直情むき出し型
即興小説トレーニングより お題:走るむきだし
人間誰しも、心は全てさらけ出さない。さらけ出せば、そんな人だったのと別れることもあり、しまっておけば、何考えているか分からないと言われる。だが、この直情むき出し型と遭遇したのは初めてだった。
柴犬の子犬である。シッポがくるんと丸まっていて、まろ眉が可愛い。なにより、目がキラキラと私を見ている。駄目だ。この子犬の横を通り過ぎることなど出来ない。むしろ、私の横をついてきているではないか。可愛い。あれ、犬ってこんなに殺傷力高かったっけと思ったが、この純粋な好意には負けるしかない。
だがしかし、私は帰らなければならない。月九のドラマが待っているんだ。そう思い、さよならするつもりで子犬を見た。うん、ドラマ諦めよう。可愛いなぁと頬を緩ませて手を近づけると、手をクンクンと嗅がれた。そして、その小さな舌でペロペロと舐められたのだ。可愛い、すごく可愛い。
「お客さーん、そろそろ閉店なんですけど」
私は犬がおさわり出来るコーナーに、長々と居座っていた。閉店の時間になってしまったのか。この子ともう会えないなんて考えられない。
「この子、飼います! 今日からワンLDK!」
「初めての犬の飼い方と、子犬の飼い方、よかったら見て下さいね」
「名前何にしようかなぁ」
「お客さん、話聞いてます?」
柴犬の子犬(雄)、我が家にようこそ!




