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即興短編集  作者: 花ゆき
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恋する靴

今日の台詞お題は「恋する女の子はかわいいんだから!」です。作中に靴を出しましょう。 http://shindanmaker.com/437994



靴職人の彼の元に、恋するお客様が訪れた。彼女のために靴を仕立てて、彼は魔法をかける。

 人のために靴を作る自分は、まるでシンデレラに出てくる魔法使いのようだと思っている。だから靴職人であることは、自分の誇りだ。今日のお客さんは年頃の娘さんらしい。


「どんな靴をお探しで?」

「彼に可愛いって言ってもらえる靴よ」

「そうかそうか。どこに履いていくんだい?」

「それはもちろん、大好きな彼の元よ」


 彼女の話を聞きながら、靴のイメージを膨らませていく。可愛らしい靴が彼女には似合うだろう。リボンが合いそうだ。


「そうかそうか。ヒールはどうしたいのかな」


 彼女はじっと自分を見つめた。


「そうね、5センチぐらいがちょうどいい高さになりそうだわ」

「そうかそうか。じゃあ、飾りや色を決めていこう」




 それから彼女は毎日のように通った。どんなデザインがいいか話し合って出来上った靴が、今手元にある。いわば、恋する靴の完成だ。この靴はこれから自分がかける魔法によって、彼女の足元で輝くのだろう。


「靴、完成したのね」

「そうだよ。さぁ、履いてみて」


 彼女は期待に目を輝かせて、靴を履いた。履き心地はいいようだ。さぁ、魔法をかけよう。ちょうどいい位置にある彼女の頭をなでる。


「絶対、うまくいくよ」


 こうやって後押しすることで、今までお客さんは幸せになった。この娘もそうであればいい。


「ありがとう頑張ってみるわ」

「さぁ、その靴で好きな人のもとに行くといいよ」

「ええ」


 彼女はカツカツと足音を響かせて、自分の前で立ち止まった。


「何か、忘れ物でも?」

「まったく鈍いんだから」


 靴を履いているせいか、彼女は背伸びをせずに自分の頬にキスをした。


「恋する女の子は可愛いんだから! 覚悟しててよね!」


 店の出口に向かう彼女の靴は、後ろにリボンがあって後ろ姿さえも可愛らしかった。


「また来るからね」


 急に振り返った彼女の笑顔が綺麗で、魔法にかかったように感じた。それにしても、恋する女の子は可愛いんだからって自分で言うかな。それすらも可愛いと思ってしまうのだから、魔法の効果は抜群のようだ。



****



 とある靴屋の靴は有名だった。恋を叶える靴を作ってくれると噂されていた。彼女が気になって店をのぞいてみると、青年が一つ一つ丁寧に靴を作っていた。彼は靴を作り、恋する彼女たちの背中を押して見送る。店から出てきた彼女たちは、綺麗だと思った。そんな青年の手に魔法を感じる。彼をこっそり覗くことが増えた。



 気づけば季節が一つすぎていた。このままじゃ、何も変わらないわ。大丈夫、勇気を出して行くのよ。ショーウィンドウに映る自分の姿を見て、身だしなみを軽く整える。そして、あの靴屋に入った。


 彼に作ってもらった靴は文句なしに可愛かった。彼と隣を歩けばほどよい身長差になるだろう高さのヒール。後ろ姿も可愛くいたい、乙女心をくすぐるかかとのリボン。前は硬貨のような飾りがついていて、おしゃれだ。靴の色は恋に色づいた赤。また、この靴で彼の元に行こう。


「恋する女の子は可愛いんだから!」


 大丈夫、彼の魔法は続いてる。自分を奮い立たせた。

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