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即興短編集  作者: 花ゆき
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ビビリ彼女

お題は『「嫌々ながらも、手のひらを両手で包む」キーワードは「電車」』です。 http://shindanmaker.com/38363


僕の彼女はビビりだ。そんな彼女と満員電車に乗った時の話。

 僕の彼女はビビりだ。彼女はビビりであることを隠そうと、ツンツンしている。しかし、周囲は彼女の虚勢に気づいている。気づいていて、生暖かい目で……いや、微笑ましい目で見守っているのだ。理由は、ビビりを隠そうとしてあたふたする姿が面白いからだ。まったくの同意見である。


 そんな彼女が今日は何にビビっているか。満員電車である。あいにくの雨で、自転車通学の彼女は電車に乗ることになった。雨の日特有の密集率にキョロキョロとしながら、僕のそばによってくる。彼女は標準より身長が低いため、手すりを掴むことができない。そのため電車のカーブでふらついて、後ろのサラリーマンの鞄に当たってしまう。彼女は鞄からビクッと離れ、すいませんと謝る。それから、別のサラリーマンが吊り輪を掴むために挙げた手にビクッと反応した。


 さすがだ。小心者すぎる。思わずクックックと笑いながら、彼女においでと招く。こちらに寄れば、スペースもまだ空いているし、彼女にはいいだろう。彼女は嫌々ながらも僕の手のひらを両手で包んで、距離を更に詰めた。思いがけない彼女の暖かい体温に、ドキッとしてしまう。


「あの、おいでって言ったのは、こっち側ならまだスペースあるからって意味で」

「はぁ!? 紛らわしい言い方しないでよね!」


 彼女はぶんと手を離して、顔を背ける。髪から彼女のシャンプーの匂いがふわりと香った。満員電車だから強制的に彼女と近くなる。至近距離にドキドキしていたが、あっけなく着いてしまった。彼女はあからさまにホッとしている。思わずビビらせたいと思った。手を繋ごうかな。


 油断している彼女の手に触れ、一気に指を絡ませると、彼女は半泣きになりそうな目で見上げてきた。彼女の真っ赤な顔を見て、満足する。さて、次は何にビビる彼女を観察しようか。

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