48. 加純さん、扇風機の風に当たりながらセーターを描く。
『渚と空のミュージアム』11月展に出品したイラストのお話し。
さあ。
皆様の脳内を、9月初頭に戻してください。
オリンピック、パラリンピックの感動がまだ覚めやらなかった9月の始め。世の中はまだ、夏。気温は30度を超え、クーラー無しではいられないっ! と嘆いていた、あの暑~い暑いあの頃へ。
46話で、イラスト交換企画のラフ画を描きながら都合により一時離脱しなければならなかった……というお話、覚えていますでしょうか?
その離脱先は、WEBで公開される創作展覧会『渚と空のミュージアム』11月展。
出品する作品を、大至急で制作するためでした。
予定は入っていたんだから、コツコツ進めていけばこんなことにはならなかったのですけどね。
進めたくとも、絵の神様が降りてこないことには描けないタイプなんです、加純さん。
その代わり、降りてきたらなにがなんでも描かないと終わらない……と云うことになるのですが。現に、降りてきた神様が順番待ちしているし。諸事情により、神様を待たせている不届き者なんです。わたし……。
さすがにね。締切まで2週間を切ると、いくらのんびり屋でも、それなりに焦るんですの。
(どうにかしなくちゃ!)
――って。早々に主催者様には「敗北宣言(※締め切り9月15日までに仕上がりそうもありませんの意)」を表明。だって、ここから2枚ですよ。まだ下絵はおろか、構図も決定していないのに。無理!
寛大な主催者様は「大丈夫ですよ。納得のいくまで、どうぞ!」とおっしゃってくださいましたが、わたしの勝手に任せたらズルズルと延びまくってしまうに違いありません。ほら、拙作の「こんりゅー」なぞ、そのいい加減に付き合わされ3年も更新が途絶え…………げふん! 聞かなかったことにしてください。
A4サイズでカラー画。コピック使用。描くのは『テスとクリスタ』のメンバー。
ここまでは決定しているのですけど、ね。
そんな時、ポコッと脳内ヴィジョンに浮かぶ画。
ひとつはカフェ・ファーブルトン(の路面席)でお茶するクリスタとメリル、給仕するテス。周囲に他のメンバーも描いて賑やかに……と思ったのですが、今回は却下。
時間が足りない。予定しているもう一枚のイラストはすでにおおまかなイメージができているのですが、これは手間が掛るのが目に見えているので、ここでさらなる負担を背負う(←しかも俯瞰図なんて!)のは避けたいですよね。
それに似たようなイラストをすでに出品している(※「テスのマッドティーパーティー」)し。
後々、負担を背負ってでも「こっちにすればよかったー」と思う出来事に遭遇するのですが、それは後で。
「ミュージアム」展をご覧になった方はお気づきだと思いますが、こちらの企画には「テスクリ」のイラストをずっとあげさせていただいているのです。だから今回も、次回12月展も「テスクリ」のキャラがラインナップされているのですが、テス・オールスターズ・テスとマオ……ときて、テスとクリスタが無いのはおかしい! ですよね。
これは、もう、テスとクリスタを描かねばいけません。
加純さんの絵といえば、繊細(←ありがとうございます!)とか、華やか(←ありがとうございますッ!!)のイメージがあるようですが、ここはそれに沿って「ざ・少女漫画」でいこうと考えました。
よし! これで背景は決まりました。
花です、派手に花で飾りましょう。花なら得意よ、おーほほほほっ。と、ポリニャック夫人ばりの高笑い(※ベル〇イユのばら参照)が心の中で漏れたのはヒミツです。(←暑さで脳がおかしくなっています)
10月展(この地点では、その予定だった)ですから、季節は秋。服装は、少し季節を先取りして暖が取れるものが良いですよね。
じゃあ、セーター。セーター。
え、セーター……。
外気温、30度越えているんだよ……。
目の前で、扇風機がガンガン風を送ってくれているのに、暑いんだよ。なんだったら、もう1台扇風機を運んでこようかと考えているのに、だよ。(注:わたしの作業台のある場所には、クーラーはありません。卓上扇風機が頑張っているのです)暑さでクラクラして来るのに。
なのに、セーターぁぁぁ。
だから。
9月始め、まだみんな夏物の服を着て、クーラー恋しの頃のお話なんだってばぁぁぁぁ。
めげない。こんなことで、わたしはめげない。ここでめげたら、展覧会参加者の皆様に迷惑が掛るじゃない!
昨年の秋冬のファッション雑誌を購入(アウトレット品50%オフでしてよ、王妃様 byポリニャック夫人)してきて、キャラに着せるセーターを探しました。
テスはピンクのざっくりとしたシルエットで可愛らしく、でも中にシャツをあわせて甘いだけじゃないように。クリスタはパリジェンヌ風にヘアバンドして、シンプルなデザインでシックな色合いにまとめてみよう。とか。
構図的には上半身だけなのでデザインのポイントが襟元や胸元にあるのが理想ですが、今回はデザインに工夫はなくても素材のもこもこ感を描き込む予定なのでひねりのあるものは避けました。
ポージングは、ハグ。
作中でも、なんどかふたりはハグをしていますし、寒さに向かう季節人恋しくなる季節でもありますからね。
そのまわりを、花のフレームで囲みましょう。
王道じゃん!!
ということで、ペン入れまで終了!
下絵は写メを撮るのを忘れました。ラフ画はラフすぎて、わけわかめ。とてもご覧に入れられるシロモノではございませんので、ここからどうぞ。
今回はコピックライナーのセピア色とグリーン色で線を引いています。
人物をアネモネの花がセピアで、茎がグリーン。暖色系の色合いが多くなりそうなので、画面に変化を持たせたい。それでも花の方を目立たせたいので、茎に強く主張されたくない。同色系の色で線を引いて、茎にはそこそこ目立つくらいでいいかな。
たぶん、こんな感じ。描いているときは直感で選ぶので、後から理由が付いてくるのね。
だいたいこんな色合いの画にしようとか、おおまかなイメージは先に作れるのですが、実際にコピックで彩色する際、どの色を選ぶのかっていうのはその場その時の気分や直感に任せています。本当は先に設計図みたいなものを作っておくと失敗も少ないのでしょうが、 加純さんの場合、それをやると設計図が本番みたいになってしまう。(←意味がない)
しかも「このとおりにやればいいのね」と緊張感が欠けると、感覚も鈍って来るらしいの。さらに、「だったら、こんなこともやってみようっかな~」とか、予定になかった描き込みがどんどん増えてくるのね。(←余計に絵が複雑なものに)
カオスになるのは、なぜなのでしょう??
そうそう。なぜアネモネにしたのかといえば。
ただ、映え。
映えると思ったから。でも盛り過ぎちゃうと今風ではないからナチュ盛りにしたかったんだけど、どーも自然体というよりは、張り切った感が……。
あ、あ! でもビビットな色合いで、華やかさは出たよね。今回の展覧会の顔になる絵だから、パッと目を引かなきゃ! (←ここ、大事)
でもテスとクリスタはチルしています。(ヒップアップ用語「Chill Out」から。「まったり」「のんびり」「くつろいでいる」の意味)
「tess&christa hug」
テスのセーターはサイズ大きめのざっくり編み、合わせた白シャツにアクセントとして瞳と同じ色のラインを入れてみました。クリスタはたっぷりとしたボートネックのシンプルなセーターにカシミアのショール。――のつもり。
質感が出ますようにと、細かく色を重ねています。空気を含んだような、ふわっと感が出ていればいいのですが。
最初はテスとクリスタを描いたコピック画だけの予定だったのですが、出来上がったイラストを観ていたら、なんだか物足りない気がしてきました。
いえ。足りないというよりは、押しが強すぎ!?
こちらの展覧会はWEB上という特色を生かして、BGM似合わせて、絵や写真が入れ替わっていくのですよ。観覧者は、自分が見たい画の前に移動していくのではなく、目の前でクリエイターの創った世界が「繰り広げられていく」といった感覚になるでしょう。
もう一枚出品予定の画がやはり「豪華」(自分で言っちゃったよ!)系なので、こちらは少し抑えた方がバランスが良いだろうし、柔らかいものと組み合わせた方が絵が「映える」と云う気がしてきました。
せっかく「チル」している絵なのに、押しが強すぎたらそれっぽくないです。いえ、ホントに。イラストだけだと、結構ドーンと圧が来るんですよ。
「チル」だってば!
そこでPCに取り込み、デジタルで壁紙とレースの装飾を加え、絵を枠で囲ってみました。
ちょっとアルバム風。もしくはお洒落な壁掛けフレーム風。
さらにまろやかに、秋の雰囲気が出たような気がするのは――わたしだけ?
そんなこんなで、とにかく1枚は完成。
さあ、問題の2枚目。「幽玄」で「豪華」な(←目標!)「紅葉狩り」に挑戦だーー!!
外気温30度越え、室内温度も30度越えの中。扇風機の風で涼を取りながら、気分だけは「秋」に強制連行して、次の作品に取りかかる加純さんでした。
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そうそう。ボツにしたイラスト「カフェ・ファーブルトンのティータイム」。どうして悔しい思いをしたか、その理由をお話ししていませんでしたね。展覧会をご覧になれば、その理由はすぐにわかると思いますが――。
特別に。
今回のBGMのタイトルが、「お茶会宇宙」って云うんですよー。これが、めちゃかわいい曲なんです。
――だから……。(泣)
✩絵×文章×音楽!
創作展覧会『渚と空のミュージアム』11月展
2021/11/30 22:00 開館!
10名のクリエイターによる、WEB上の展覧会です。どうぞ、足をお運びください。




