プロローグ
迷宮都市にある教会内部。新月の暗闇の中、一つの影が走り去っていた。
ただその影の足取りには、迷いがない。
まるで事前に調査したかのように、巡回員たちのルートを先回りしていく。
迷宮都市にある教会は巨大だ。
そして内部は当然教会関係者のみが入ることができ、特に奥は大司祭以上のものしか認められていない。
その奥へ入るには、魔法で閉じられたドアの先にあるが、影はあっさりとドアを開いて内部へと侵入していく。
この区画は窓が一切なく、暗闇に支配されていた。ただし、ここには巡回員たちの姿もいない。
しかしながら、影は何度も足を運んだかのごとく、一直線に奥の部屋へたどり着いた。
その影が腰に携えた剣をドアに向けると、自動的に開いた。
にやりと笑みを浮かべた影は室内に入り、分かっていたかのように本だなの一部を押したのち、再び剣を向けた。
するとどうだろう。
本だなが微かな音を立てて動き、その奥から地下への階段が現れた。
隠し階段だ。
人一人が、どうにか入れる程度の広さだが、奥はかなり深そうだ。
足元も暗く、一歩間違えればそのまま滑る危険性が高い。
だが影は迷うことなく階段を降りた……その時だ。
部屋の外から誰かの足音が聞こえた。
「ブラン」
(任せろ)
落ち着いて、本だなを再び動かす。
隠し階段の入口が閉じられた瞬間、部屋のドアが乱暴に開いた。




