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即興短編集  作者: 花ゆき
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好き、なんて言わない

3つの恋のお題:なぁ、……何でもない。/好き、なんて言わない。/いっそ拘束して http://shindanmaker.com/125562


女をさらってきた男と、さらわれた女の独白

 思わずさらってきた女の髪を一束つかんで、触り心地を楽しむ。するっと手から零れ落ちる様は、まるでこの女のようだった。衝動のままにさらってきた俺をどう思っているだろうか。


「なぁ、……なんでもない」


 女は、俺のはっきりしない言葉さえ気にしない。ただ城の外ばかり見ているのだ。女の関心をかうのは、時々女の元によってくる鳥のみ。こちらを向かない女を、どれだけ見続けてきたのだろう。



****



 私は退屈な女だったと思う。美姫なんて言われながらも、政治的な問題で嫁ぎ先も決まらない、扱いに困る娘だった。それを魔族の彼が変えてくれた。突然現れた彼が、私をさらってくれたのだ。私はその瞬間、酷くホッとしたのを覚えている。


 彼はいつも私を見つめている。私は窓に映る彼を見つめている。彼は時々私に触れた。感情をもてあましたかのように、割れ物のように、優しく。その視線にさらされて、優しく触れられて、想いを寄せずにはいられなかった。けれど、好き、なんて言わない。この感情はそんな綺麗なものじゃない。


 鳥が窓辺までよってきた。鳥ならば、彼と共にどこまでもいれるだろう。脆弱な人の身体は、屋内でしか過ごせない。魔界の空気は毒だそうだ。それならば、優しく室内に囲うのではなく、いっそ拘束してくれればいいのに。彼だけ見ていられるように。魔界の淀んだ空気と共に、淀んだ気持ちを募らせた。

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