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即興短編集  作者: 花ゆき
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私はあなたの猫です

猫を拾った。ベルと名づけたのだが、お風呂が嫌いなようだ。今日もお風呂に入れようとしたところ――。


お題は『「恥ずかしそうに、手のひらにしがみつく」キーワードは「お風呂」』です。 http://shindanmaker.com/38363

 猫を拾ってきた。三毛猫の雌だ。拾ってきた当初は警戒され、何度手をひっかかれたか分からない。それでも段々心を許してくれるようになり、今では手をペロペロ舐めてくれるようになったのだ。


 そんな猫、ベルの一番苦手なのがお風呂だ。無理に入れようとすれば暴れて大変なことになる。しかも、その後しばらくは機嫌が悪い。だが、ベルの毛並みを維持するために心を鬼にして風呂場に連れて行く。腕の中で最後の抵抗をしているが、風呂場に入れてしまえばこちらのものだ。浴槽のお湯に浸した時、ポンと音がして煙の中から女の子が現れた。何事だ、これは。


 女の子はお湯が怖いのか、ブルブルとふるえていた。そして彼女を支える手の存在に気づいたのか、恥ずかしそうに、手のひらにしがみつく。彼女の頭にはぷるぷると震える猫耳があり、猫の尻尾がお湯からピンと警戒するようにたっている。なんて最終兵器だ。恥ずかしそうにしているのが凶悪的にヤバい。


「えっと、お嬢ちゃんの名前は何かな? どうやってここまで入ってきたのかな? お兄さんの猫知らないかな?」


 出来るだけ優しく問いかけると、彼女は顔を赤くして、ぷるぷる震えながら言った。


「私の名前はベル。どうやってって、あなたが連れてきたんじゃないですか。忘れたんですか? 私はあなたの猫です」


 羞恥心からか、手で胸を尻尾で下を隠しながら言う彼女にぐらっときた。


「月の魔力が切れていたので猫の姿をしていましたが、とうとう元の姿に戻ってしまいました。こんなベルはお嫌いですか?」


 しがみついていた手を、ぎゅっと握ってきた。俺に少女趣味はなかったはずなんだが。手を握ってくるベルにぎゅっと胸もつかまれてしまった。


「……嫌いじゃない」

「ふふっ、嬉しい」


 無防備にベルがじゃれついてきた。か、体がふわふわしてる! 慌てて離れようとすると、猫耳をぺたんと伏せてしょんぼりする。仕方ないので許可すると、忍耐力との勝負になった。素数を数えるべきだろうか。もうベルが猫でも、猫耳少女でもいい。とりあえず服を着てくれ。

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