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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第二章

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エピローグ


 ここは人類が住む大陸から遠く離れた列島だ。

 この列島は人類が言うところの魔族の国であり、その中心都市に建つ城には魔王と呼ばれる存在がいる。


 その城の一室で、魔王と主人公がお父様と呼んでいるカイン、この二人がミニテレビの魔道具を見ていた。


「はははははっ! 見たかカイン? 人工勇者がたくさん沸いたってよ!」


 迷宮都市に放っている影からの映像を見て、高笑いする魔王。

 それに対するカインは冷静だ。


「有象無象だな。あれで俺たちを止められると思っているらしい」

「まったく、滑稽だな」


 実際、カイン一人で人工勇者を数百人は抑えられるだろう。

 万の数で攻めてこられれば面倒だが、それでも魔王軍の一軍で十分対処可能だ。

 二軍を差し出せば、軽く蹂躙出来るだろう。

 そして魔族の国には二十の軍団が揃っているのだ。

 四天王のうち二人と十ほどの軍団、つまりは半分の戦力を差し向けるだけで、人類を壊滅へと追いやることが可能だ。


 圧倒的な戦力差である。


「あっちの大陸に攻め込んでも、面倒なだけだ。特に統治できるものが少なすぎる」


 そもそも魔族はある意味戦闘民族だ。大半は戦った後のことを考えていない。

 戦争を起こすのは簡単だが、終わった後の処理が一番苦労するのである。


「先代魔王のように、放置すればいいんじゃないか?」

「戦ってストレス発散させるためだけに、戦争を起こすのか? しかも弱い人類相手に?」

「……確かに弱者を甚振る(いたぶる)のは楽しくないな」


 ブランもそうだし、カインもそうだ。

 弱者を甚振るのは楽しくない。

 これがあるからこそ、魔族側から戦争をしかけていないのだ。


 魔王としてもその思いは強い。

 しかしそれ以上に、戦争を起こすには大量の物資が必要となる。

 それらの消費量は、魔族の国を治める魔王からすれば、頭の痛い話だ。

 だからこそ、攻め込むには理由が必要だし、勝てば消費した以上の見返りが必要なのだ。


「まあそんなことはどうでもいいか。それよりお前が育てた人間、あのあとちょっと調べたんだけどさ」

「フィーリアか? 何かあったのか?」

「あの子、うちらのスパイって思ってるらしいぞ」

「……は?」


 どういうことなのか、一瞬カインは惚けてしまった。

 そのようなことをやれと命じたことはない。

 そもそも宙に浮いているミニテレビ、この動画を送っているのは魔王軍のスパイなのだ。

 既にいるのに、わざわざフィーリアに頼む必要性はまったくない。


「なんでもお前に育てられたから、その恩を返すために魔王軍のスパイ行為をやってるそうだ」

「そんなこと頼んだ覚えはないんだがな」

「俺は彼女からの情報を受け取ってないが?」

「俺も聞いてない。というより、フィーリアはこっちへの連絡手段を持っていないぞ?」


 それを聞いた魔王は、つい噴き出した。


「ひでぇ! 完全放置かよ! 俺から連絡を入れてやろうか?」

「いらんだろ。あれはあのまま人間社会に染まればいい」


 カインの言葉に、少し考える魔王。

 迷宮都市には既にスパイを潜ませているし、それで十分情報も得られている。

 ここで人間のスパイを増やしたとしても、特段メリットは無い、とは言えないが非常に薄い。


 だいいち人間は百年もすれば死んでしまうのだ。

 わざわざスパイに仕立てたとしても、百年で終わりではコスパが悪い。


 しかし魔王は、一瞬とあることを思いついた。


「ふーん、かき回すこともできるが?」

「弱い。あっという間に潰されて終わりだ。せっかく育てたのに、それはもったいないだろう」

「そういえば彼女の料理が美味かったっていってたな。それを味わう前に潰されたら、確かにもったいないな」


 確かに以前、機会があれば食べてみたいと思った。

 ここで潰せば、それを味わえなくなる。


「うむ。それにブランがいる。あれはフィーリアと意気投合しているからな。ブランが本気を出せば面倒になる」

「そのブランをやったくせに」

「そのほうが楽しいだろ?」

「確かに! それは否定できないな」


 はははは、と高笑いしながら魔王は、今はまだ様子見でいいか、と考え直した。


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