第24話 大型アップデート その2
ナメクジ君の長い買い物が終わったら、いざストーリーミッション。ちなみにこのゲーム、全てのミッションが、クリアした後何度でも受けられるので、縛りプレイとかやりたい人にも優しい。
依頼受付窓口へみんなそろってお出かけ。他プレイヤーの表示をチームメンバー限定にしているので、ショップのように人だらけで進めないということはない。
まずリーダーがミッションを受注。参加要請が飛んでくるので、依頼文を見て承認。
依頼タイトル 「敵対コロニー襲撃・前編」
依頼人 スカベンジャー・頭
依頼文 「敵対コロニーの所在が明らかになった。出撃部隊の編成をするため、スカベンジャーの足・羽はシェルター前に集合せよ」
(このミッションには戦闘がありません)
参加して、出撃準備良し。全員がそろってからリーダーが出撃ボタンを押すと、画面が暗転、シーンが変わって、シェルター前の広場に大勢のスカベンジャーと一緒に並んで立っていた。
少し待つと、車椅子を部下に押させて頭が壇上に現れてマイクを握る。よく磨かれたスキンヘッドが光を反射して美し……くはないな。このシーンには見覚えがある。時間軸的に、戦車襲来イベント後か。
たしかなんやかんやあって、このコロニーに敵コロニーが戦車持ち出して責めてきて、それをクロード先生と他の部隊が協力して撃破して。捕虜を尋問して敵コロニーの位置を聞き出して、さあ反撃だ! という時間。演説も多分そんな内容だったと思う。
「スカベンジャー諸君、よく集まってくれた。感謝する。前置きは以上だ、長いありがたい話など、脳みそが食う寝るヤルしかない貴様らにはわかるまい。馬の耳に念仏という奴だな」
上司がナチュラルにモラハラしてきます。さすが世紀末。現実じゃ考えられないね。
「では本題だ。我々の資源地である死都を占領しようと、日々戦力を送り込んでくる糞共の巣が、捕虜の尋問により明らかになった。貴様らには最低限、コロニーを防衛するための戦力を残して出撃してもらう。アンジー他羽所属の人員は全員出撃。足からはトーマスと、人員の三割。クロードは残りを指揮し、治安維持に当たれ。
この作戦が成功すれば、死都を完全に我々の占領下に置ける。墓荒らしが捗るぞ、やったな屑ども。質問はあるか」
「失敗したらどうなる」
「そんなこともわからんのか、馬鹿め。これだけの大戦力を投入する作戦だぞ? 失敗すればどうなるか? ちっとはない頭で考えてみろ。わからんか? 本当にわからんか?」
馬鹿な質問をしたスカベンジャーを、マイクの音量を上げてこれでもかと罵る頭。まったくなんてひどいパワハラ上司だろう。
「わかった、わかりましたよヘッド」
「失敗は許されない。出撃は明日0830とする! それまでに遺書を書いておけ! おっとそういえば書けるやつはほとんど居なかった。まあどうせ我々が勝つのだから必要ないな」
原作だとこのあと……待て待て、まだそうなると決まったわけじゃない。ゲームだから展開が変わる可能性だってある。遠征部隊の生存を絶望視するのはまだ早い。でもわざわざ丁寧にフラグ立ててるし多分イクんだろうなぁ。
部隊編成が決定したあと、クロード先生から呼び出しがあり、お前らは残留組、一緒にコロニーの平和を守りましょうねと。ああやっぱり上司はこういう常識ある人間じゃなくちゃいけない。
このあとガチガチに装備を固めたアースを載せた装甲車がコロニーから旅立ち、敵地へ戦争をしに行く勇姿を見送るムービーが流れた。朝日がスモッグにかき乱されて、ぼんやりとした光の中消えていくスカベンジャー部隊。彼らを待ち受ける運命を思うと涙せずには居られないかというと、そんなことはない。現実ならまだしもゲームだし。
ムービーが終わって、イベントも終了。自由に動けるようになり、視界の上に「!」
マークが出てきた。注視。
「敵コロニー襲撃・後編はあと二回他の任務に出撃・または2時間経過すると受けられるようになります」
すぐには受けさせてくれないのか。残念。でも原作では何週間か経過してからだったから、それも仕方ないのかもしれない。
『さてリーダー。イベントが終わったが、二回どっかに出撃してこいとさ。どうする。チーム戦か?』
『そうだな。皆チーム戦でいいか?』
ピコン、ピコン、ピコンと賛成投票が3つ。自分も入れて、これで4つ。満場一致でチーム戦に決定。
「機体の準備を済ませてから、張り切って出撃だ』
『やったぜ』
『新ルールってなんだっけ』
「データ回収と物資回収。データは攻撃側が端末をハッキングしてデータ抜き取って。防衛側は妨害。物資は、防御側が大事なブツを担いで逃げるNPCを護衛。NPCが死んだら物資を持って逃げ切れば勝ち。攻撃側はNPCを殺して物資を回収して撤退すれば勝ち」
アップデートの内容は、あとはログボちゃんの逆襲か。これはまたソロでログインしたときに遊ぼう。普段ボコボコにしてるログボちゃんに、日頃の恨みとぶっ殺されるのか、結局ログボちゃんはログボちゃんなのか。楽しみだ。




