表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即興短編集  作者: 花ゆき
25/117

お前のもらったチョコなど、こうしてくれるわ!

お題:汚い独裁者 必須要素:白トリュフ


バレンタインを憎む男によって行われる悪とは。

「バレンタインが憎い! お前のもらったチョコなど、こうしてくれるわ!」


 突然、高校生男子が十字路を通って学校から帰っていたら、バレンタインチョコを奪われた。変な仮面とマントをつけた男が、素早い手さばきでチョコを変えていく。


「お前のチョコなど、これで十分だ」


 仮面男が差し出したチョコは、白いトリュフへと姿を変えていた。チョコを奪われた高校生男子はあっけにとられている。




「なんてことだ! せっかくのバレンタインチョコを白く、しかも跡形もなくしてしまうなんて! なんて外道だ!」


 棒読みで外野から声が上がった。



「私なら、一生懸命作ったチョコをああされてしまったら、泣いてしまうわ!」


 また棒読みで外野から声があがった。わざとらしく涙を拭う仕草までしている。




 そんな声が上がるなか、チョコを変えられた高校生男子は恐る恐るチョコを食べた。一口食べると、甘いホワイトチョコの味が口の中にとろけて広がる。仮面男のチョコは素晴らしい出来だった。


「おいしい。恵美の毎年作ってくれるチョコが霞むようだ」


 高校生男子はチョコを奪われた挙句変えられたのに、なぜか仮面男を感謝の目で見ている。


「ありがとう。毎年本命の実験台として作られる、義理チョコという名の物体Xをもう食べなくていいようにしてくれたんだな」


 高校生男子は仮面男に感謝の意を込めて手を強く握り、立ち去った。




「な、なぜ感謝されるのだ!? 悪の限りをつくしているというのに」


 戸惑う仮面男に、話しかける声があった。わざとらしい棒読みだった外野だ。


「すいません、もう定時過ぎたんで帰っていいですか?」

「ああ、よかろう」


 もう一人、声をかけてきた。こちらは涙を拭う仕草までしてみせた外野だ。


「残業手当でますか?」

「うむ、出る」

「分かりました。外野待機します」



 仮面男は自らの悪をつらぬくために、通りがかる男がチョコをもっていないか、十字路の張り込みを続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ