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朝宮美月と結婚したい! ~12年間会話ゼロだった幼馴染が実はポンコツだったので褒めて伸ばしたらいつの間にか甘やかされていた件~  作者: 鉄人じゅす
2章 君と結婚したい

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084 屋台で美月と遊ぼう

「太一くん、私……今日はリミッター解除するよ!」


 美月はえへんと自信満々に両脇腹に手を当てた。


「最近、筋トレとかしっかり出来ているのか?」

「うーん、まだ何とかなっているけどモチベーションが落ちてきたね。太一くんが一緒に来てくれないからだよ!」

「それは申し訳ない……」


 野球部の改造計画のため、朝、昼、晩と練習漬けになっている。

 何より野球の練習より、人体実験みたいなのをさせられていて、実際に動いているのは半分くらいだ。

 自分の体がどんどん改造されているような感覚に陥る。

 ただ、そのおかげで全ての能力が上がった気がする。ゲーム的な言い方だが、例えるならそんな感じである。


「冗談、冗談。何か食べようよ。何がいい? 奢っちゃうよ!」

「焼きそば、お好み焼き、ベビーカステラ、かき氷、みたらし団子も捨てがたい」

「多いね!?」

「美月を太らせてみたくなってきた」

「悪魔のささやきすぎるよ!」


 そんなに一気に買っても持ちきれないので手始めに焼きそばとお好み焼きを買って、一時的な空腹を満たす。

 ちょっと高いが屋台で買うメシは場の雰囲気もあって、美味しく感じる。

 隣の子が美味しそうに焼きそばをすすっている所もキーポイントだろう。


「お好み焼き食べてもいい?」

「おぅ」


 俺はお好み焼きを箸で一口サイズに切り取り、自分の箸で掴んだ。


「あーん」

「あーん」


 そのまま美月の口の中に入れてあげる。

 気兼ねなく、あーんを受けて入れてくれている。もうこれ家族みたいなもんだろ。


 今度は美月の方が箸で焼きそばを掴んで俺の口に持ってきた。


「あーん」


 当然頂く、濃厚なソースの味が十分に染みていて美味い。

 美月が食べさせてくれるからなお美味い。

 ちょっと食べさせ合いに感動していると美月は慌てて、ペットボトルの水を飲み始めた。

 そしてそのまま手鏡を取り出す。


「ど、どうした?」

「青のり……」

「え?」

「お好み焼きの青のりが付いてたら恥ずかしいよ」


 確かにお好み焼きには大量の青のりが入れられていた。歯に挟まったりするもんな。


「俺は気にしないけどな」

「だめ」


 美月は強い口調で声を上げる。


「今日は大事なお話するんだから……そんなの駄目だもん」


 照れた様子で念入りにチェックしていく。

 やっぱ……美月はかわいいなぁ。

 こんな時に俺が出来る事は……。


「もっとお好み焼き食べてみるか?」

「私の話聞いてた!?」


 好きな子はからかってみたくなるものだ。



 ◇◇◇


「よっ!」


 コルク銃を標的に向けて、ポンと一発ぶち込む。

 標的となったクマのぬいぐるみに命中するが倒れるにはまだ弱い。

 もう一発、装填して、発射。

 クマのぬいぐるみは当たって後ろに下がるがまだ倒れない。


 あと3発。目の前にはコルク銃が3丁。


「太一くん」

「面白いもんを見せてやる」


 3丁の銃にコルクを押し込んで、1つ、2つ、3つ、連続で撃ち放した。

 その全てがぬいぐるみに当たり連続で当たったことでついに倒れたのだ。


「やったー!」

「かー、兄ちゃんやるねぇ」


 射的は昔から得意で、ここの店は他の店より固定が甘い。

 俺がやれば5発も弾があれば何か1つは絶対に落とせる。

 ま、5発500円相当の商品しか無いんだけどな……。


「太一くん、すごいね! 射的上手かったんだ」

「ああ、ハワイで親父に……」

「え?」

「ごほん、ほらっ、クマのぬいぐるみ、昔から好きだったろ?」


 護衛やっている親父からいろいろ仕込まされたからな。

 武芸に銃、車、飛行機の操縦も教わった。

 ちなみに探偵業は教わってないので門外だ。


 美月はぬいぐるみを手に頬を綻ばせた。


「嬉しい……」

「そんなにぬいぐるみがよかったのか?」

「違うよ……。太一くんが覚えててくれたのが嬉しかったの。ありがと」

「お、おおお」


 ぬいぐるみを抱き、朗らかな笑顔の美月に思わず顔が熱くなる。

 やっぱり好きだ。好きすぎる。この女の子と付き合って、結婚したい。子供作って、老後を一緒に過ごしたい。


「あ、金魚すくいだ。やってみようかな」


 落ち着くんだ、俺。

 好意を出すのはいいが、出し過ぎるのは良くない。

 引かれないレベルで好意を出さないと……。

 12年前の結婚の約束も重い愛情の1つ。あの話もまだ出すわけにはいかない。


 金魚すくいのおじさんにお金を渡し、すくうためのポイと容器を美月に渡してくれる。

 美月は袖をまくって気合いをいれる。


 しかし、美月が可愛いせいか、さっきから男の視線が多い。嫌らしい視線を向けた男には俺が威圧で沈めているが……やはり1人にさせられんな。


「あれーー?」


 美月は一匹も金魚をすくうことができず、落胆している。


「4歳の頃にやった時は結構すくってなかったか?」

「その記憶があるんだけど……最近やってなかったから全然だなぁ」


 硬貨を渡してもう一枚ポイをもらう。だけどそれもすぐに破れてしまった。


「4歳の時はどうだったんだ? 何か思い出せないか?」

「思い出した」


 美月が振り向く。


「美月ならできるってめちゃくちゃ頭撫でてくれたらできるような気がする」


 あーー。

 そんな馬鹿なと言いたくなるが、美月はそれでできるようになるんだよな。

 じっと俺の顔を見つめられ……そんな顔されたらやるしかない。


「ひゃっ」


 美月の肩を抱き、右手でゆっくりと美月の髪を撫でていく。

 お風呂上がりなのか、汗なのかどことなくしっとりしていて艶やかだ。

 美月の肩まで伸びた柔らかな髪を撫でていく。


「美月なら大丈夫。やれるよ……、絶対できる」

「なんか行けるような気がしてきたよ!」


「お客さん、おっぱじめるのは別んとこでやって」


 うるせぇーよ。

 最近、美月に甘やかされることばかりで甘やかしてなかった気がする。

 やはり持ちつ持たれつつだな。


「美月がんばれ」

「がんばりゅ!」


 怒濤の勢いで美月はポイで金魚をすくっていく。

 この才能、マジで底がしれない。あっと言う間に容器の中が金魚で埋まっていく。


「美月、そろそろ溢れる!」

「へっ?」


 その時だった。

 ポイですくった金魚の一匹が容器の中で跳ねて、そのまま……美月の浴衣の中へインしていった。


「ひゃああん!」


 実に艶やかな声を上げる。


「お、おい!」

「た、太一くん、ちゅめたい! 取ってぇ!」


 この状況でか!? どうすれば……。


「うおおおおお!」


 まわりの男達が騒ぎ出した。

 かわいい美月が声をあげて、浴衣の中を覗けば十分に成長した胸元が見えてしまうのだ。

 この場で美月の胸元から金魚を取るのはまずい。

 俺の女の胸を見ていいのは俺だけだ。


 すぐさま美月を両手で持ち上げ、抱え込み、金魚の容器を店員に渡した。


「金魚は戻します! それじゃ!」


 そのまま人の少ない所を探し込んだ。

 暗がりの木の下で美月の体を降ろす。

 後ろから覗かれてないことを確認して、美月の浴衣を緩めた。

 現れたのは豊かなお胸とそこでピチピチと泳ぐ金魚の姿だ。


「ふっ、この前のバカンスで水着姿を見てなければここで死んでたな……」

「は、はやくう。ひゃん」

「は、はい! 少々お待ちを!」


 肌に触れないように手をさしだし、金魚を掴んで、取り除く。

 これで大丈夫だろう。

 慌てて、浴衣を閉じて、美月を落ち着かせる。


「ありがと……恥ずかしい姿を見せちゃった」

「気にするな。傷がなくてよかったよ」


 恥ずかしそうに美月は顔を沈ませる。

 胸元を開くなんて全く大胆なことだが、こういう事情なら仕方ない。

 何とか俺も冷静に対処できたな。

 女の体に興奮するなんて……今の俺はそんな柔な男ではない。


「太一くん」

「なんだ?」

「鼻血出てるよ」

「そうか。どこかで鼻をぶつけたのかもしれないな」


「へぇ……」


 美月は目を細めて怪しむが俺は柔な男ではない!

 ちなみにスケベな金魚は近くを通りかかった子供にあげることにした。


『これより、花火大会を開始します』


 ついに花火が始まるようだ。

 このイベントの最大の名物。

 人がぞろぞろ見物スポットに移動しようと増えてきた。

 このままだと巻き込まれて、美月と俺は離ればなれになってしまうんだろう。


 そんなことはもうさせない。


 俺は手を差し出した。


「行くぞ」

「うん」


 美月はゆっくりと俺の手のひらを握ってくれる。


「放すなよ」


 美月は顔をぐいっと俺に近づけた。


「もう放さないよ、絶対。12年も待ったんだから……」

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