第7話
「ブラン、ちょっと聞いてよ」
バイトが終わり、ベッドに潜りこんで眠くなるまで、ちょっと秘密を入手しようと盗聴器を耳に当ててた時だ。
盗聴なんていう危ない言葉を出しているけど、バイト先は昼がハンバーガー屋、夜はちょっとした酒場になっているんだよね。
夜の酒場といえば、ゲームでも情報収集を行う定番中の定番だ。
ってことで、個室に盗聴器の魔道具を仕掛けているのさ。
なおこの魔道具も、お父様のマジックバッグに入っていたものだけど、かなり年代物であちこち壊れているんだよね。
本当はもっと色々な機能があるようだけど、盗聴器以外の機能は使えない状態だ。
ぽんこつ魔道具だけど、一応音は拾えるから、夜にそれを聞いてたりする。
たまにベッドで寝ちゃうし、バッテリー切れになってることもあるけど、それは御愛嬌だ。
(なんだ?)
「バイト先の盗聴なんだけどさ……」
で、それをさっき聞いていると偶然、パンチョさんが愚痴を吐き出していたところだったんだよね。
まあパンチョさんも大クランの幹部だし、色々とあるんだろう。
そう思って聞くのをやめようかな、と思ったら、ちょっとやばいことを言っていたのだ。
「でね、どうやら教会と探索者協会が、あたしのことを指名手配するそうよ」
探索者協会から各クランに指名手配の通達があったらしい。
そこまではいい。パンチョさんも愚痴なんか吐かないだろう。
吐いた内容が、どうやら国も教会と同じく、人工勇者製造アーティファクトを調査するようだ。
しかも犯罪者を使って。
教会は一般人を使ってた。これはダメだ。だから国は犯罪者を使えばいいって判断したようだ。
(国が本気になったか。面倒だな)
「まあでも、火属性の若い女か、魔道具で声を変えている男の可能性もある、って内容は勝ちだね」
火属性という時点で、あたしは候補から外れる。なんたって水属性ですから。
これ見よがしに、ブランの火を使っておいて正解だったね。
(甘くはみるなよ。国は大きい。関わるものも多い。どんな小さな綻びから来るかもしれぬ)
「組織力ってやつかー」
日本の警察も組織力が高かったはずだ。
確か検挙率、つまり事件が起きてから、その犯人を捕まえた割合が世界でも上位とかなんとか。
油断するとダメだってことか。
でもさ、よくよく考えてみれば、国も教会もあたしが盗んだ奴を欲しがっている。
じゃあさ、いっそのこと、壊しちゃえばきれいさっぱり諦めてくれるんじゃないかな?
残骸を探索者協会の前とかに捨てておけば、見つかるし。
それでも、恨みで壊したやつを絶対見つけろ、って言われるかもしれないけどね。
それは仕方ない。既に盗んじゃったし、今さらの話だ。
となると、こうなればとことんやってしまったほうが、あたし的には気持ちがいいかな。
つまり動力源も盗んで壊すってことだ。
マジックバッグに入れているから大丈夫だとは思うけど、万が一、動力源を元に何らかの手段で位置が分かるかもしれない。
それに動力源が残ったままだと、あの人工勇者たちもそのままってことになる。
別に、あたしは正義の味方でもないから放置でもいいんだけど、人道的にもよくないよね。
「ということでブラン。動力源も盗もうか」
(どういう流れで、そのような結論に至ったのだ?)
「外側と動力源、セットで盗んで壊して探索者協会の前に捨てるの。これで諦めてくれるよね」
(より一層、お前が追いかけられる未来しか浮かばんな)
「今だって追いかけられるんだから、一緒だよ」
(まあよいのではないか? せっかくの魔道具を壊すのは、もったいないとは思うがな)
よし、ブランも同意してくれたし、また教会に忍び込んで動力源探しをやるか。
あー、眠い。
ベッドにもぐりこんだまま、話す内容じゃないや。
それではおやすみなさい。




