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「今日のメニューは鹿肉のスープと豚のステーキだ」

 最近は朝食の時間に伯父からその日のメニューが告げられる。

 『熊のまどろみ亭』のメニューはいつも汁物と肉料理、それにパンとエールだ。

 スープの具が何になるか、ステーキが何の肉になるかの違いだけだ。

 ポンタ村だけでなく、この国の食堂はだいたい同じラインナップだ。

 もっと安い食堂はメインの肉料理が付いていないこともあるけどね。


 物の本によると、地球だって最初のレストランはイギリスのスープ屋さんだったのだ。

 レストランという言葉も体力を回復させるって意味から来ているから、食事というだけでなく元気にするっていう一種のお薬的な感覚だったらしい。

 こちらの世界だって同じ様なメニューになるのはしょうがない事なのだが、それでは発展がないではないかっ。


「伯父さん。熊のまどろみ亭の名物料理って何ですか?」

 そんな料理が無い事を知りながら聞いてみた。

「名物料理?」

「はい。いつここに来ても食べられる、ここにしかない料理のことです」

「むっ」

 伯父さんが言葉に詰まった。


 これはここの所温めておいた案を一つ披露するにはいい機会だ。

「ステーキなんだけど、焼くだけじゃなくって煮たり、蒸したりしても面白いかもしれないし」

「え?メインの肉を煮る?」

 伯父さんにしてみたら私の言っている事が承諾しかねるのか、話している途中で遮って来た。

「はい。煮て、ソースを掛けるんです」

「ソース?」

「はい、野菜くずとか骨を煮込んだ汁に、塩とかニンニク、ネギ、胡麻を入れた物をソースとして、煮た肉を切って並べ、その上に掛けるんです」

「う~む。脂の無い肉って美味しいのか?」

「脂がある方が美味しいのは美味しいです。でも、煮た肉も美味しいし、たまには違った料理を食べたいとか、体調があまり良くなくて脂を避けたいと思った時に、ステーキでない料理も選べたら他の食堂より選択肢が多くなる分有利な気がします」

「うーん。想像がつかんな」

 両腕を胸の前で組んで唸る熊が一匹、調理場で固まっていた。


「もし、伯父さんが良ければだけど、試しに少し作ってみましょうか?」

「野菜の下拵えをやった上で作るんなら、やってみてくれ」

「はい。ただ、骨とか野菜くずの汁は少し時間が掛かるので、先に仕込んでもいいですか?」

「いいぞ」と言われたので、今日使う予定の肉から切り出した骨を丁寧に水洗いし調理台の上に載せた。

「伯父さん。とんかちでこの骨を少し砕いてください。私の力では無理なので」

 上手い事伯父さんを使って骨を砕いてもらった。

 今日使わない寸胴鍋にたっぷりの水を入れてもらい、骨を入れ火にかけてもらった。

 今日、下拵えしなくちゃいけない玉ねぎとにんじんを数個、調理場でパパッと処理して、野菜くずを鍋に入れる。

 調理場の隅っこに編んだ藁で吊り下げられたにんにくのネックレスからにんにくを一つ取り、貯蔵されていた野菜の中を漁ると、セロリがあった。

 この世界、セロリあったんだなぁ。

 やったー!と思いながらセロリも鍋に放り入れた。


「伯父さん、これ、沸くまで強火で、泡が浮いてきたら中火にして、泡の色が茶色になったら泡だけこれで掬って捨てて下さい。私も野菜の下拵えの合間にちょくちょく見に来るつもりだけど、タイミングを計るのが難しいので、お願いしていいですか?」

「お、おう」

 伯父さんの了解も得られたので、私は井戸の横へ行き、野菜の下拵えをはじめた。


 本当はショウガとか白ネギを入れたかったんだけど、こっちではまだ見た事がないんだよね。

 苗はスキルで作り出したんだけど、まだ植えてないんだよね。

 そうだ!今植えておけばいいんじゃん。

 大量でなければ見た事のない植物を植えても大丈夫じゃない?

 ほら、フェリシアん家に行く時に採集した草を植えてみたとか言っとけば大丈夫でしょう。

 鑑定を使って、種ショウガなる形にして早速植えて、スキル使って水を撒き、早く育つ様に願っておいた。


 ピーラーを使ってさくさく下拵えをしつつ、時々調理場へ行き、灰汁を取る。

 いつもより早めに下拵えが終わると、調理場で早めの昼食を摂り、昼食の営業を邪魔しない様に、ガラスープは調理台の一番端っこに移してもらい、弱火で煮て欲しいと言い、昼寝に向かった。

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