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なんで…

若葉は、

この日を楽しみにしていた。

気合いを入れて新しい大人っぽい浴衣も買った。


「大輝がなんて言うか楽しみだなぁ!」


と、ワクワクして

大輝が迎えにくるのを待った。

蓮が迎えにくると言ってくれたが、

逆方向で悪いからと断った。

大輝に、どうしても

迎えに来てほしかったのだ。

大輝に一番に見て欲しいかった。


大輝が迎えに来た。

若葉はゆっくりと玄関から出た。


「似合うかな?」


と、ちょっと恥ずかったが

大輝に聞いてみた。

でも、何も言ってくれなかったので


「ねぇ?聞いてる?」


と、言ってしまった。

すると大輝は、


「すごく似合ってるよ!」


と、言ってくれた。

すごく嬉しかった。


「ありがと!」


と、お礼を伝え

一気に上機嫌になった。

大輝は、

確かにカッコ良くなっていた。

昔のような可愛い感じがなくなって

モテそうなイケメンになっていた。

そんな事を思いながら

上機嫌のまま集合場所まで歩いた。

やっぱり大輝は、車道側を歩いてくれた。

大輝とずっと話したかったので、

たくさん話した。

大輝は、

若葉の話をちゃんと聞いてくれた。

楽しいし嬉しかった。

大輝も家の事を話してくれた。

大輝がお兄ちゃんになるらしい。

驚きはしたが

上手くいっているのだと思い嬉しくなった。


「私が長女だからね!」


と、ふざけて言った。

一瞬、大輝は切なそうな顔をしていた。


ドキッとしてしまった。

心臓の音が速くなった。

すぐに優しい

いつもの大輝の顔になった。


今の気持ちは、

なんだったんだろうと思ったが

恥ずかしくなって

早口で話してしまった。

そのあとはあっという間に

集合場所に着いてしまったのだ。


集合場所に着くと

すぐに蓮が話しかけて来た。


「若葉、すごく似合ってる!」


と、言ってくれた。

他の友達も近くにきてみんなで話し始めた。

ふと後ろを向くと、

大輝が別の友達の方へ歩いて向かっていた。

そんな後ろ姿を見て


「また大輝が離れてしまう…」


と、悲しい気持ちになった。


その後はいつものように

蓮の隣をにいるように仕向けられてしまう。

祭り会場を歩いていても出店に並ぶ時もずっとだ。


花火の時間が近付きみんなで移動を始めた。

人混みを歩きながら気付くと

蓮以外のみんながいなかった。

またやられた。


今更戻っても花火には、

間に合わない。


「このまま花火を観に行こう!」


と、蓮が言ってきた。

人混みを戻るのも危ないので

仕方なく二人で向かう事にした。


蓮は、危ないからと言って

また、手を取ろうとしたが

今回は、断った。

そんな気分ではなかったし

流石に苛立ちを隠せなかった。


蓮の事が嫌な訳ではないのだが

今日は、大輝と一緒にいたかった。

大輝と祭りを楽しみたかった。

大輝と一緒に花火を観たかった。


人混みを抜け

花火が見えるところまで来た。

ちょうど花火が始まった。

若葉は、花火を観ながら


「なんで…

なんでいつもこうなの…」


と、なんとも言えない気持ちになった。


花火が終わり蓮が何か言っていたが

まずは、

みんなと合流しようと言って友達に連絡した。

すぐにみんなの所に向かい

友達に文句を言った。


若葉は、本当に怒っていたが

友達は、笑いながらごめんと言っていた。


帰りは、

大輝と一緒に帰る事になっていたので

諦めて切り替える事にしたのだ。

祭り会場の外まで歩いき

みんなと解散する事になった。


大輝と蓮が、何か話していた。

急いで大輝の所に行き、


「大輝、帰ろっか!」


と、言ってみた。


「若葉ごめん。

友達に借りたい物があるから

ちょっと寄っていく事になったんだ。

だから…

白石と一緒に帰ってくれる?」


と、また切なそうな顔をして伝えて来た。


すぐに嘘だとわかった。


でも、何も言えなくなってしまった。

大輝の切なそうな顔が

目に焼き付いて離れなかった。


向かう途中はドキッとしたが

今は、悲しくなった。

涙が出そうになった。


「わかった…」


と、声を絞り出すように応えた。



大輝達と別れ、

蓮と家まで歩いた。

蓮は、色々と話してくれていたが、

若葉は、相槌しか打てなかった。


いつの間にか

若葉の家の前まで着いたので


「送ってくれてありがとう。また学校でね。」


と、伝え

家の中に入ろうとしたが


「ちょっと待って!」


と、蓮に呼び止められてしまった。


「どうしたの?」


と、尋ねると


「やっぱりなんでもない!

また学校でね!」


と、言って蓮は帰って行った。




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