのか。

 もしかして人工勇者たちを閉じ込めてた場所かな。


「そろそろ魔力切れでしょうか?」

「あ、いえ! まだ大丈夫です!」


 ちょっと手が止まっていた。

 ちゃんとお仕事しなきゃね。

 ちょろちょろ……。


(思ってる以上に広い空間だな。数人いる気配もするぞ)


 数人? それって、いなくなった上層部の人たちかな。

 うーん、どう考えてもあやしい。あやしすぎて、ぜひ調べてください、と言っているようなものだね。


 地下室かぁ。どこが入口なんだろ。

 まあ、怪しいのは一番奥にある部屋だけどさ。


 っと、そろそろ魔力が足りなくなる。


「ふー、これくらいですね」


 えーっと、容器六個分かな。結構頑張った。

 全体で言えば、まだ魔力の半分も使ってないけど、お風呂って地味に大量の水が必要なんだよね。

 これ以上使うと、お風呂のお水がなくなってしまう。


「ありがとうございます。では少ないですが、これで……」


 そうして手渡されたお金は銅貨六枚。


 ……ちょっとまって!

 あたし迷宮に潜って一日頑張って、うまくいけば銅貨六枚なんですけど?

 それをこんな短時間で稼げるの?


 転職しちゃおうかな。


「ではお送りいたしますね」

「お願いします」


 今日は稼ぎなしと思ってたけど、予想外に儲かった。しかも地下室があるという情報まで入手できた。

 これはミサに来た甲斐があったというものだ。


 水を出してただけですけどね。


 そして教会の外まで案内されると、ミサに来ていただろう人たちはすっかり居なくなっていた。

 上層部の人たち、地下室で何やってるんだろう。


「本日は、本当にありがとうございました。助かりました」

「こちらこそ助かりました! また御贔屓に!」


 ほんと助かった。貯金を崩すのは、割と痛いんだよね。


「で、ブラン。地下室だっけ」


 教会から離れてから、小声でブランに話しかける。


(ああ、間違いないだろう)


 それじゃ、今夜はその地下室を見つけなきゃね。

 また明け方までお仕事か。



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