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即興短編集  作者: 花ゆき
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ぶぇっくし!

夏休み中の部活帰り、先を行く彼女がくしゃみをした。


https://kakidashi.me/novels/765 こちらを元に加筆投稿しました。

「ぶぇっくし!」


 夏休みの部活帰り、先を行く彼女がくしゃみをした。へぇ、彼女も同じ時間に部活終わったのか。しかし、なんて女子力の低いくしゃみだろうか。無理に作っていないありのままの君らしくて好きだけれど。


「ぶぇっくし、ぶぇっくし、ぶぇっくし! っあー……」


 前の彼女が誰も見てないか周りを確認して、僕と目が合った。いや、見たくてみたわけじゃないので! どうすべきか反応に困る僕に、彼女は気まずそうに笑う。見られてしまったからか、彼女が話しかけてきた。


「今のくしゃみってやっぱり風邪かな」

「でも、今のって惚れられかもしれないよ」

「何それ?」

「くしゃみの回数で『一に誉められ、ニにそしられ、三に惚れられ、四つ夜風邪の引き始め』って言うんだよ」


 意識してくれるかもしれないと彼女に言ってみる。すると彼女は感心したように頷いた。


「じゃあ、やっぱり始めの一回も含めて風邪かな。今日は早く寝よっと」


 そ、そうなっちゃうか。残念だ。


「林くんも、部活で汗かいたんだから風邪ひかないように気をつけてね。私はこの角右だから」

「あ、うん。ありがとう。お大事に」

「ありがとう! またね」


 部活では体育館を半分に割って使っている。彼女はバレー部で僕はバスケ部。隣を使っているバスケ部の一員でしかない僕のことも、彼女は気づいていたんだ。意外に彼女は僕のことを見てくれてるらしい。夏の照りつけるような日差しに、内側からも熱くなったような気がした。

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