太陽神の巫女
貴方は『境界線の引き方』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://shindanmaker.com/375517
巫女は神楽を舞う。
神がかるということは、こちらが神に近づくことである。一切の妥協を禁じ、食べるものも限られたものにして、現世から逸した存在へと作り替えていく。禊を行うと身体があちらに近い存在になっていくのだ。巫女として神に存在を近づけ、あたかも天候を操る神にでもなったかのような感覚になる。
ある巫女が神楽殿に現れた。彼女は独特な歩法で扇をひるがえし、神楽を舞う。その動きによって、巫女装束から腕がさらけ出される。巫女装束から覗く素肌は本来見えないものであるせいだろうか。白い肌から色香が漂う。
「さぁ、おいでませ。わたくしに会いたいと思うのなら、降りてきてください。女にここまでさせておいて、放っておける貴方様ではないでしょう」
雨雲から光が射し、雲の隙間から太陽が姿を見せ始める。そして太陽の姿が彼女の前にさらけ出された時、彼女は扇を閉じて太陽と自身との間に扇で線を引いた。
「まったく、貴方様はいつ見ても眩しゅうござます。少しは見ているこちらの身にもなってくださいませ」
太陽の光が少し弱まった。
「どうして境界線を引いてしまうのか、ですって? 賢い貴方様ならお分かりでしょうに。わたくしの身体は人のものにございます。貴方様の近くには行けないのです。その代わり、わたくしは貴方様の妻として生涯を捧げます」
太陽が雲に隠れ始めた。
「あら? 今日はもうお帰りになられるのですか? ……分かってますよ。照れたのですね。明日は長い間一緒にいましょうね。また明日」
彼女は太陽が沈んでいくのをじっと見守っていた。太陽の巫女は一生を太陽に捧げる。




