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即興短編集  作者: 花ゆき
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アンドロイドは愛したい

菜月博士が作ったアンドロイド如月は、新しいお願いをしてきた。しかし、その願いはとんでもないものだった。


そこそこ下ネタあり。苦手な方はご注意下さい。

 菜月博士によってアンドロイドの如月は調整される。彼の首の後ろからコードをつなぎ、博士はパソコンのキーボードをせわしなく打っていた。


「菜月博士お願いがあります」

「なぁに? 超跳躍力はもう懲りたでしょ?」

「空高く飛べましたね。地面がえぐれましたが。ですが、違います」


 如月は数日前に空を飛びたいと言った。しかし、身体の負荷を考えると跳躍が限界だった。そのため超跳躍機能を組み込んでみたのだ。結果は思うようなものではなかったが、彼は楽しそうにしていた。そんな彼の次のお願いとは、何だろうか。


「じゃあ、何よ」

「性器をつけてほしいのです」

「はい?」


 日常生活で久しく聞かないだろう単語で、聞き間違いだろうかと思った。それも、如月が言うだなんて予想できるわけがない。


「生殖機能、別名……」

「分かったから、そこまで言わないで」


 どうやら、聞き間違いではないようだ。


「菜月博士、心拍数に乱れを感じます。どうされましたか」


 作った当初の無表情とは違い、如月は心配そうな顔をしていた。学習し、表情豊かになったものだ。


「いや、研究者として羞恥心とやらは捨てたはずだったんだけどね。それで、急にどうした理由でそんなことを?」

「菜月博士を愛したいのです」

「はぁ!?」

「まず、男性器のモデルが必要ですね。観察に行きましょう」


 観察ってどこに行くつもりだろうか。惨事が起こりそうで、慌てて止める。


「えっ、どこ行くの?」

「実物を見てこそだと、日頃から言われているではありませんか。なので、谷津博士の元に行くつもりです。菜月博士も一緒に見に行きますか?」


 言った。言ったけれども、いくらなんでもそれは無理だ。いくら同僚の谷津だとしても、いや同僚だからこそ無理だ。


「っ、っ、無理! ごめん、この件は谷津に任せる。私は研究会のレポートがあって忙しいから」

「菜月博士、それはまだ1ヶ月先ですが」


 聞こえないふりをして、忙しそうにする。すると彼はため息をついた。まったく、人間らしい仕草を学習しているものだ。


「分かりました。菜月博士、楽しみにしていてくださいね」

「楽しみにするわけないでしょ!?」


 そんなこんなで如月にふりまわされる菜月博士であった。




 後日、如月がニコニコと機嫌よさそうにやってきた。


「菜月博士、完成しました」

「何が?」

「はい、こちらです」


 カチャカチャとベルトを外し、ファスナーを下げようとしているのを慌てて止める。


「駄目でしょ!」

「ですが、脱がないと菜月博士を愛せません。資料もそうでした」


 彼は深刻な顔をしていた。自分が作ったアンドロイドは急速に様々なことを学んだ。そして思考するようになった。彼は何を思って、行動したのだろうか。


「……私を愛したいって、どうしたの?」

「菜月博士にもっと好きだと伝えたいと谷津博士に相談したら、性行為がいいと教えていただきました」


 谷津は余計なことを……。


「谷津の話は話半分がいいと思うけど。でも、如月は私が好きなんだね。ありがとう」

「単なる好きとは違います。私は菜月博士への想いをもてあましています。だから、谷津博士は教えてくれたのです」


 如月が手を繋ぐ。力加減も私に配慮したものだった。彼は笑った。


「まずは手を繋ぐところから、始めてみました。これ、いいですね」


 彼はじっと菜月の顔色を見る。観察するような視線に、居心地の悪さを感じた。


「菜月博士、顔が赤いです」

「うるさい」


 学習能力の高い如月に振り回される日々は続く。


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