工場襲撃
依頼名 敵対勢力の工場襲撃
依頼内容 重要物資の捜索、奪取。妨害の排除。設備の破壊。時間内の撤退。
敵詳細 警備部隊(歩兵、アース、タレット)
報酬 500,000cr
依頼文 遠征部隊が敵対コロニーの工場を発見した。ちょっと行ってぶっ壊してこい。いいもんあったら持って帰っていいぞ。ただし時間をかけすぎないこと。だらだらやってると応援が来て包囲されるからな。
参加者数 戦闘員4名+オペレーター1名
参加資格 なし
依頼を受けて、画面は装甲車内へ。メンバーは俺とナメクジ、ガンナー、そしてサムライのリーダーの四名。俺とサムライはいつもの近接装備で、ナメクジくんは今日は普通の射撃型装備、ガンナーは両腕をガトリングに換装した武器腕タンク足。戦車の車体に、砲塔代わりのアースの上半身。頭がなければただの自走対空砲にしか見えない。こういうのを見ると人型兵器とは? と思わないでもない。まあ、ロマンは人それぞれなので口出しはしないが。
そういうことで……愛機を載せて運んでいる装甲車が派手に音を立て、大きく揺れる。検問所のフェンスに突っ込んで強行突破したのだ。当然愛機に乗り込んでいる自分も揺れる。そしてドリフトして、車体が180度回転、遠心力で機体を固定するベルトが軋み悲鳴を上げて……停車。ハッチが勢いよく開く。機体のセットアップは済んでいるので、すぐに降車する。
目の前には長城のごとく伸びる巨大工場、振り返れば強引に突破された検問所、そこから延びる12本の轍。あちこちからけたたましい警報が鳴り響き、警備の歩兵が工場入り口に逃げ込んでいく。
それを見送ると、全員の降車が完了した。
「ガンナー! やっちまえ!」
「ひゃっはー!」
ナメクジ君の命令でガンナーの両腕、その銃身が回転し……直後、怒涛の勢いで砲弾を吐き出す。蛇口から放たれる水のように、曳光弾が線を描き、その数十倍の徹甲弾が工場の入り口を薙ぎ払い、工場の壁を粉砕、派手に破壊の砂煙を舞い上げながら、その向こう側に隠れている敵兵士をコンクリート交じりのミンチに変えていく。
ちなみにグロテスク描写は設定でON/OFF切り替えられる。苦手な人への配慮が行き届いて、大変すばらしい運営だ。
「あぁ……やっぱりガトリングは最高だぁ」
これで序盤終了かと思いきや、砂煙の中でいくつも発砲炎が光ったのでそいつは中断し、ガンナーの後ろに隠れる。直後に大量のロケット弾が飛んできて、その中から何発もの弾頭がガンナーの機体に直撃して盛大な爆発を起こす。タンクは頑丈だから多少ぶちこまれても耐えられるか……?
「アバーーー!」
味方機撃墜の表示……ダメだった。当たり所が悪かったというわけではない。タンクが脆かったわけでもない。相手の火力が上回っていただけだ。ロケット弾を1ダースもくらって落ちないとか、ボス敵でも許されん耐久力だからな。
それはともかく、身を挺してかばってくれたガンナーの犠牲を無駄にしないために、俺は突撃して敵をぶっ殺さなければならない。
物言わぬ残骸となったガンナーの陰から飛び出し、ブーストで突っ込もうとしたら……もう先にサムライが、細身のブレード二本を振り上げた機体が空から砂煙の中へ落下していた。着地の勢いを乗せた振り下ろしで一機を頭から断ち切って撃破。着地際にさらにもう一度ブーストを使い、衝撃をキャンセルし同時に足のローラーを高速回転、滑るように動きつつ機体を駒のように一回転させて、停止……煙の中で剣閃が煌めいて、晴れた後には、胴体深い切込みを入れられ地面に倒れ伏す敵機が3。頭から三枚おろしにされた機体が1。立っているのは、かっこいいポーズで停止したサムライ一機のみ。
まさに無双。以前よりもさらに腕を上げたようで、まったく敵として恐ろしい限りだ。
活躍の場を奪われたのは少し残念だが、仕事は始まったばかりだ。焦ることはない。残念と言えばガンナー君、再序盤で死んでしまうとはついてない。リスポーンして名誉回復なるだろうか。
この後ガンナーがリスポーンし、合流するのを待ってから、工場へ侵入した。もちろん一番装甲の厚いガンナーの機体を先頭に。戦術としては、不意打ちを重装甲で受け止めて、反撃に重火器をたらふくぶちこんで頭を押さえて、その隙に近接二機が突撃して敵陣を食い荒らす。ナメクジくんはタンクの護衛。そんな感じである。
工場内は巨大な外見に見合って通路も広く、車がすれ違えそうなほど。ところどころ、通路の脇に設備、資材があって死角が作られていて、いかにも敵が待ち伏せしていそうな感じがする。ので、ガンナーが軽めの機銃掃射であらかじめ吹っ飛ばしてから進む。先の撃墜と同じ過ちを繰り返さないためとはいえ、一々曲がり角、物陰ごとにソ連式で吹っ飛ばしていたらいくら弾があっても足りなさそうな気がする。あと弾薬費もやばそうだ。
「そういうめんどくさいことを考えるのはロマンじゃない」
「足りなくなったら盾にしよう」
「そうだな」
ナメクジくんの提案に頷いて先へ進む。実際、何度か物陰にタレットが潜んでいたりしたので、警戒行動は無駄ではなかった。無駄ではなかったのだが、弾丸の消費に見合った成果かどうかは疑問がある。
まあ、報酬は均等割りで支払われ、弾薬・修理費は各々に割り当てられた報酬の中から差し引かれるのだ。ガンナーの報酬がマイナスになっても、俺は困らない。
「……次の角から音響反応。アースだな、よし、戦車突撃!」
「やってやるぜぇ!」
そう叫んで履帯と回転させ、上半身だけを半回転。ガトリングを乱射して、壁に無数の弾痕を刻みながら曲がり角へ突っ込んでいくガンナー。
……直後に敵機の撃破報告が上がる。
最初こそ事故ったが、やはりガトリング二本持ちの制圧力は想像以上だ。広いとはいえ、遮蔽物のない通路では軽く薙ぎ払うだけで敵が鉄くずに変わってしまう。おかげで考えていた戦術は未だに出番がない。
弾の持つ限りはこの状況が続くだろう。
「やってやったぜぇ!」
「ところで残弾は?」
「……三割切りました」
「まだ先がある。弾は温存して、敵の処理は近接二人に任せよう」
……思ったより早くその時がやってきたな。まあいい、出番があるのはいいことだ。
「パイルバンカーは弾数が少ないんだろう。私が出よう」
「あんたは最初に派手に暴れてただろ。俺はまだ一機も倒してないんだぞ、手柄を譲ってくれないと悲しい」
自慢のブレードを振るいたいのはわかるが、俺だってパイルで敵を貫きたい。同じロマン派ならわかってくれるだろう。
「だが断る。早い者勝ちだ」
「残念だ。わかってもらえないか。じゃあもう戦争しかねえな」
手柄を分けてくれないというのなら、殺してでも奪い取る。リスポーン待機時間の間にたっぷり稼いでくれる。
不意打ちをかけるのは失礼なので、数歩距離を取りパイルの先端を向けて戦意を示す。相手もこちらを向いて、二本のブレードを上下に構える。
大気中にロマンが満ちてゆく……!
「ドーモ、アヌスレイヤー=サン。サムライ1号です」
「ドーモ、サムライ1号=サン。アヌスレイヤーです」
アイサツが終わったコンマ1秒後……!
「お前ら喧嘩するくらいならソロでやれ」
ナメクジ君に諫められて、闘争の空気がロマンと共に霧散する。そうだね。一応協力プレイだからね。呼び出しておいて手柄の取り合いで喧嘩するのは、サムライ君にも失礼だし。いやむしろ本望か? どっちだ。
「喧嘩じゃない。互いに分かり合っているからこそ、ぶつかることもあるのさ」
「その通り。だが今日はやめておこう、怒られちまった」
「仲良くやれよ、仲良くな。それより早くいかないとガンナーが全部やっちまうぞ?」
サムライに意識を向けている間に、ガンナーは次の通路を驀進していた。おお、なんということだ。
「俺はまだ一匹も敵をぶっ殺してないのに一人だけキルカウントを稼ぎやがって、なんてやつだ! 見損なったぞガンナー! 俺にもやらせろ!」
「早い者勝ちだ!」
「一人で先走るな。何かあったらカバーできないぞ」
「屋内程度なら、この装甲で耐えきれる! 今度こそ耐えて見せる!」
そんなこと言って。さっき殺されたばっかりだろう。もし戦車でも出てきたらどうするんだか……どうにもならんか。
「あ、やべ戦」
ずどぉん。通路の向こう側で派手な砲声と爆発が起きて、ガンナーの被撃墜報告がポップ……がらんがらんと黒こげになった機体の残骸が転がってきた。はたしてガンナーは死の間際に何を伝えようとしていたのか。戦、までは聞こえたが、まさか地上に戦闘機はあるまい…………戦術核? そんなもんあってたまるか。うむ。とぼけるのはやめよう、ツッコミも居ないし、ボケてる場合じゃない。
「たぶん戦車だろう。榴弾をぶちこまれたな」
「どうやって潰そうか。ロケランでいけるか?」
「全弾命中すればいけるんじゃないか? パイルで天井ぶちぬいてもいいけど」
「戦車を刻んでみたいなぁ」
誰もガンナーの心配をしない。雑な扱いを受けてかわいそうに。一人で突っ込んで一人で死ぬからそんなことになるんだぞ、反省しなさい。
それはともかく、敵の(たぶん)戦車の音響反応は動きがない。さては置きエイムするつもりだな。そいつは実際有効な戦法だ。施設の守備が仕事なのに、わざわざ有利な状況から動く必要はないもんな。なんで戦車が外じゃなくて中に居るんだって疑問はあるけど。
……まあ屋外に居たら強すぎて勝ち目がないとかそういう運営の心遣いなのかもしれない。
「で、誰から行く?」
「順番に突っ込んだら順番にやられるだけだろうな。三人一度に行こう。もちろん固まってたら榴弾で吹っ飛ばされるから、バラけてな」
「もう一ひねり。高度を三段に分けて仕掛けよう。私とアヌスレイヤーはブースター持ちだからな。私が中段、アヌスレイヤーが上段から。それでいいか?」
「採用。それでいこう」
じゃあ準備しよう、とブーストジャンプで飛び上がり、壁に向かってパイル。壁にしっかりと杭を突き刺して張り付いた。あとはここから水平ブーストで戦車が見えるまで飛び出して、壁を蹴ってもう何度かブーストで高い位置から突っ込む。サムライは地上から飛び出して、飛び上がって仕掛ける。ナメクジは地面から突っ込む。
上中下の三段攻撃、戦車砲なんて秒間何発も撃てるものじゃなし。一発撃ったらしばらくは隙だらけだ。生身で突っ込めと言われたら主砲を使うまでもなく車載機銃でミンチになるんだが、アースは対人用の機関銃程度なら耐えられる。戦車に比べれば薄いが、装甲は飾りではないのだ。
とはいえ、最初の一発は必ず撃たれる。そいつで誰かが犠牲になるだろうが、本当に死ぬわけじゃなし。クリアできればよいのだ。
「行くぞー!」
三人同時に飛び出して、敵を視界内に収めて、壁を蹴る。ブーストを使う。
ああ、間違いなく戦車だ。一両だけだが、その堂々たる姿、ご立派な主砲は明らかな強者のオーラを発している。
そして、発砲。眼下で巨大な爆発、ナメクジの機体が消し飛び、破片で機体が傷ついて爆風で姿勢制御が乱れる。が、壁を蹴って持ち直し、再度ブースト。突入角度、姿勢、速度すべてよし、対戦車ミサイルのように落下し、砲塔の天板に着地。砲身の付け根にパイルバンカーを叩き込み風穴を開けてやった。ついでに機銃二つもブレードで切り飛ばす。
残念ながら誘爆はしなかったが、有効な武器を破壊できれば十分。
「これでもう主砲は使えないな」
「こっちも足回りを切り刻んでやった。もう動けない」
履帯が切断されて、主砲を潰されて。こうなったら陸の王者も鉄の棺桶だ。
「解体の時間だな!」
「そうだな!」
無駄な殺生はやめておこうね! と止める人間も居ない。倫理観なんてくそくらえな世界観のゲームだし、むしろ抵抗できない相手をぶっ殺してこそ。ということで、二人で頑張って分厚い装甲を切り刻み、戦車をいくつものパーツに分解。乗員を捻り潰して真っ赤なトマトに変えて。その後は制限時間いっぱいまで設備を壊しまくって、ミッション完了。
収支は俺とサムライだけが黒字。ナメクジは修理費でプラスマイナスゼロ。ガンナーは二度の撃墜で圧倒的赤字だった。かわいそうなので修理費にいくらか分けてあげた。
いやあ、楽しいゲームだった。
大変おまたせしました、お久しぶりの更新でございます!
これから頑張って書いていくので、皆様どうぞ、またよろしく。




