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即興短編集  作者: 花ゆき
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天国に一番近い場所だってさ

「天国に一番近い場所だってさ」 彼はそう言ってパンフレットをもってきた。


重複投稿しています。 https://kakidashi.me/novels/837

8/2、パンツの日に書きました。

「天国に一番近い場所だってさ」

「まぁ、ロマンチック」


 彼が渡してきたパンフレットにはニューカレドニアと書いてあった。表紙の透き通るような海の青が綺麗だ。


「新婚旅行にどうかなって」

「いいわね、行きたい!」

「お前を天国に連れて行ってやるよ」

「もう、まだ寿命はあるわよ」


 口調とは裏腹に、彼に拳の効いたパンチが繰り出された。


「ぐっ、いい拳だ」

「たっくんへのツッコミで鍛えられたのかしらねぇ」

「結婚式もそこでしよう」

「もう、式場は二人で決めてるじゃない」


 再び、彼に拳の効いたパンチが繰り出され――、いや彼はパンチをかわした。それに彼女は舌打ちする。


「いや、たまにはかわしていいじゃん!」

「そろそろ殴られるのが快感になるかと思ったわ。ごめんなさいね、うふふふ」

「流加さん! お願いがあります!」

「まぁ、なぁに?」

「今日は八月二日。パンツの日です! ですので今晩はこの白レースTバックをはいてくれませんか!」


 彼が渡した包みには、小さなパンティが入っていた。彼女はそれを見て、そっと包みにしまう。彼は絶望した。


「そんな! はいてくれてもいいじゃないか!」

「あら? じゃあ、今のパンツはどうでもいいのね?」


 彼女のロングスカートが少しずつたくし上げられていく。隠れていたふくらはぎがあらわになり、彼はゴクリを喉を鳴らした。そしてふくらはぎにさしかかる。みずみずしい、むちっとしたふとももに期待が高まる。そしてスカートからガーターベルトの先が覗いた。もっと見たいと思った瞬間に、スカートは下ろされる。そんなと思い流加を見上げると、彼女は妖艶に微笑んでいた。


「どっちのパンツがいいのかしら。それとも、私には興味ない?」

「流加さんがはいてこそのパンツです! だから、だからっ……両方見せてください!」

「まぁまぁ、私に勝てたらね」




 それから深夜まで拳を振るい合う二人がいた。


「たっくん、なかなかやるわね」

「俺は、パンツのために――!」


 パンツを見れたのか、それは翌日の彼の幸せそうな顔が語っていた。彼女はつい甘やかしちゃうわと目尻を下げて、彼の背中をつねっていた。それでも彼は幸せそうに笑う。


「新婚旅行楽しみだね」

「そうね、たっくん」

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