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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第二章

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第7話


「ブラン、ちょっと聞いてよ」


 バイトが終わり、ベッドに潜りこんで眠くなるまで、ちょっと秘密を入手しようと盗聴器を耳に当ててた時だ。


 盗聴なんていう危ない言葉を出しているけど、バイト先は昼がハンバーガー屋、夜はちょっとした酒場になっているんだよね。

 夜の酒場といえば、ゲームでも情報収集を行う定番中の定番だ。

 ってことで、個室に盗聴器の魔道具を仕掛けているのさ。


 なおこの魔道具も、お父様のマジックバッグに入っていたものだけど、かなり年代物であちこち壊れているんだよね。

 本当はもっと色々な機能があるようだけど、盗聴器以外の機能は使えない状態だ。

 ぽんこつ魔道具だけど、一応音は拾えるから、夜にそれを聞いてたりする。

 たまにベッドで寝ちゃうし、バッテリー切れになってることもあるけど、それは御愛嬌だ。


(なんだ?)


「バイト先の盗聴なんだけどさ……」


 で、それをさっき聞いていると偶然、パンチョさんが愚痴を吐き出していたところだったんだよね。

 まあパンチョさんも大クランの幹部だし、色々とあるんだろう。

 そう思って聞くのをやめようかな、と思ったら、ちょっとやばいことを言っていたのだ。


「でね、どうやら教会と探索者協会が、あたしのことを指名手配するそうよ」


 探索者協会から各クランに指名手配の通達があったらしい。

 そこまではいい。パンチョさんも愚痴なんか吐かないだろう。


 吐いた内容が、どうやら国も教会と同じく、人工勇者製造アーティファクトを調査するようだ。

 しかも犯罪者を使って。

 教会は一般人を使ってた。これはダメだ。だから国は犯罪者を使えばいいって判断したようだ。


(国が本気になったか。面倒だな)


「まあでも、火属性の若い女か、魔道具で声を変えている男の可能性もある、って内容は勝ちだね」


 火属性という時点で、あたしは候補から外れる。なんたって水属性ですから。

 これ見よがしに、ブランの火を使っておいて正解だったね。


(甘くはみるなよ。国は大きい。関わるものも多い。どんな小さな綻びから来るかもしれぬ)


「組織力ってやつかー」


 日本の警察も組織力が高かったはずだ。

 確か検挙率、つまり事件が起きてから、その犯人を捕まえた割合が世界でも上位とかなんとか。

  

 油断するとダメだってことか。


 でもさ、よくよく考えてみれば、国も教会もあたしが盗んだ奴を欲しがっている。

 じゃあさ、いっそのこと、壊しちゃえばきれいさっぱり諦めてくれるんじゃないかな?

 残骸を探索者協会の前とかに捨てておけば、見つかるし。

 それでも、恨みで壊したやつを絶対見つけろ、って言われるかもしれないけどね。

 それは仕方ない。既に盗んじゃったし、今さらの話だ。


 となると、こうなればとことんやってしまったほうが、あたし的には気持ちがいいかな。


 つまり動力源も盗んで壊すってことだ。

 マジックバッグに入れているから大丈夫だとは思うけど、万が一、動力源を元に何らかの手段で位置が分かるかもしれない。

 それに動力源が残ったままだと、あの人工勇者たちもそのままってことになる。

 別に、あたしは正義の味方でもないから放置でもいいんだけど、人道的にもよくないよね。


「ということでブラン。動力源も盗もうか」


(どういう流れで、そのような結論に至ったのだ?)


「外側と動力源、セットで盗んで壊して探索者協会の前に捨てるの。これで諦めてくれるよね」


(より一層、お前が追いかけられる未来しか浮かばんな)


「今だって追いかけられるんだから、一緒だよ」


(まあよいのではないか? せっかくの魔道具を壊すのは、もったいないとは思うがな)


 よし、ブランも同意してくれたし、また教会に忍び込んで動力源探しをやるか。

 あー、眠い。

 ベッドにもぐりこんだまま、話す内容じゃないや。


 それではおやすみなさい。



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