第三話
「ご来店ありがとうございます! バーガージャックへようこそ!」
迷宮に潜って鉱石を掘るより、バイトのほうが迷惑な人と会わないってどういうことなの?
接客業だから、普通は後者のほうが多そうな気がするんだけど。
などと思ってしまうくらい、ここ最近は迷宮で面倒くさいことが多かった。
ここのバイトだけで暮らしていきたいわー。
でも実際は出来ない。あたしは探索者として都市に登録したので、迷宮に潜らないといけない。
どうやれば都市に申請した内容を、探索者からバイトに変更できるんだろう?
そう真面目に考えるほど、バイトが性にあってる気がする。
「探索者セットですね、かしこまりました!」
注文された食べ物を席に運んでいくと、どこかで見たことのある人が座っていた。
……誰だっけ?
「フィーリアか、ここでバイトをしていたのか」
「えっと……」
「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺は第五級探索者のサモエルだ」
……あっ、思い出した!
以前ごろつきに絡まれたとき、助けてくれた巡回員だ。
「その節はお世話になりました!」
「あれが仕事だからな」
そう言いながら、運んできた探索者セットを受け取る。
周りを見ると、そろそろピークタイムも終わりの時間だ。
お礼を言うくらいの時間はあるかな?
「そういえばフィーリア、迷宮で自称勇者と会っただろ?」
ものすごいことを突っ込まれた。
どこで見られてた!?
「えっ? そ、そそそそんなことはっ」
「ごまかさなくていいぞ。八階層で突如消えた若い女、俺が知っている限り出来そうなのはフィーリアくらいだ」
なんでそれを知ってるの!?
世間は狭いのか、それともこの人が地獄耳なのか、どっち?
「昨日、その自称勇者たちを取り調べしたからな。全く、何で俺が……レオナードの奴め」
あー、そういえばレオナードが、あの人たちを連行していってたよね。
取り調べをやったのが、サモエルさんなのか。
世の中狭い……と思ってたけど、サモエルさんとレオナードって知り合いなのかな?
「あのレオナードさんと、お知り合いなんですか?」
「あいつが低ランクの頃、面倒を見たのが俺だからな。あいつも勇者信者すぎて、ところかまわず……。ああ、今思えば自称勇者たちと変わらなかったな」
サモエルさんは三十代くらいで、レオナードは二十代真ん中くらいだ。
十年前くらいだとすると、確かに面倒を見ていてもおかしくはないか。
しかしレオナードって、昔から変な正義感を持っていたんだね。
うわー、絡んできた人たちとシンパシー感じてそう。
その後、ちょっとだけサモエルさんと話をして、色々と有意義なことを聞いた。
特に自称勇者が色々と教会の悪口ばかり言ってたらしい。
さすがに内容までは詳しく話してくれなかったけど、たぶん教会の人工勇者の件だろうね。
情報を得るのって、やっぱり人付き合い必要だ。
あたしって自称だけど、スパイのお仕事ちゃんとやってない?
===
(ふむ、人工勇者と教会の対立か)
「うん。たぶんそんな感じになってそう」
バイトの休憩時間に、ブランと情報を共有した。
(我らには関係ないことだな)
「そうなんだよね。人工勇者はこれ以上増えないし、ここでわざわざ電池を盗まなくてもいいかなって」
もぐもぐ。
ここのバイトはお昼ご飯が無料なので、助かる。
それにしても、このハンバーガーは照り焼きみたいな味なんだけど、何のお肉を使ってるんだろ。
(既に人工勇者になったものは放置でいいのか?)
「レオナードクラスの強い人って、少なくともこの町にはいないと思う。いたら絶対何らか騒ぎになってるはずだもん。それならお父様も大丈夫だろうし、放置でもいいかなぁと」
力を使えば十年寿命が縮むんだけど、裏を返せば使わなければいいだけだし。
人道的には問題あるとは思うんだけどさ。
しかし教会も馬鹿なことやってるよね。
レオナードですら蹴散らせる程度の人工勇者を作っても、意味ないんじゃないかな。
(ふむ、まあそれでもいいか。ただ我としては、動力源も揃えておきたいが……)
「なんで?」
(魔道具が動かないではないか。きちんと動く状態で保管しないと、落ち着かぬ)
あ、単なるこだわりか。
未完成品を持っていると、落ち着かないってことね。
それはどうでもいいや。
しかし……勇者って何だろう。
まず勇者は転生者だ。これはお父様が言ってたので確定だと思う。
でも何のために勇者なんてものが生まれたんだろうね。
(神がバランスを取るために転生させたと、我は考える)
「バランス?」
(一千年前、先代魔王が存命の時は、魔族が圧倒的に強かったからな。それでは不公平だろう? だから神が人類側にも強者を生みだしたと考えている)
「へぇ……神様っているの?」
(いるぞ。我も見たことはないがな)
「いるの!? 見たことがないのに、何でわかるの?」
(はるか上空に超常的な存在はいる。それは確実だ。そしてそれを神と呼んでも差し支えはなかろう)
ブランの考えだと、あまりに魔族が強すぎて神様的につまらないから、人類側にも強者を転生させたってことか。
バランスね……それを考えると、神様って割と面白がってそうだよね。
もしかして、シミュレーションゲーム気分で、色々と調整していたりして。
「ふーん。勇者以降に生まれた五人の転生者も同じなのかな」
(同じだな。蒸気王がいい例だろう。蒸気を利用した道具を作ることで、各段に流通が早くなった。しかし魔族にはそのような物は不要だからな)
「いらないの?」
(転移魔法を使えば済むだろう? わざわざ物を運ぶ道具を作る必要がない)
……おおう、転移魔法なんてものがあるのね。
確かに蒸気機関車で物を運ぶより、早いわ。
それと蒸気王以外にも、特に食文化が凄まじく発展したらしい。
あたしが今食べているハンバーガーだって、転生者が普及させたものだ。
これには、あたしも感謝している。
ハンバーガー美味しいです。
しかし神様が転生させた……ねぇ。
あたし、転生者だけど会ってないんですが。
だから、あたしには神様からの使命はないので、お父様の手となり足となりスパイ活動をしても問題はない。
結論、神様よりお父様!




