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即興短編集  作者: 花ゆき
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犬の集会

私の幼い頃は近所に沢山の犬がいた。近頃は姿を見ない。私が幼い頃、夕暮れに犬の集会をのぞいたせいだろうか。


即興小説トレーニングにも投稿しています。

 私の幼い頃は近所に沢山の犬がいた。近頃は姿を見ない。私が幼い頃、夕暮れに犬の集会をのぞいたせいだろうか。


 私の記憶によれば、犬は夕暮れに五、六匹で集まって円になっていた。そこは河川敷の下だった。夕焼けの差し込む中、独特な風景に私はつい足を止めたのだ。ほとんどの犬に首輪はなかった。私はどうして集まっているのか、気になってしまった。


 翌日も、だいたい同じ時刻に犬は集まっていた。昨日より犬が増えている。一体何をしているのか。犬は円になっておとなしく座っているだけだ。私には不思議だった。犬はしばらくして解散した。


 数日後、またも犬の集会をのぞいた。前の日から間が空いたのは、寄り道をしてしまって集会の時間に間に合わなかったからだ。どうやら、犬たちは暗くなったら解散するらしい。今回はたった三匹しかいなかった。寂しいものだ。犬は変わらず円になって、静かにしている。寂しそうだと思った。そして同時に混ざりたいとも思った。


 翌日混ぜてもらおうとしたが、野良犬は警戒心が強く、逃げられた。その次の日も駄目だった。犬の集会は神聖らしい。人が踏み込んではいけないのだ。


 私から逃げた犬はどこかで、「危ない危ない。人間が集会に入ってくるところだった」と話しているかもしれない。それから、「左大臣殿。近頃の我々犬の治安はどうですかな?」と会議しているのかもしれない。犬の数がたまに上下するのは彼らから見た犬の国の事情で、助っ人に隣町に行っているのかもしれない。そう考えると犬の集会が微笑ましく思えてきた。


 犬たちは今もどこかで集会を続けているはずだ。

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