厨二病を患う幼馴染
本日二回目の投稿です。
私の幼馴染は厨二病を患っている。今日の彼は何設定だろうか。
書き出し「パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ」
https://kakidashi.me/novels/1241
修正して投稿しています。
「パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ」
「パンツは十回言うだけでよかったが、いいだろう」
「それで何がしたいの?」
「俺が履いてるものは何だ」
「パンツじゃないの?」
学校の帰り道、彼からの唐突な言葉に私はパンツを連呼していた。彼の問いかけにどういう意味だろうと思いつつ答えると、彼はニヤリと笑った。
「かかったな。俺が履いているものはズボンと褌だ!」
「なにそれ、横暴!」
「勝者こそが正義なのだ。フハハハハ」
彼、藤原 榊は中学生の頃からずっと厨二病を患っている。高校になってもこの調子だ。もはや完治は厳しいだろう。飽きないし、楽しいからいいんだけどね。
「今日は何設定なの?」
「王様だ」
「えっ、なら一人称を朕とか私とかにした方がいいんじゃない?」
「くっ、和音ごときに指摘を受けるとは……!」
彼が本気で悔しがってることが、逆にムカつく。それでも私にとっては腐れ縁の幼馴染だ。今日だって律儀に家まで送ってくれている。彼曰く、痴漢防止と未来のシミュレーションだとか。
「失礼な! あっ、家着いた。いつも送ってくれてありがとうね」
「うむ、苦しゅうない」
「また明日」
「またな」
彼はニッと笑って、背中を向けていつもの方向へ帰っていった。
翌朝、榊が家に迎えに来た。今日の彼は何設定なのだろうか。
「和音、俺勇者になって国を統一したんだ」
今日は勇者設定のようだ。これならまだ扱いやすい。彼の武勇伝を聞いていこう。
「ふーん。それで、どうして勇者になったの?」
「今回は本当だって。昨日和音を送った後になんか光りに包まれて、気がついたら異世界にいたんだ」
「テンプレだね。それで?」
「だから本当だって。昨日は王様設定だったから、その『堂々とした態度はまさに王者の風格! ぜひともこの国をお救い下さい』って言われたんだ。なんか魔王が復活したらしくて、その影響で国が分裂したり、内乱も怒ってるって聞いてさ。さすがに王様設定やってる状態じゃないだろ? 『俺は普通の一般市民です。帰して下さい』って言ったんだ」
だんだん真実味を増してきた。今日はエイプリルフールだったかな。うん、普通の日だった。
「それでさー、召喚した魔術師が何て言ったと思う?」
「テンプレだと『魔王を倒すまで帰れません』じゃない?」
「そうなんだよ! 俺『マジかよ!?』って叫んじまった。でも、やっぱり帰りたかったからさ、すげー頑張った。魔王を倒しながら、国の内乱も沈めて、再び統一したし。とにかく早く帰りたかったんだ。虫がついてないか心配だったしな。そしたら、姫様が召喚した時間に還しますからって言ってくれてさ。すっごい助かった」
待てよ? テンプレだと大抵お姫様と勇者っていい仲になるよね。まさか榊もお姫様といい仲だったんじゃ……。それを帰りたいという気持ちのあまり、置いてきたとか!?
「ねぇ、姫様とはどんな関係だったの」
何故か彼は固まり、私の言葉を反芻している。次第に頬が桃色に染まっていた。どうしたのだろうか。もしや、お姫様とのアレコレを思い出して、そんな顔をしているのだろうか。
「お姫様とはいい関係だったの? 置いてきてよかったの? 離れ離れだよ?」
彼は先程まで血行がいい顔をしていたのに、瞬く間に血色が悪くなった。今更離れ離れだと気づいたのだろうか。そうなら手遅れすぎる。
「あのさ、お姫様は俺を召喚した魔術師と恋仲だったから。違うから。誤解だから。旅でも花街とか行ってないから。はぁ……、ぬか喜びした」
「ふーん」
「それだけ!?」
「それ以外に何があるの」
「ナニモナイデス」
彼は何故か悟りを開いた僧侶の顔をしていた。一体どうしたのだろうか。異世界の旅はそれほどきつかったのだろうか。まぁ、これほど榊が言ってるんだし、私が信じてあげないとね。それなら、私は言わなきゃならない言葉がある。
「榊」
「ナンデスカ」
「お帰り」
「和音っ……!!」
目をうるうるとさせて、驚くほど元気になった榊と一緒に学校に向かう。やっぱり平和が一番。その平和は榊がいてこそだ。




