45. 加純さん、偶然の一致にびっくりする。
8月に入り、加純さんの脳内はますますヨーグルト化が進みました。
書くことも、描くことも出来なくて、そろそろ筆を置かねばならない時期かと、くら〜い考えが思考回路にはびこり出した頃、明るいニュースが飛び込んで来ました。
ネット小説大賞九の一次通過!
うわ~い、奇跡じゃない!?
我が身の奇跡はさておき、うれしいことに、存じ上げている方のお名前も多数見受けられました。皆様、おめでとうございました。さらなるご健闘をお祈りしています。
「喜びに沸くフェルネンコ事務所」 シャーペン画
ツイッターの落書き。
(以前FAを描かせていただいた弐逸 玖様の『害獣駆除はお任せを!』も一次選考突破。お祝いに描かせていただきました)
吉報を目にして、多少やる気と勇気が戻ってきました。ヨーグルト化した脳みそをなんとかしなければ! と力んでも、そう簡単に力は入らないんですよね。
さすが、ヨーグルト。いえ、そういう問題じゃない。第一ヨーグルトに失礼よね。
前回も書きましたとおり、座ったら書ける(描ける)人ではないので、出来るところからなんとかしていかねばなりません。そこで描きかけの漫画の下書きを進めつつ、ツイッターの企画「#12ヶ月の小品集2021」8月のお題を考えることにしたのでした。
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その前に、7月のお題の作品。
7月のお題は「夜空」でした。ひろがる夏の夜空、皆様はなにを思い浮かべるのでしょう。
わたしは金魚を飛ばしてみました。
「夏の夜の夢、金魚が泳ぐ」 デジタル画
はい、もう、タイトルのとおりです。脳みそヨーグルト化していますからね、シュールです。でも、だからこそ、発想の飛躍が面白かったりして。
加純さんはデジタル作画初心者なので、夜空を描こうと思っても、どういう風にすれば夜空が描けるのか、皆目見当も付かないのです。まあ画面を濃紺で塗って、星を散らしたら、そんな風に見えるかもしれませんが、それじゃ深みや奥行きが出ませんものね。
そこで先人のお知恵をお借りしようと、ネット検索。なかでも手順が簡単で、かつ絵柄がゴージャスに見えるものを探し出し、お手本を元に制作開始。
なぜゴージャス感を狙ったかって? そのほうが「やった!」感が如実に見えて満足するでしょ。初心者には、手応えが大事。
意気込んで始めたからといって、説明文に書いてあるとおりにしか作業出来ません。でも夏の夜空ということで、夜空の色を少し明るめに塗ってみました。華やかさも出たかしら?
ここにありきたりの共演者を持ってきても面白くないので、夏っぽさを感じつつもあり得ないものを「飛ばしたい」と考えました。
さて、なにを飛ばしましょうか?
アナログ絵だと細かく描き込みをするのが好きなのですが、デジタル作画だと板タブに不慣れないこともありこれが出来ません。って言うより、一向に上手く線画が描けないのね。
第43話でもお話しましたが、PCの画面とタブレットの描画面との距離感になかなか慣れない。おおまかな線は引けるのですが、細かい線の描き込みとなるとズレまくってくるのです。
だから躊躇なく素材を使う! 素材を利用して作品を作れるのもデジ画の良いところなのですから、使わない手段はないのです。その辺はもう割り切ってしまえ、と。
むしろどんな風に素材を上手く利用して作品を完成させるかが、わたしのデジ画の作成のテーマになっているかもしれません。
時に。この金魚さんたちには一目惚れしたのです。このイラストの構図を考える前に、何気なく素材を物色していて。
ああ、もう、この金魚たちを飛ばすしかない……という、運命の出会い!? いいえ、この金魚たちの存在があったからこそ、この構図を思い浮かべたのでしょう。
ところで。どうして金魚が飛ぶのだろう、って。それは、たぶん、暑くて金魚鉢から逃げ出したくなったんでしょうね。このまま泳いで、窓からお空へ飛んで行こ~と。
――発想がパンクだわ。
暑くて逃げ出したいのは、金魚たちではなくわたしなのよ。きっと。
窓も素材を使用しているのですが、元々閉じていた窓は、わたしが無理矢理開けました。だって開いていなきゃ、金魚たち空へ行けないでしょう。
そのくらいの加工は出来ましてよ。
わたしの場合アナログで絵を描くと少女漫画風テイストが濃厚になりますが、デジタル作画だと作品のテーマや選ぶ素材によって、いつもと違う雰囲気も出せるという楽しみが増えました。
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8月のお題は「海」。
夏らしくて素敵なお題でしょう。
夏の海といえば、海水浴でしょうか。強い陽射しにきらめく白い波。寄せては返す波。焼けた砂浜で、水着姿でスイカ割り。明るい歓声。日に焼けた健康的な笑顔が弾けていそうな風景。アオハル的な。
(夏の風物詩で良いけど……)
それとは別の海を描いてみたくなりました。
――って、すでにその時、締め切り2日。そう。もうのんきなことをのたまっている余裕はなし。
例によって例の如く、アイディアが浮かんでこなくて、そこまでずるずると引き延ばしていたのですが、土壇場に来るとなんとかなるのが不思議。
夏の海ということで、おそらく他の参加者の皆様は躍動的な絵を持ってくるのではないかなぁ~という予想の元、反対に静かな風景を描いてみたくなったのです。
へそ曲がり根性、ここにあり。
「海かの海」 デジタル作画
プレインヨーグルト色に染まった脳みそが考えたにしては、よい出来でしょ?
下地にスモーキー系の青、水色、灰色、緑、紫を塗り、グラデーションを作ります。コピックでこれをやるとなると大変(←似たようなことを前回の『幻想・夜陰夜会』の背景でやっています)ですが、デジタルだとラクね。グラデの機能を使えば一発で出来上がり。今回は様子を見ながらぼかしたかったので、ぼかし筆を使用しましたが。
島影を描いて、波面の陰影をつけるのに手書きで色をちょんちょんと置いていきます。この辺の作業は、アナログといっしょ。というか、この辺りまでレイヤー分けもせずに、アナログ感覚で塗り重ねていました。
ただし画面手前だけ、筆で描いた波の上から、別レイヤーで素材の波の山を重ねています。
月を描き、水面に映る月光の白い光を入れて。
島に向かう船を描く定だったのですが、土壇場でもうちょっと神秘性をプラスしようと、鳥居に変更しました。
船より鳥居の方が静けさを演出できるし。簡単に描けるから……とかいうのはナイショですよ。(←時短だってば!)
なんだか厳島神社遠景みたくなってしまいましたが、全く架空の風景です。
感覚だけで描いた絵なのですが、今回のお題にはなんとも不思議な偶然があました。もしかしたら知らず知らずのうちに時間と場所を越え、ある方と気持ちが同調していたのかも。
しかもそれは全く同じではなく、同じ題材(海・波)道具(鳥居)を使いながら対極の演出。もちろん、その方とわたしが示し合わせたわけではなく、蓋を開けたらそういうことになっていたのですよ。
だって一番びっくりしたのは、当の本人達だったのですもの!
こんな素敵な一致、滅多に遭遇できるものではありません。拝見したときは驚きと共に、楽しくなってしまいました。
それって、なに? と興味をお持ちになった方は、ぜひこの企画に参加してみませんか。覗きにおいでになるだけでも。
毎月25日に開催される、超個性派揃いの一風変わった共同作品展です。
※天界音楽様主催「#12ヶ月の小品集2021」 毎月25日、ツイッターにて開催中。
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ファンアートをもう2枚。
久々のFAテロを決行しました。
ごぼうかえる様のSF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」
https://book1.adouzi.eu.org/s7079f/
から、時神の栄次。
そしてプラズマ。
こちらはミリペンではなく筆ペンで描いたものです。そうです、宛名書きに使う、あれ。
和風な雰囲気を演出したかったのもありますが、線に面白いアクセントを簡単に付ける事が出来るのでよく利用します。
最後に、夏らしい一枚を。
リクエストをいただきました!
「tess&christa 水着姿」
テスとクリスタのダイナマイトボディが魅力的な水着姿。水着のデザインもそれぞれ個性的ですが、健康的ではつらつとした筋肉質のクリスタに対し、いかにもやわらかそうだけど、どこか頼りないテスの危うげな水着姿は、マオやアダムとディーが観たら目の保養なのか毒なのか?
反応が観てみたいな……、なんてね。
(あれ。どこからか「見せてはいけない!」と言う声が聞こえたような……?)
それでは、また。
同じお題でも、ひらめきによって描かれる風景は違ってきます。そして同じひらめきを得ても、それをどう魅せるかが違えば、描いた絵の印象はがらりと違ってきます。
そんなことを身をもって知ることが出来た貴重な体験でした。面白かった~~!
今年も長岡更紗様主催の『イラスト交換企画』に参加させていただきました。次回はその話題になるか、「渚と空のミュージアム」10月展の作品の話題になるか。
お楽しみに。




