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「それはそうと、アウレリア、ここにある物で何か作ってみるか」
明日、婆さんの家へ遊びに行ける様になったので、バターの話が進められる事が分ったタイミングで、伯父さんから声が掛かった。
調理台の上を見ると、スープに出来そうな材料がいろいろあったので、頷いておいた。
「じゃあ、何でも好きな物を作ってみろ。まずは客に出せる物が作れるかどうか確認させてくれ」
「はい。何人前作れば良いですか?」
「試食だから、俺たち家族の分だけでいいぞ」
そう言われてまず調味料から確認をはじめた。
調味料が揃わないと作れない物が多いからね。
塩と少量のラード、ハーブが4種類、香味野菜はにんにく、ごまとネギだ。
イタリアンパセリは明日頃には漸く収穫できるだろうけど、まだちょっとだけ青い。
まぁ、それでも普通に育てるよりスキルで育てた方が数倍早く育っているのは明白なんだよ。
このスキル、本当にありがたいよ。
醤油や味噌、牛乳とかバターもない。
う~む。塩味だとしても何かいつもと違う物を作ってみたい。
肉は何の肉か分からない塊が一つ。
野菜は玉ねぎ、キャベツ、トマト、じゃがいも。
それとは別に小麦粉や固めのパンがあった。
お客に出し切れなくて固くなったパンは家族で食べるのだ。
元々固めなこの世界のパンが固くなったら、それはもう本当に固い。
スープでふやかすくらいしか方法がないので、大抵、どこの家でもスープが毎食出てくる。
小麦があるなら、片栗粉がわりにスープに入れてトロミを付けるのもありかも。
あ、皮を作ってワンタン風のもありかな?
ツルツルの食感もこっちではあまり経験した事ないから、珍しいかも?
肉をひき肉に出来ればメニューも広がるのだけれど・・・・。
それにミンチならくず肉で十分だ。
以前、試しに使ってみた調理魔法で、玉ねぎのみじん切りは出来てた。
店に出す量じゃなく、家族分のみなら、そんなにMPを消費しなくて良いのではないか?
まぁ、本当に魔法でミンチを作れるかどうかは不明なんだけどね。
でも、ちょっと試してみるのもいいかも!
ミンチにできなかったらワンタンスープとは別のメニューを考えればいいんだものね。
私は肉の塊を適当な大きさに切って、伯父さんと爺さんがこっちを見てない瞬間に『ミンチになれ!』と頭の中で唱えてみた。
何かが体からズルッと引き出された感じになったが、目の前の肉は目の揃ったひき肉になっている!!
これならワンタンスープも作れる。
ワンタンの皮は寝かせないといけないので、先に小麦粉とお湯で種を作り、寝かせておいた。
次に、スープを作るため、伯父さんたちが作っていた食堂用のスープで出た屑野菜と何の骨か分からない骨を砕いてもらい、煮込み始めた。
ガラスープはもう伯父さん達も知ってるから作りやすいしね。
その次はワンタンの具を作る事にした。こちらには包丁を使うという文化がないので、ナイフを使ってネギをみじん切りにし、ミンチ肉と合わせて塩を振って練っていく。
途中、ワンタンの皮の成形も忘れたりしないでちゃんと作ったよ。スープの灰汁を取りながらだけどね。
何にしても作業のスピードが異常に速い事に自分でも驚く。
私が持っているのは料理魔法という魔法スキルだと思っていたが、どうも調理そのもののスピードも速い事から調理スキルそのものも隠しスキルとして持っているのかもしれない。
確かめようはないんだけどね。
スープが出来る頃にはワンタンも具を包んだ物ができあがり、まだ少し時間があったので、固いパンをラスクにする事にした。
薄く切ったパンをラードで揚げていき、塩をパラパラと掛けた。
そろそろご飯にするぞと言われ、スープを漉し、骨やくず野菜を取り除き、そこへワンタンと細く切ったキャベツを投入する。
ワンタンが煮えるまでにハーブと胡麻を乳鉢で潰して、刻んだネギと一緒にスープにトッピングした。
「うまい!肉が柔らかい!」
従兄のランディが思わずと言う様に叫ぶと、他の大人たちも頷いている。
そりゃそうだよ。ミンチ肉だからホロホロの口どけだよ。
「固いパンはこうやって揚げるだけでサクサクになるんだねぇ。あんた、今度からこれ、食堂でも出せるよ」
「そうだな。それにしてもこのツルツルの皮は初めて見たな」
「ワンタンって言うんです」
「ほぉ。ワンタンねぇ」
「儂の孫は料理上手じゃて。スープに胡麻を入れるなんてのは、初めてじゃ」と、皆、結構気に入ってくれた様子にホッとした。




