表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即興短編集  作者: 花ゆき
18/117

「僕が一番好きな人を教えてあげようか」

今日の台詞お題は「僕が一番好きな人を教えてあげようか」です。作中にハンバーグを出しましょう。 http://shindanmaker.com/437994


腐れ縁の彼に突然、「僕が一番好きな人を教えてあげようか」と言われた。それならと自信満々で答えたものの――。


(少し下品)

 休日、ファミレスで借りたノートを写していると、小中高と腐れ縁な彼が唐突に言った。


「僕が一番好きな人を教えてあげようか」

「はい! 分かった!」


 彼は怪訝そうな顔をする。


「へぇ? 誰だと思うの」

「如月さん! おっぱいでか――んぐっ」

「女の子がおっぱい言わない」


 強制的にハンバーグの切れ端が口につっこまれた。熱っ、でも肉汁美味しい……。このハンバーグは私からのノートを写させてもらっているお礼だ。


「いきなりつっこんでくるのは酷いと思う! なんなの、そんなのらめぇとか言えばよかったの」

「君は……ほんと終わってるね」


 その呆れた目、冷めすぎでしょ。Mの扉が開いたらどうしてくれる! 開かないけどね。


「別にいいし。いつかこんな私でも好きって言ってくれる人、いるはずだからさ!」


 ドリンクバーのオレンジジュースをズズッとすする。いつもならここで、ジュースは「すすらない」と小言が入るんだけど、彼は静かだった。


「ああ、いるだろうね」

「でしょ!」

「ここに」


 ジュース吹き出した私は悪くないと思う。例え彼の顔がオレンジまみれになったとしても。あっ、でもオレンジジュースが拭ききれなくて、メガネをのけるはめになったのはごめんなさい。メガネの下、きつい目つきがむき出しになる。彼はおしぼりを使って、無言で拭いていた。そして拭き終わり、席を立つ。


「気の迷いってことで」

「ちょっ、帰らないで、気になるじゃん!」


 思わず手を掴んで引き止めると、彼はため息をついた。


「どうしてこんなでも好きなんだか、自分でもさっぱりだね。まぁ、そういうことだから。あと、ノート弁償しろ」

「は、はい……」


 自分から引き止めたものの、気まずい……! ノートはオレンジまみれでどうにもならない。


「帰るか」

「ですね」

「何急に敬語なの、バーカ」

「ワタクシの小さな脳みそがエラーおこしてます」




 その後、家に送ってもらったみたいだけど、気がついたら布団に入ってた。今日は幻影でも見たのかな。けれど、机の上においたノートからはオレンジ臭がする。携帯にメール新着のランプが灯る。何のメールだろうかと開けてみると、先ほど別れた彼からのメールだった。


『忘れたら許さないから。オレンジまみれにしたお詫びに、またハンバーグ定食おごること』


 どうやら現実のようだ。とりあえず布団をかぶって転がった。これまで腐れ縁として見ていた彼の印象を変えるには、十分な出来事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ