嫌よ嫌よも……

　ケンカばかりしてしまう男女がいた。気が合わないと言いながらも、相手が気になって仕方ない。周りから見ればお互いに意識してるのが丸わかりで、微笑ましく見守られていた。

　そこで彼の友人はしかけた。サプリメントを彼に渡して、これは素直になれる薬だと伝えたのだ。すると信じやすい彼はその薬を飲んで、彼女を呼び出した。

「いいか、一度しか言わないからな。俺はお前が嫌いだ」

「奇遇ね。私も嫌いよ」

「でも、お前の勉強にうちこむ熱心なところは悪くないと思ってる」

「私だって、部活頑張ってる姿はいいなって思ってるわよ」

　お互いじっと見つめ合って、目をそらす。

「どちらにしろ、嫌いなんだけどな」

「私だって」

　彼の友人は言う。あいつにしちゃ、よくやった方だと。

　二人が、嫌よ嫌よも好きのうちという言葉を知るのはいつになるだろうか。