【25話】私の居場所
「活躍は聞いたよ! 僕のために戻ってきてくれるって、そう信じていたよ!」
「…………はい?」
突如として現れたニコライ様は、まったく見当違いなことを言ってきた。
どこまでいっても自分本位な人ね。
なにも見えていないし、分かっていない。救いようがないわ。
もはや怒りすら湧いてこない私は、深くため息を吐く。
「私が救援依頼を受けたのは、あくまで民を救うため。ニコライ様のためではありません。勝手に勘違いされては迷惑です」
「……ハハッ。まさかお前がジョークを言うようになるとはね。でもあんまり面白くない――」
「貴様も懲りない男だな」
私をかばうようにして、アルシウス様が一歩前に出た。
後ろからだから見えないけど、たぶんニコライ様を睨みつけているんだと思う。
尻もちをついたニコライ様が半端なく怯えているのが、その証拠だ。
いきなり名前を呼ばれたときは驚いたけど、無事に片付いたようね。
それにしても……おかしいわ。
国王様はどうして、なにも言わないのかしら?
ニコライ様の行為は失礼極まりないもの。
普通であれば私たちに対し謝罪をするなり、ニコライ様を叱りつけたりする場面だろう。
それなのに国王様は苦い顔をしているだけ。
ずっと同じ表情で、私を見ている。
息子に甘いっていうのもあるんでしょうけど、きっとそれだけではないわね。
たぶん国王様の心の内は、ニコライ様と同じなんだわ。
私を国に戻したい。
国王様もそう考えている。だからこそニコライ様の行為に対し、なにも言わなかった。
私を特別功労者に引っ立てたのも、もしかすると直接会って交渉したかったからなのかもしれない。
それならここで、ハッキリと私の意思を言って差し上げましょう。
「お聞きください国王様。私は国外追放処分を受けた身。この国に戻るつもりなど、微塵もございません。もしそれを狙っているのでしたら、早々に諦めてください」
「なんだと……!」
国王様の表情が険しいものへとなっていく。
どうやら図星だったらしい。
「地位、財産、名誉――望むものをなんでも与える。そう言ってもか?」
「はい。私が欲しいものは一つだけ。そしてそれは、既に手に入っていますから」
いつまでも笑っていられる、温かな場所。
欲しいものを、私は既に手に入れている。
そしてそれは、この国ではない。
「私の居場所は、ひとつだけです」
アルシウス様を見つめると、振り返った彼は私の手を取ってくれた。
固く手を繋ぎ合ったまま、私たちは部屋から出ていく。
いつまでも笑っていられる、温かな場所。
そこへ帰るために。
******
フロスティア王国へ戻ると、すぐに結婚式を挙げることになった。
場所は国で一番の大きさを誇る、ドーム型のホール。
陛下がそれはもう大張り切りで、場所をおさえてくれたらしい。
「まさかこんなにも立派な場所だとは……なんだか緊張してきちゃいました」
「怖がることはない、大丈夫だ。俺がいる」
会場入り口の大きな両扉の前で、私はアルシウス様と手を繋いでいた。
大きくて温かな手は頼りがいがあり、私の緊張をほぐしてくれる。
こうしているだけで、ものすごく安心する。彼が隣にいてくれるのなら、なんだって怖くない。
「行こうか」
「はい」
多くの拍手が鳴り響く会場内を、私はアルシウス様と歩いていく。
胸いっぱいに広がるのは、大きな喜び。
私は今、最高に幸せだ。
これからの人生も、こんな幸せな気持ちで歩いていきたい。
世界で一番大切で大好きなアルシウス様と、ずっと一緒に。
これにて完結です!
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それではまた、次回作でお会いしましょう!




