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即興短編集  作者: 花ゆき
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どこでもいっしょ

文中に『絡め』を入れて【不安】をイメージした140文字作文を書いて下さい。 #140SS http://shindanmaker.com/210384


 猫人族の集落に三毛猫の少女がいた。隣には虎猫で年上の少年が住んでいる。私は年上のお兄ちゃんが好きで、よく追いかけていた。


 面倒見のいい隣のお兄ちゃんは、私を先導するかのようにその背中を見せる人だった。琥珀色の瞳はいつも力強い輝きで、自信に満ちている。私はお兄ちゃんが大好きだった。だから、いつも小走りでお兄ちゃんの背中を追う。


 今日は家のおつかいを頼まれた。市場に行こうとすると、偶然お兄ちゃんと会う。


「お兄ちゃん、偶然だね」

「お、おう。それより、いい加減お兄ちゃん呼びやめないか?」

「どうして? 私が嫌になった?」


 たちまち不安になって、お兄ちゃんの目を見るのが怖くなった。地面にのびるお兄ちゃんの影を見つめる。


「リーナっ、そうじゃなくて」


 影のお兄ちゃんは慌てたように耳をピクピク動かす。なんだか落ち着かない様子だ。


「試しにお前、テスって呼んでみろよ」

「テスお兄ちゃん?」


 私がたどたどしく呼ぶと、影のお兄ちゃんは耳をピンと立てて喜んでいた。どうしてだろうか。地面に伸びるお兄ちゃんの尻尾の影がゆらゆら揺れている。


「ま、まぁ今はそれでいいや。ちゃんとついてこいよ」


 手を引かれて、一緒に市場へ行くことになった。頼まれたものを買い込んでいくと、買い物袋で両手がいっぱいになる。繋いでいた手は離れた。これでは人混みにまぎれて離れてしまう。前を行くテスお兄ちゃんの尻尾に自分の尻尾を絡ませてみた。これではぐれないだろう。


 テスお兄ちゃんは尻尾を絡めた途端に背筋をぞわっとさせ、顔を真っ赤にして振り返った。


「お、お前は!」

「はぐれると思って」

「だよな、お前には深い意味なんてないよな。……手も埋まってるし、ちゃんと尻尾絡めてろ」


 ぷいっと前を向いたテスお兄ちゃんは上機嫌に鼻歌を歌う。


「うん」


 私は笑って、テスお兄ちゃんの背中を追いかけた。

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