「僕が一番好きな人を教えてあげようか」
今日の台詞お題は「僕が一番好きな人を教えてあげようか」です。作中にハンバーグを出しましょう。 http://shindanmaker.com/437994
腐れ縁の彼に突然、「僕が一番好きな人を教えてあげようか」と言われた。それならと自信満々で答えたものの――。
(少し下品)
休日、ファミレスで借りたノートを写していると、小中高と腐れ縁な彼が唐突に言った。
「僕が一番好きな人を教えてあげようか」
「はい! 分かった!」
彼は怪訝そうな顔をする。
「へぇ? 誰だと思うの」
「如月さん! おっぱいでか――んぐっ」
「女の子がおっぱい言わない」
強制的にハンバーグの切れ端が口につっこまれた。熱っ、でも肉汁美味しい……。このハンバーグは私からのノートを写させてもらっているお礼だ。
「いきなりつっこんでくるのは酷いと思う! なんなの、そんなのらめぇとか言えばよかったの」
「君は……ほんと終わってるね」
その呆れた目、冷めすぎでしょ。Mの扉が開いたらどうしてくれる! 開かないけどね。
「別にいいし。いつかこんな私でも好きって言ってくれる人、いるはずだからさ!」
ドリンクバーのオレンジジュースをズズッとすする。いつもならここで、ジュースは「すすらない」と小言が入るんだけど、彼は静かだった。
「ああ、いるだろうね」
「でしょ!」
「ここに」
ジュース吹き出した私は悪くないと思う。例え彼の顔がオレンジまみれになったとしても。あっ、でもオレンジジュースが拭ききれなくて、メガネをのけるはめになったのはごめんなさい。メガネの下、きつい目つきがむき出しになる。彼はおしぼりを使って、無言で拭いていた。そして拭き終わり、席を立つ。
「気の迷いってことで」
「ちょっ、帰らないで、気になるじゃん!」
思わず手を掴んで引き止めると、彼はため息をついた。
「どうしてこんなでも好きなんだか、自分でもさっぱりだね。まぁ、そういうことだから。あと、ノート弁償しろ」
「は、はい……」
自分から引き止めたものの、気まずい……! ノートはオレンジまみれでどうにもならない。
「帰るか」
「ですね」
「何急に敬語なの、バーカ」
「ワタクシの小さな脳みそがエラーおこしてます」
その後、家に送ってもらったみたいだけど、気がついたら布団に入ってた。今日は幻影でも見たのかな。けれど、机の上においたノートからはオレンジ臭がする。携帯にメール新着のランプが灯る。何のメールだろうかと開けてみると、先ほど別れた彼からのメールだった。
『忘れたら許さないから。オレンジまみれにしたお詫びに、またハンバーグ定食おごること』
どうやら現実のようだ。とりあえず布団をかぶって転がった。これまで腐れ縁として見ていた彼の印象を変えるには、十分な出来事だった。




