表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即興短編集  作者: 花ゆき
96/117

厨二病を患う幼馴染

本日二回目の投稿です。

私の幼馴染は厨二病を患っている。今日の彼は何設定だろうか。


書き出し「パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ」

https://kakidashi.me/novels/1241

修正して投稿しています。

「パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ」

「パンツは十回言うだけでよかったが、いいだろう」

「それで何がしたいの?」

「俺が履いてるものは何だ」

「パンツじゃないの?」


 学校の帰り道、彼からの唐突な言葉に私はパンツを連呼していた。彼の問いかけにどういう意味だろうと思いつつ答えると、彼はニヤリと笑った。


「かかったな。俺が履いているものはズボンと褌だ!」

「なにそれ、横暴!」

「勝者こそが正義なのだ。フハハハハ」


 彼、藤原 榊は中学生の頃からずっと厨二病を患っている。高校になってもこの調子だ。もはや完治は厳しいだろう。飽きないし、楽しいからいいんだけどね。


「今日は何設定なの?」

「王様だ」

「えっ、なら一人称を朕とか私とかにした方がいいんじゃない?」

「くっ、和音ごときに指摘を受けるとは……!」


 彼が本気で悔しがってることが、逆にムカつく。それでも私にとっては腐れ縁の幼馴染だ。今日だって律儀に家まで送ってくれている。彼曰く、痴漢防止と未来のシミュレーションだとか。


「失礼な! あっ、家着いた。いつも送ってくれてありがとうね」

「うむ、苦しゅうない」

「また明日」

「またな」


 彼はニッと笑って、背中を向けていつもの方向へ帰っていった。




 翌朝、榊が家に迎えに来た。今日の彼は何設定なのだろうか。


「和音、俺勇者になって国を統一したんだ」


 今日は勇者設定のようだ。これならまだ扱いやすい。彼の武勇伝を聞いていこう。


「ふーん。それで、どうして勇者になったの?」

「今回は本当だって。昨日和音を送った後になんか光りに包まれて、気がついたら異世界にいたんだ」

「テンプレだね。それで?」

「だから本当だって。昨日は王様設定だったから、その『堂々とした態度はまさに王者の風格! ぜひともこの国をお救い下さい』って言われたんだ。なんか魔王が復活したらしくて、その影響で国が分裂したり、内乱も怒ってるって聞いてさ。さすがに王様設定やってる状態じゃないだろ? 『俺は普通の一般市民です。帰して下さい』って言ったんだ」


 だんだん真実味を増してきた。今日はエイプリルフールだったかな。うん、普通の日だった。


「それでさー、召喚した魔術師が何て言ったと思う?」

「テンプレだと『魔王を倒すまで帰れません』じゃない?」

「そうなんだよ! 俺『マジかよ!?』って叫んじまった。でも、やっぱり帰りたかったからさ、すげー頑張った。魔王を倒しながら、国の内乱も沈めて、再び統一したし。とにかく早く帰りたかったんだ。虫がついてないか心配だったしな。そしたら、姫様が召喚した時間に還しますからって言ってくれてさ。すっごい助かった」


 待てよ? テンプレだと大抵お姫様と勇者っていい仲になるよね。まさか榊もお姫様といい仲だったんじゃ……。それを帰りたいという気持ちのあまり、置いてきたとか!?


「ねぇ、姫様とはどんな関係だったの」


 何故か彼は固まり、私の言葉を反芻している。次第に頬が桃色に染まっていた。どうしたのだろうか。もしや、お姫様とのアレコレを思い出して、そんな顔をしているのだろうか。


「お姫様とはいい関係だったの? 置いてきてよかったの? 離れ離れだよ?」


 彼は先程まで血行がいい顔をしていたのに、瞬く間に血色が悪くなった。今更離れ離れだと気づいたのだろうか。そうなら手遅れすぎる。


「あのさ、お姫様は俺を召喚した魔術師と恋仲だったから。違うから。誤解だから。旅でも花街とか行ってないから。はぁ……、ぬか喜びした」

「ふーん」

「それだけ!?」

「それ以外に何があるの」

「ナニモナイデス」


 彼は何故か悟りを開いた僧侶の顔をしていた。一体どうしたのだろうか。異世界の旅はそれほどきつかったのだろうか。まぁ、これほど榊が言ってるんだし、私が信じてあげないとね。それなら、私は言わなきゃならない言葉がある。


「榊」

「ナンデスカ」

「お帰り」

「和音っ……!!」


 目をうるうるとさせて、驚くほど元気になった榊と一緒に学校に向かう。やっぱり平和が一番。その平和は榊がいてこそだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ