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即興短編集  作者: 花ゆき
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魔導通信士アンヌ・モルガン

今日の台詞お題は「俺は別に、駄目だなんて一言も言ってないだろ」です。作中にスピーカーを出しましょう。 http://shindanmaker.com/437994


魔導通信士であるアンヌ・モルガンは、今日も魔導装置を使って、魔導士へ魔力回線を繋ぐ。

 魔導通信士という職務がある。様々な属性に対して魔力の耐性があることが求められる。魔力の耐性は努力次第で作れるため、国の花形である魔導士より難易度が低い。そして何より魔導士と関わりやすいのも魔導通信士だった。通信により、情報を伝えるためだろう。アンヌは今日も魔導装置を使って、魔導士へ魔力回線を繋ぐ。


『はい、こちらアース・シュタイン。用件をどうぞ』

「こちら魔導通信士アンヌ・モルガンです。モンスターが現れました。こちらの情報では五体と聞いています。出現確認場所と門に到達する場所までの予想時間を後ほど回線で送らせてもらいます」


 ふぅ……、ちゃんと緊張せずに伝えられた。重圧から開放されてほっとしていると、返事がないことに気付く。いつもならすぐ返事が返ってくるのに、どうしたのだろうか。もしかして、何か不快にさせてしまったのだろうか。


 彼に繋ぐ魔導通信士は、これまで何人も変えられている。その理由は仕事という範疇を超え、不必要に通信を繋いだからだ。もしかすると、今回の通信もそうとられてしまったのかもしれない。


「あ、あの……、何か粗相をしてしまいましたか?」

『俺は別に、駄目だなんて一言も言ってないだろ』


 拗ねたような声が、魔導装置のスピーカーから聞こえた。


『五体と言ったが、現場で増えている可能性はあると思うか?』

「……私の意見でもよろしいですか?」

『ああ。あんたなら通信を受け取った時の状況も知っているし、少しでも情報が欲しい』


 先程、門から慌てたように入ってきた通信を思い出す。


「では失礼しますね。今回のモンスターは群れをなすタイプのようです。ですから、増えている可能性は限りなく高いと思われます。十分な警戒が必要になるかと」

『あんたも同じ意見か。よし、小隊組んで行くことにする。いつもありがとな。モルガン』

「武運をお祈りしてます」


 通信が切れた。私は深い息をついた。一魔導通信士にすぎない私の名前を、彼は覚えてくれていたのだ。それも、花形の中の花形とも言われる彼に。これまで魔導通信士としてこなしてきたことを認められたようで、嬉しくなった。これからも頑張ろうと決め、新しい仕事に手をつけた。

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