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村長さんから食器と椅子は借りられる事になった。
「普段、お貴族様が使っている物程上等じゃないらしいけど、まぁ、木の器よりはマシって感じみたいよ」とケラケラ笑いながら伯母さんがワンセット分だけ持って来てくれた。
「スープ皿と、ディナー皿、パン皿、デザート皿。カトラリーとコップは金属製ですね。伯母さん、スープを盛る器とか、盛り付けの時使うお玉とかは村長の家にありますか?」
「ああ、それはあるらしくて、前日に持って来てくれるらしいよ」
「なら、安心ですね。フィンガーボウルがあると尚良いのだけれど・・・・。パンを盛り付ける籠なんかも必要だし、テーブルクロスとナプキンは私も縫うお手伝いしますね」
「そうだね。お前の説明通りなら、真直ぐに縫うだけだから、夜にちょちょっとやれば2~3日で用意できるだろう。後、花はもう手配しておいたから」
「何の花になりますか?」
「薔薇だよ」
「本数は揃いますか?」
「30本頼んでおいた」
「それなら見栄えがしますね。ところで、大公様ご一行は何名になるのか判明しましたか?」
「大きな変更がなければ5名らしいよ」
「伯母さん、御者の人の料理もこちらで用意する必要があるかと。用意するなら一般の食堂の方でいいかの確認だけお願いします」
「ああ、そうだね。本当にアウレリアは頭がいいねぇ。何か今回一番頼りになったよ」
「いえいえ、こちらこそ、伯母さんがいてくれて大変助かってます」と女同士で互いを褒めたたえた。
最後にフィンガーボウルの説明をしてその調達を伯母に頼み、通常の業務に戻った。
「アウレリア、そろそろ食材の用意もあるから、大公様のメニューを考えないか」
昼食を食べながら調理場で料理人三人が集まり、4日後に迫った大公様の来店について話し合う事になった。
「お前はどんな料理を考えとるんじゃ?」
爺さんは端からメニューを考える気がないらしく、まずは伯父さんに話を振った。
「お、俺にはスープとステーキくらいしか思いつかん。それにパイを加える事かな・・・・。アウレリア、お前ならどうする?」
伯父さんも考える事を放棄している様で、清々しいくらいきっぱりとさっぱりと5歳児であるアウレリアの肩にその重荷を担がせる。
「お前、5歳の子供に頼ってどうするんじゃ?」と爺さんが叱ってくれるが、その爺さんも自分では何も出来ない様だ。
「いやぁ、今までのウチの新しいメニューは全部アウレリアの功績だから、大公様が望んでおられるのは、そういうメニューだし・・・・」
大きな熊男がウジウジしているのを見かねて、助け船を出す事にした。
「私が考えているのは、野菜を煮てクリーム状にしたポタージュっていうスープと、折角設置できた天火を活かしたグラタンっていう料理と、塩を塗した肉を天火で焼く塩釜焼きという料理。そして最後のデザートとしてかぼちゃで作る甘いパンプキンパイです」
「デザート以外は、どれも聞いた事がないのぉ」と、爺ちゃん。
それもそうだ。アウレリアだってこの世界では見た事も聞いた事もない料理で、これは前世の料理だ。
「道具が揃わないので、私の調理スキルを使う必要があるけど、このメニューなら他の食堂では真似ができない物になると思います」と、きっぱり言うとすんなりとこのメニューでと言う事になった。




