悶々とした日々
高校生活が始まってから
あっと言う間に一学期が終わった。
大輝は、
今のところ何事もなく
普通の高校生活を送れていた。
勉強もある程度の成績を収め
友達とも上手くいっていた。
みんなとも良く遊びに行くようにもなったし
女子の中では詩音と良く話ようになっていた。
詩音は、上手く話を合わせてくれるので
話しやすいし見ていると癒される。
みんなそんな風に思っていた。
大輝も同じように思っていたのだ。
夏休みもみんなで遊ぶ約束をしていた。
もちろん詩音も来ると言っていたので
男子は喜んでいた。
夏休みは、父親の所に半分
家に帰るのが半分といった形にした。
父親の休みが八月に入ってからだったので
先に家で過ごす事にした。
あれから
若葉とは、こまめに連絡は取らなくなった。
高校生にもなるとお互いに忙しくなる。
一応、毎日連絡は来るが
それを返して終わりと言った感じだ。
本当は伝えたい事も沢山あったが
自分の気持ちを抑え込んで我慢した。
会わずに居られるだけ
マシなのかもしれない。
若葉は、部活が多い為
そんなに遊べないと言っていた。
若葉と、夏休みも会う機会が少ないのは、
寂しさもあったが
胸を締め付けられずに済むので
安心感もあった。
友達ともボーリングに行ったり
カラオケに行ったりと
夏休み最初から楽しく過ごせた。
カラオケに行った時
友達が、若葉と白石の話をしてきた。
「美咲と白石ってお似合いだと思って
みんなで応援?サポート?
みたいなことしてるんだけど
なかなか付き合わないんだわ。
大輝的にもお似合いだと思うだろ?」
と、言ってきた。
胸が苦しくなったが
「お似合いだと思うよ。」
と、だけなんとか答えた。
その後も二人について話していたが
大輝は相槌だけ打ち、
ほとんど聞けていなかった。
二人の事を話し終わったのか
「大輝も一気に
イケメンになったよな!
中学の時は、そんな感じなかったのに、
高校じゃモテるんじゃない?」
と、言ってきたので
「全然そんな事ないよ!」
と、言っておいが
実は、夏休み前に初めて告白されたのだ。
高校の同級生だったが
あまり話した事のない子だった。
大輝は、
若葉が好きだからと言うわけではないが
好きでもない子とは、
付き合えないと思い丁重にお断りした。
断る時は、胸が痛んだが
まずは、
友達として仲良くなろうということになったので
ほっとはしていた。
大輝も、高校生になり
モテ始めていたのだ。
毎年行っていた夏祭りも
みんなで行く事になっていたのだが
雨で中止になった。
これで、
七月中は、若葉に会う事は無くなった。
八月は、父親の所に戻り、
父親が休みに入るまでは、
高校の友達と遊んだりして過ごした。
詩音達も来ていて女子の私服姿が
とても可愛かった。
男子はみんな喜んだに違いない。
特に詩音は人気があるので
みんな詩音を見ながら顔を赤らめていた。
今回も前と同じ複合施設に行き
同じように遊んだ。
大輝はボーリングでハイスコアを出したりと
調子が良かったのだが
UFOキャッチャーでは何も取れなかった。
詩音も大輝と一緒のグループで行動していたので
今回は詩音がぬいぐるみをゲットしていた。
他にもキーホルダーを取ったみたいで
「前にぬいぐるみ貰ったから
そのお返しでこれあげるね!」
と、そのキーホルダーを大輝が貰ったのだが
他の男友達は詩音から貰ったということを
羨ましがっていた。
大輝は
「前にぬいぐるみをとってあげたお返しに
キーホルダーをくれたんだよ!」
と、説明すると男子はこぞって
UFOキャッチャーをやり始め
なんとかぬいぐるみを取って詩音にあげようと
必死になっていた。
結局誰も取れなかったが
みんな楽しそうにしていた。
この日は時間もあったので
カラオケも楽しんだ。
大輝は歌が上手かったので
みんなも盛り上がって楽しく過ごせた。
詩音は歌っている大輝を見て
顔を赤らめながら見惚れていたのだが
大輝はその事には気付いていなかった。
若葉は、千花に相談した日から
少し切り替えることができていた。
思っている事を
話してしまえばスッキリする事もわかった。
切り替えることはできたものの
やはり、モヤモヤする日々を送っていた。
夏休みに入っても、
大輝に会えていなかった。
中学までは、いつも学校で会えていたが
今は、高校が別だし
平日は、お父さんの所に
行っているからほとんど会えない。
週末帰ってきても
若葉が、部活に行かなければならない為
週末さえ会えないのだ。
小さい頃からずっと一緒だったので
会いたくてたまらなかった。
当たり前に感じていた事も
当たり前では無くなっていく
寂しさも同時に感じていた。
若葉は、これが恋だとはまだ気付かない。
家族に会いたいと思う気持ちと
勘違いしていていたのだ。
楽しみにしていた夏祭りも
雨で中止になってしまい
結局、七月中に会う事が
出来なくなってしまった。
八月は、
お父さんの方に行くと言っていたので
次に帰ってくるのは、八月の終わりの
祭りの時だと言っていた。
若葉はまた、
悶々とした日々を
送る事になったのだ。




