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即興短編集  作者: 花ゆき
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美しい終わり方

 貴方は『美しい終わり方』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://shindanmaker.com/375517


殺し屋二人の美学とは。

「心臓を一突き、それがあなたの美学ですの?」


 ナイフを引き抜いていると、後ろから声をかけられた。相変わらず、彼女の声は夜の象徴であるかのように色っぽい。


「そういうあんたは寝首をかくのが美学なんだろ。違うか」

「ふふっ……違いませんわぁ……」


 振り返れば、彼女は妖艶に笑っていた。彼女は返り血をあびている自分の肩に手を添え、身体をよせてきた。


「今晩いかがかしら?」

「あいにく、俺は寝首をかかれる趣味はないな」


 押しつけられた柔らかい感覚に、彼女の身体に夢中になって死んでいったやつの気持ちも分かるなと自嘲する。彼女から距離をとるように、一歩後ろに下がった。


「あら、残念」

「思ってもないくせに」


 彼女は紅い口紅の口角をあげた。そして、彼の首筋を指先でなぞる。


「やっぱり、殺しの後は興奮してますのね」


 耳元でチュッという音がした。感触から、首筋に口紅の痕がついただろう。


「お前、いいかげんにしろ」


 彼女の言うとおり、殺しの後は昂る。それを挑発されて、余裕というものがすり減っていった。思わず苛立って睨む。それすらも、彼女は愉快とばかりに笑う。


「怖いわぁ」

「お前のような女は抱けない」

「心外ですわぁ」


 彼女は口を開けば余計なことばかり言う。いっそ黙らせてしまえと、うるさい口を黙らせるようにキスをした。唇を交わしながら至近距離で見た彼女のまつ毛の長さに、胸が騒いだ。けれど、この女に手を出したら終わりだ。そう自分に言い聞かせて、身体を離した。身体の熱を吐き出すように、深く息を吐く。


「帰れ」

「仕方ありませんわねぇ。今日はこれで我慢しますわ」


 彼女は、先ほどのキスで歪んだ口紅をなぞる。


「もう来るんじゃねーぞ」

「また来ますわ」


 それは彼らの日常。

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