僕ばかり好きなんだね
「僕ばかり好きなんだね」そう言った彼氏に私は反撃を試みた。
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「僕ばかり好きなんだね」
「何それ。どうしてそう思うの」
「紗綾から好きって聞いたことない」
「好きじゃないよ。彼女とのデート中に狩りゲームして、私放っておく彼氏なんか」
「いや、それはごめん! っ、やば! 紗綾クエスト手伝ってくれ」
彼が楽しそうで始めた狩りゲーム。私が始めて、彼はすごく嬉しそうにしていた。狩りについて教えてくれたし、一緒にするのは楽しかった。けどさ、限度ってものがあると思う。
「嫌! 今せっかくデートしてるのに。絶賛放置されてるのに、どの口が言うのよ。私こそ言いたい。私ばっかり晴人のこと好きみたいじゃない」
「うっ……、ごめん。でも、今やっとボス出てきたんだ」
携帯ゲームのボタンをカチャカチャ動かして、目は忙しなく画面を追う。ちっとも私のこと見てない。口ばっかりだ。
もういい。それならそれで、私に考えがある。
彼の腕の中に潜り込む。胡座をかいてゲームしていた彼は驚いたみたいだけど、ボス戦に集中している。それでいい。彼にもたれかかって、首筋にすりすりと頭をよせる。彼の腕がピクリと震えた。彼の腰に手を回して、ぎゅっと抱きつく。彼の匂いを吸い込んで、頬を緩める。
「あの、紗綾サン? 今、ボス戦中で……」
知ってる。ちなみにさっきから攻撃が浅かったり、空振りしてるのも見てる。でも今回は晴人が悪い。こんなに放置しておきながら、「僕ばかり好きなんだね」はないと思う。そんなに不満なら言おうじゃないか。
「晴人、好き。大好き」
耳元で晴人だけしか知らない声で言った。反応を見るために顔を見上げて見れば、あれっ? 無表情だ。彼の手元のゲームを見れば、ボスに致命傷をもらって死亡。タイトル画面まで戻ってしまっていた。
「お前は」
あっ、時差で顔が赤くなった。効いたみたい。よかった。
「もうあんなこと言わない?」
「イイマセン」
「私のことは?」
「……好きです」
「うん、合格」
彼の真っ赤な耳にキスをして、ゲームの続きをしていいよと言った。すると、あんなことされてできるわけないと抱きしめてきた。彼の体温にぎゅっと胸が締めつけられる思いをしながら、彼にもたれるように体から力を抜いた。
ともかく、ゲームをやめさせよう作戦は成功したみたい。




