表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄明かりの書庫番  作者: 朝陽 澄
64/64

第64話 王宮に戻り、真の災厄への準備

夜明け前の王宮は静まり返り、長い廊下にわずかに灯る松明の光が揺れていた。リンは北方からの報告書を抱え、重厚な木の扉を押し開く。


「……戻ってきたわ」


執務室に入ると、机の上には整理された古文書と薬草の標本が並ぶ。リリィがすでに待機しており、リンの帰還を静かに迎えた。


「北方の状況、聞かせてください」


リンは報告書を広げ、土壌の異常、霧の揺らぎ、微細な鉱物の反応、そしてあの青白く光る岩塊の兆候を説明する。


「真の災厄……序章ではないことは確実ね」


リリィは頷き、机に置かれた薬草標本を指差す。


「ここまで現場でのデータが揃ったら、次は知識を実践に変える段階です」


リンは微かに笑みを浮かべる。しかし、その目は真剣そのものだ。


「まずは、災厄の性質を分析し、封じ込めの方法を考えましょう」


机に座り、北方で集めた情報を整理する。土壌の赤黒い染まり、微細な振動、霧の反応、鉱物の発光……すべて古文書の記述と照らし合わせる。


「……古文書によれば、真の災厄は大地の根幹から生まれ、星の力と結びつく……つまり、局所的な封じ込みだけでは不十分」


リンはペンを握り、図を描きながら封じ込めの範囲や順序を計算する。リリィは傍らで、薬草や煙の調整方法を提案し、リンはそれを即座に組み込む。


「知識と行動の融合……これが鍵になるわ」


護衛が静かに入室する。北方での観察から判明した危険箇所を報告し、必要な人員配置の確認を行う。リンは全員に指示を出し、具体的な準備を進める。


「まずは北方領地の安全確保。次に、微細な異常の監視。最後に、封じ込みの実行」


リンの声には確固たる決意が宿る。王宮の古文書室は静かだが、空気は張り詰め、これから訪れる戦いへの緊張が満ちている。


「序章を乗り越えた今、次は真の災厄……でも、私は準備ができている」


リンは窓の外に広がる庭園を見つめる。薄明かりの中、風に揺れる木々は平穏を装っているが、彼女の胸の中には警戒心と使命感が同時に灯っていた。


北方の大地で得た観察と、王宮での知識が一つに結びつく。真の災厄に立ち向かう、初めての準備が静かに、しかし着実に進んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ