お母さん…
ブランコに乗ったまま、
気付くと、夕方になっていた。
若葉の母親が、公園に来た。
「やっぱりここにいた!
一度、家に帰ってから行きなさい!
若葉!!」
と、怒りながら近づいて来た。
若葉の母親は、
元気で明るく
人当たりも良い人だった。
「大ちゃんも一緒だと思った!
また若葉に連れ回されたんでしょ?
ごめんねぇ大ちゃん。
もう遅いから一緒に帰るわよぉ」
大輝にも気さくに話しかけてくる。
二人は、何も言わずに帰ることにした。
すると、
大輝の母親も探しにきたのか
ちょうど公園に来た。
「良かった公園にいたのね。
心配したんだから!」
と、ほっとした顔をしていた。
若葉の母親と、軽く挨拶を交わし
母親達は、話をしながら歩いていった。
母親達の後をついて行き
家の前まで着いた。
そのまま挨拶を交わし
家の中に入って行った。
家に入ってすぐ
「先にお風呂に入っちゃいなさい。」
と、声を掛けられ
お風呂に入ることにした。
お風呂に入ってもまだ上の空だった。
風呂から上がり
リビングには向かうと
夕食が用意してあった。
父親は、まだ仕事である。
夕食は、いつも母親と二人で
食べていた。
いつも父親が帰ってくるのは、
寝た後だったので
気にする事はなかった。
大輝は、
何も言わず夕食を食べ始めた。
母親は流石に大輝の様子が
おかしい事に気付いた。
しかし、今日の話を
聞かれていたと思ってもいない。
「学校で何かあった?」
と、尋ねてきた。
「何もないよ」
と。応えると
「本当に?」
と、また聞いてきた。
「本当に何もないよ」
と、また応えた。
母親も、
何かあったとは思ってはいるが
無理に聞くのも良くないと思い
「そう…何かあったらすぐ言ってね!
ちゃんと聞くから!
お母さんが大輝をちゃんと守るからね!」
と、頭を撫でて来た。
若葉の時とは違う安心感があったが
「お母さんの事で悩んでるんだ!」
なんて、大輝には言えなかった。
母親が傷付く事が嫌だったのだ。
優しい子にちゃんと育っていた。
子育ては間違ってはいなかった。
間違っていたのは
母親と父親の関係であった。
只、大輝は、
優しいが故に
悩んでしまったのだ。
反抗出来れば
ぶつかり合っていれば
話をちゃんと聞いていれば
拗れる事も
トラウマを与える事も無かった。
最初から伝えていればよかったのだ。
その日、大輝は
色んな事を考え過ぎて
疲れてしまったので
夕食を食べてすぐに
寝ることにした。
大輝が寝た後
母親は、一人片付けをしながら
「大輝に本当のお父さんは
違う人なんだよって
言わなきゃいけないなぁ…
でも、
いつなら理解してくれるかな…」
などと、思いを馳せていた。
大輝は、
もう知ってしまっているのだ。
この時ちゃんと伝えていれば
大輝が、感情を抑える事も
仮面を被らせる事もなかったのだ。
母親は、
父親との関係こそ間違っていたが
大輝への愛情は、
本物だった。
だからこそ臆病になり
見守る事を
自分から言わせる事を
選んでしまったのかもしれない。
大輝が本心を言わなくなったのは
この日からだったのだ。
大輝は、いつのまにか眠りにはついていた。
今日の事を夢に見ていたのだ。
夢の中では母親にちゃんと伝えていた。
「今の話は本当なの?
本当のお父さんは、
この人なの?
今のお父さんは、
本当のお父さんじゃないの?」
と、そして
「ねぇ答えてよ…」
最後は消えいるような声で
「お母さん…」
と、涙を流しながら…




