責任取ってよ

　幼い頃大切に想っていたお兄ちゃんの元に向かう。きっとあの約束を果たしてくれるだろうと、胸をふくらませた。自然と足取りは軽くなる。が、お兄ちゃんは「は？　何か約束したっけ？」と言った。思わずカッとなって左頬を打つ。綺麗な紅葉が刻まれた。

「ずっとお兄ちゃんのお嫁さんになれると思ってたのに！　馬鹿！　責任とってよ！」

「はぁ？　え、まじでお前、今まで信じてたのか」

　こくりと頷く彼女はうらめしそうに涙目で睨んだ。思わずクスリと笑った。すねた顔もあの日のまま。可愛いやつめ。そっと、慰めるように額へキスをした。

「まずは、恋人からってのはどうだ？」

　彼女は幸せをかみしめるかのように笑う。

「このまま既成事実までもちこむ」

「おま、ムード台無し」

「だから、覚悟しててよね」

　笑顔と言うことの差がかけ離れすぎだろ。でも、これくらい眩しい笑顔がこいつには似合う。ちょうどいい位置にある彼女の頭をくしゃっとなでた。