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魔王軍のスパイ(自称)、迷宮都市で冒険者をやってます  作者: にしはじめ
第二章

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第三話


「ご来店ありがとうございます! バーガージャックへようこそ!」


 迷宮に潜って鉱石を掘るより、バイトのほうが迷惑な人と会わないってどういうことなの?

 接客業だから、普通は後者のほうが多そうな気がするんだけど。


 などと思ってしまうくらい、ここ最近は迷宮で面倒くさいことが多かった。

 ここのバイトだけで暮らしていきたいわー。

 でも実際は出来ない。あたしは探索者として都市に登録したので、迷宮に潜らないといけない。


 どうやれば都市に申請した内容を、探索者からバイトに変更できるんだろう?


 そう真面目に考えるほど、バイトが性にあってる気がする。


「探索者セットですね、かしこまりました!」


 注文された食べ物を席に運んでいくと、どこかで見たことのある人が座っていた。

 ……誰だっけ?


「フィーリアか、ここでバイトをしていたのか」

「えっと……」

「ああ、そういえば名乗ってなかったな。俺は第五級探索者のサモエルだ」


 ……あっ、思い出した!

 以前ごろつきに絡まれたとき、助けてくれた巡回員だ。


「その節はお世話になりました!」

「あれが仕事だからな」


 そう言いながら、運んできた探索者セットを受け取る。

 周りを見ると、そろそろピークタイムも終わりの時間だ。

 お礼を言うくらいの時間はあるかな?


「そういえばフィーリア、迷宮で自称勇者と会っただろ?」


 ものすごいことを突っ込まれた。

 どこで見られてた!?


「えっ? そ、そそそそんなことはっ」

「ごまかさなくていいぞ。八階層で突如消えた若い女、俺が知っている限り出来そうなのはフィーリアくらいだ」


 なんでそれを知ってるの!?

 世間は狭いのか、それともこの人が地獄耳なのか、どっち?


「昨日、その自称勇者たちを取り調べしたからな。全く、何で俺が……レオナードの奴め」


 あー、そういえばレオナードが、あの人たちを連行していってたよね。

 取り調べをやったのが、サモエルさんなのか。

 世の中狭い……と思ってたけど、サモエルさんとレオナードって知り合いなのかな?


「あのレオナードさんと、お知り合いなんですか?」

「あいつが低ランクの頃、面倒を見たのが俺だからな。あいつも勇者信者すぎて、ところかまわず……。ああ、今思えば自称勇者たちと変わらなかったな」


 サモエルさんは三十代くらいで、レオナードは二十代真ん中くらいだ。

 十年前くらいだとすると、確かに面倒を見ていてもおかしくはないか。


 しかしレオナードって、昔から変な正義感を持っていたんだね。

 うわー、絡んできた人たちとシンパシー感じてそう。


 その後、ちょっとだけサモエルさんと話をして、色々と有意義なことを聞いた。

 特に自称勇者が色々と教会の悪口ばかり言ってたらしい。

 さすがに内容までは詳しく話してくれなかったけど、たぶん教会の人工勇者の件だろうね。


 情報を得るのって、やっぱり人付き合い必要だ。

 あたしって自称だけど、スパイのお仕事ちゃんとやってない?


===


(ふむ、人工勇者と教会の対立か)


「うん。たぶんそんな感じになってそう」


 バイトの休憩時間に、ブランと情報を共有した。


(我らには関係ないことだな)


「そうなんだよね。人工勇者はこれ以上増えないし、ここでわざわざ電池を盗まなくてもいいかなって」


 もぐもぐ。

 ここのバイトはお昼ご飯が無料なので、助かる。

 それにしても、このハンバーガーは照り焼きみたいな味なんだけど、何のお肉を使ってるんだろ。


(既に人工勇者になったものは放置でいいのか?)


「レオナードクラスの強い人って、少なくともこの町にはいないと思う。いたら絶対何らか騒ぎになってるはずだもん。それならお父様も大丈夫だろうし、放置でもいいかなぁと」


 力を使えば十年寿命が縮むんだけど、裏を返せば使わなければいいだけだし。

 人道的には問題あるとは思うんだけどさ。


 しかし教会も馬鹿なことやってるよね。

 レオナードですら蹴散らせる程度の人工勇者を作っても、意味ないんじゃないかな。


(ふむ、まあそれでもいいか。ただ我としては、動力源も揃えておきたいが……)


「なんで?」


(魔道具が動かないではないか。きちんと動く状態で保管しないと、落ち着かぬ)


 あ、単なるこだわりか。

 未完成品を持っていると、落ち着かないってことね。

 それはどうでもいいや。



 しかし……勇者って何だろう。

 まず勇者は転生者だ。これはお父様が言ってたので確定だと思う。

 でも何のために勇者なんてものが生まれたんだろうね。


(神がバランスを取るために転生させたと、我は考える)


「バランス?」


(一千年前、先代魔王が存命の時は、魔族が圧倒的に強かったからな。それでは不公平だろう? だから神が人類側にも強者を生みだしたと考えている)


「へぇ……神様っているの?」


(いるぞ。我も見たことはないがな)


「いるの!? 見たことがないのに、何でわかるの?」


(はるか上空に超常的な存在はいる。それは確実だ。そしてそれを神と呼んでも差し支えはなかろう)


 ブランの考えだと、あまりに魔族が強すぎて神様的につまらないから、人類側にも強者を転生させたってことか。

 バランスね……それを考えると、神様って割と面白がってそうだよね。

 もしかして、シミュレーションゲーム気分で、色々と調整していたりして。


「ふーん。勇者以降に生まれた五人の転生者も同じなのかな」


(同じだな。蒸気王がいい例だろう。蒸気を利用した道具を作ることで、各段に流通が早くなった。しかし魔族にはそのような物は不要だからな)


「いらないの?」


(転移魔法を使えば済むだろう? わざわざ物を運ぶ道具を作る必要がない)


 ……おおう、転移魔法なんてものがあるのね。

 確かに蒸気機関車で物を運ぶより、早いわ。


 それと蒸気王以外にも、特に食文化が凄まじく発展したらしい。

 あたしが今食べているハンバーガーだって、転生者が普及させたものだ。

 これには、あたしも感謝している。

 ハンバーガー美味しいです。


 しかし神様が転生させた……ねぇ。

 あたし、転生者だけど会ってないんですが。

 だから、あたしには神様からの使命はないので、お父様の手となり足となりスパイ活動をしても問題はない。


 結論、神様よりお父様!






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